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原発で自滅する日本

円ドル相場は地震以前の水準にほぼ戻りつつあり、激しい円高に進むことはなさそうだ。むしろ、日本の脆弱性に目が向き、円は売られやすくなるだろう。地震や放射能汚染の広がりによる消費マインドの冷え込み、電力不足による生産の低下等が為替に影響することは不可避であり、年末には思いも寄らない円安になっているかもしれない。

地震後の3月第3週の対外証券投資は2,905億円の買い超しとなり、本邦機関投資家が米債等を売り越していないことがわかった。対内証券投資をみても株式は8,910億円の大幅買い超しだが、短期証券を8,955億円も売り越したため、合計では1,860億円の買い超しにとどまり、証券投資の動向からは、急激な円高ドル安を説明することはできない。外人は日本株を大幅に買い越したが、先物と関係した取引が多数を占めており、単に日経平均株価の8,000円台は割安だから買ったというわけではない。

日本経済が中長期的にどのようになるかを推測しながら今後、株価は形成されていくだろう。3月分以降の経済統計を睨みながら日本経済のシナリオを練り直す必要がある。これから生産の足取りは重くなり、電力不足が顕著になる夏場にかけて低下することになりそうだ。生産の低下に消費支出意欲の減退が加わり、景気の弱さが目立つようになるかもしれない。

米株式は持ち直してきているが、実体経済は決して良くない。特に、2月の住宅着工件数などの住宅関連指標はいずれも前月を大幅に下回り、住宅市場は再度冷え込んでいる。昨年10-12月期の米企業利益を引っ張ったのは前年比25.7%増加した金融部門であり、非金融部門は14.8%増にとどまる。前期比では非金融部門は2四半期連続のマイナスとなった。

10-12月期の名目GDPは前年比4.2%伸びていながら、ゼロ金利を続けていることが、金融部門の利益拡大の主因だ。コストがゼロに近い金を仕入れることができるのは金融機関を置いて他に無いからだ。金融恐慌を起こしても国やFRBにより救済され、さらにゼロ金利で非金融部門よりも収益が上る。これが米国の市場主義なのである。

 

 

福島第1原発は鎮まるどころか傷口はますます広く深くなっている。そこから排出される放射能は関東一円にとどまらず、世界的な規模に及び、環境汚染を引き起こしている。放射能飛散の影響は野菜、牛乳、飲み水にまで広がり、22日、東京では水道水に乳児に与えることができない量の放射能を検出したが、開示したのは23日になってからであり、1日隠した。水1キログラム当たり暫定基準値300ベクレムまで90ベクレムまで近づき、300ベクレムを超える事態も想定しておく必要がある。東京都の水道水が飲めなくなることは、東京都に住めないことであり、事態は破局的となる。日本はそのようなリスクが無視できないところに追い込まれている。 

福島第1原発から出ている放射能データや原発の状態に関するデータの開示が不十分であり、データが揃わないことが、すべての分析を曖昧なものにしてしまい、事故への対応をできなくしている。事態の本質が摑めないままに、徒に時間だけが過ぎていき、原発問題はより深刻になりつつある。放射能の飛散がどのような広がりをしているのかといった情報も十分でなく、外国の情報を利用しなければよくわからない。ただ、がむしゃらに現状を打開したいという意気込みだけでは、事は首尾よく運ばないのではないか。原発の建設に関わった東芝や日立の協力会社の社員が懸命に作業しているが、現場を総合的に捉え、指揮できているのだろうか。

スリーマイルやチェルノブイリの原発事故はいずれも1機であったが、今回は4機が破損し、2機も使用済み核燃料プールの温度が一時高くなるなど、福島の原発事故は過去にない大規模だ。地震から1日経過した段階で、1号機で水素爆発が起こった。が、政府は事故の重大性に気づかず対応は遅れ、初動期の判断ミスが被害を大きくしている。政府は総力を上げて取り組んでいるというが、総力を上げる体制は空回りしているようにみえる。

経済産業省や原子力安全委員会の現実から遊離した甘い状況判断が、事故や被害を大きくしているのではないか。事故の推移を正確にとらえなければ的確な判断などできないからだ。そもそも圧力容器などは壊れないという前提に依拠しているため、水素爆発が起きても、そこから先に考えがおよばないのではないか。その結果、放射能汚染は広がり、原発のタービン建屋では協力会社の社員が被曝し、20から30キロメートルの屋内退避者に自主退去を促すなど、地震から2週間以上経過しても被害は治まりそうにない。原発事故を直視し、データを分析し、正しい現状認識ができていないことが、原発事故への政府の対応の遅れにつながり、それが不信感を招いている。

地震・津波で被害を受けた地域では復旧活動が行われているが、原発では放射能に脅えながら、いつ終わりになるかもわからない作業が続けられている。漏れている放射能をいかに封じ込めることができるか、封じ込めたならば、その状態を永久に保たなくてはならないが、そのコストはいかほどになるのだろうか。

原発は核兵器に比べて安全なもののような印象をあたえるが、核の恐ろしさ痛ましさは同じであり、精神的苦痛は言葉に尽くせない。原発を抱えている地域は再度、原発の存在を問い直すべきだ。

福島第1原発の1号機から4号機までがある大熊町は町ごと移転しているが、人口11,446人の町で一般会計は83.1億円、1人当たり72.6万円(筆者の住んでいる多摩市は33.5万円)、1人当たり所得は563.2万円(県下1位)と裕福であった。電源立地地域対策等交付金や国庫補助金など原発によって厚く手当てされていた。リスクが高いからその分手当てしましょうということである。リスクのことは、原発ファミリーの大学の偉い先生などが「安全な原発」を連発するので、頭の片隅に追いやられたのだろう。大熊町に限らず、原発のある地方自治体の一般会計の規模は同じ人口規模の自治体に比較すると巨額であり、庁舎は立派である。だが、そのカネは放射能塗れだったともいえる。甘い言葉には気をつけなければならないと言われているが、多くの自治体は甘い言葉に乗せられた。甘い言葉に乗れば、大熊町のように住み慣れた土地を後にしなければならなくなる事態に陥ることを肝に銘じなければならない。

原発を持つことは原爆を持つことでもある。今福島で起きていることは原爆で攻撃されているといってもよい。それも外国からの攻撃ではなく国内にある原発が爆発しているのだ。外部からの攻撃で国が滅ぶというが、内部から自滅していくケースのほうが多い。会社が倒産するのも多くは、内部に抱えた問題や会計の誤魔化しなどで崩壊した例は枚挙にいとまがない。日本が株式・不動産バブル崩壊で衰退を余儀なくされているのも内部崩壊の最たる例だろう。不良債権処理は峠を越えたという発表を何度聞いたことだろう。本質を追求し、知ろうという意欲・調査力にはなはだ欠けていた。政府と業界の癒着が不良債権の追求を中途半端なものにし、膿をなかなか取り除くことができなかったことが日本経済の衰退につながったのである。原発の膿はたちが悪い。取り除くことができても、放射性物質はそのまま残り、永久に保管しなければならないからだ。

日本にある4機の原発が日本を攻撃し、内部から崩れかけようとしている。政府や金融機関が不良債権問題をはぐらかしたように、原発事故をお茶を濁すていどに処理すると、日本は立ち直ることはできないだろう。もし冷却がうまく行き、原子炉が安定したならば、総力をあげて事故の本質を探り解明することがなによりも大事だとおもう。 

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