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ドルと米株に圧し掛かる双子の赤字

先週、米10年債の利回りが2.9%を超えたが、円ドル相場は106円台を持続した。円ドル相場が106円台では日本株の戻りも弱くならざるを得ない。FOMC議事録で政策金利は上向く可能性が高いと言及されたが、為替相場への影響は限られたものであった。これだけ米国の金利上昇観測が強まっても、円安ドル高にならないのはすでに円安ドル高ドルが実現されてしまったからだ。それは今から2年8ヵ月前の2015年6月に1ドル=125円超(2002年5月以来)の円安ドル高である。この時の円安ドル高は日銀の2014年10月実施の国債購入拡大策により引き起こされたが、金融緩和策が予想以上に効果を発揮し、明らかにこの時の円安ドル高は行き過ぎであった。

2015年末にFRBは7年間続けてきたゼロ金利を打ち切り、利上げに踏み出した。従来の為替相場であれば、米利上げ期待感が広まる2015年以降、円安ドル高に向かうはずだが、今回はすでに十分に円安ドル高が実現されていたので、FRBの利上げにもかかわらず、円安ドル高ではなく、円高ドル安に進んでいった。その後も日銀は策を弄するが柳の下にいつも泥鰌はおらず、円高ドル安に歯止めを掛けることはできなかった。約13年ぶりというあまりにも行き過ぎた円安ドル高のため、米利上げ継続にもかかわらず、円高ドル安基調を容易に変えることは難しい。

日本の経常黒字は2007年には24.9兆円であったが、米金融危機や東北大震災等により2014年には3.9兆円に縮小してしまった。それでも、米国経済の悪化により、FRBがゼロ金利と債券購入策を動員したことが2011年、2012年の円ドル相場を79円(年平均)に押し上げた。2013年以降3年連続の円安ドル高となったが、2015年の経常黒字は16.2兆円に回復し、2017年は21.8兆円と3年連続増である。20兆円超の経常黒字を稼ぎながら、円安ドル高に振れると考えることは理に欠ける。

他方、米国の経常収支は2013年にはマイナス3,495億ドルと2年連続で赤字額は縮小したが、その後、赤字額は拡大に転じ、2016年は4,516億ドル、昨年はさらに拡大したと思われる。日本の経常黒字は拡大する一方、米国の経常赤字が拡大していることも、実需の円買いドル売りとドル散布を招き、円高ドル安要因となるだろう。

トランプ大統領の企業減税、国防費やインフラ投資の拡大によって、さらに米財政赤字は急増する見通しである。2015年の財政赤字は4,385億ドルまで減少していたが、2017年には6,654億ドルへと2年連続で増加し、2019年には9,844億ドルと2012年以来の規模に拡大するようだ。こうした財政赤字拡大見通しもドル不安要因として捉えられることになるだろう。

米国の投資・貯蓄関係が正常であり、そこに政府支出が加われば、経済はより活発になり、体温は上昇することになる。今落ち着いている物価も徐々に上昇していくだろう。当然、金利も予想以上に上がっていくことになる。インフレといわれるように物価が高くなるとそうした通貨価値は自然に下落するだろう。

巨額の米財政赤字はドルの価値を引き下げることになり、円にもその影響は及ぶはずだ。トランプ大統領の予算教書が議会に提出された2月12日以降、円の対ドル相場は強含みで推移している。すでにこれから急増する財政赤字を為替市場関係者は気にしているようだ。

米財政赤字は必至の情勢であるだけに、物価上昇と利上げ観測が株式への重圧として作用するだろう。すでに企業利益から判断しても米株式は行き過ぎている。2月上旬の米株式急落はバブルへの警戒シグナルなのだろう。そこに財政赤字という古くて新しい問題が加わると、ドルや米株には慎重にならざるを得ないのではないか。ドル不安は円高をもたらし、円高は日本株の魅力を奪い取る。

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