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日本の大企業、252兆円の投資有価証券を保有

リーマン・ブラザーズが破綻してから9月15日で10年だ。米不動産バブル崩壊の経済への影響は大きく、2008年、2009年と2年連続、米実質GDPはマイナスとなった(2年連続は第1次石油危機以来)。2009年は名目も60年ぶりのマイナス。だが、2010年以降、2017年まで8年連続のプラス成長となり、米景気拡大は長期化している。2017年の実質GDPを2008年と比較すると15.6%増だが、2008年を1999年と比較すると同じ9年だが、23.7%増であり、金融危機の前と後では成長速度の違いがはっきりでている。
GDPのほとんどの支出が金融危機後では伸びが鈍化しているが、特に、政府支出は金融危機前の9年間では22.1%拡大していたが、不思議なことに、危機後では2.1%減なのである。2009年の実質GDPはマイナスだったが、政府支出は3.5%拡大した。しかし、2010年以降、5年連続で政府支出は前年を割れており、その後も微増にとどまり、2017年は2008年を下回っている。
2017年の連邦政府、地方支出は2008年比ではともに減少しているが、連邦政府の軍事支出は1割弱も減少している。政府支出が危機前の9年間のように伸びていれば、危機後の実質GDPの伸びは危機前にそれほど見劣りしなかったのではないだろうか。政府支出の拡大によって、個人消費支出なども底上げが期待できるし、設備投資もより堅調になったのではないか。
政府の非国防支出は2010年がピークとなり、2016年まで6年連続の縮小だ。2017年も微増にとどまり、2010年比では7.1%も少なくなっている。経済成長率の低い伸びは政府支出の抑制に相当影響を受けている。経済が低迷しているときに、オバマ政権はなぜ公的部門を拡大しなかったのだろうか。政府支出・GDP比率は2008年の20.5%から2017年には17.3%へと3.2ポイントも低下し、1947年以降では最低なのである。
2008年9月末の米10年債利回りは3.82%、10年前の1998年9月末(5.86%)に比べれば約2%も低く、10年後の先週末とは0.83%高い。NYダウは2008年9月末、1万850ドルと金融危機前までの10年間で38.4%上昇したが、金融危機後の10年では2.39倍に急騰している。政策金利をリーマン破綻から10年も経過しているにもかかわらず、いまだに1.75%という超低金利であることが、資産価格の高騰を招いている。

2008年から2017年までの9年間、日本の実質GDPは6.5%増加(年率0.7%)した。2008年までの9年間では11.1%増だったので金融危機後の成長率は金融危機前の約半分に落ち込んだということになる。名目では金融危機前は9年間で0.2%という横ばいであったが、金融危機後の9年間では5.0%(年率0.5%)増加した。いずれにしても名目ではほとんど成長していないといってよいだろう。
これほどGDPが停滞しているなかで、金融危機後の10年間で日経平均株価は約倍に上昇している。実体経済の沈滞などものともせず、活況を続けているのだ。株式価値を決めるのは利益だが、企業利益は驚異的ともいえる伸びを示している。
2017年度の『法人企業統計』によると、大企業全産業(資本金10億円以上、金融業・保険業を除く)は増収増益となり、営業利益は前年比15.7%と2015年度を上回り、過去最高を更新した。当期純利益にいたっては2013年度に過去最高を更新してから2017年度まで5年連続の最高更新である。2017年の当期純利益は37兆円、このうち配当に17.4兆円、残りの19.5兆円を社内留保に充てた。その結果、大企業全産業の純資産は2017年度末、399兆円、2008年度比127兆円も増大し、総資産の45.2%を占めている。
2017年度の『株式分布状況調査』によれば、日本株の最大の保有者は外人の30.3%、以下事業法人21.9%、個人17.0%と続くが、投資信託の7.2%を加えると、個人が第2位となり、個人の配当は4.2兆円程度になるだろう。定期預金金利は年0.01%程度だから、家計は961兆円もの現預金を保有していてもほとんど利息は入ってこない。一方、配当利回りは1.7%(東証1部)だから、定期預金に比べれば格段に高いといえる。資金に余裕があり、リスクが取れるならば、銀行に預金するのではなく株式を買い配当を当てにするのも悪くはない。
2017年度と2008年度の大企業全産業の売上高を比較すると、3.3%減少している。だが、売上原価を8.7%も削減したため、販管費は2.7%増加したが、営業利益を124.6%も引き上げることができた。営業外収益の拡大と営業外費用の削減によって、経常利益の伸びは営業利益よりも高くなった。さらに特別損失が減少したことから、当期純利益は驚異的に拡大している。
かつては従業員給与(賞与含む)プラス支払利息・売上高比率は10%程度だったが、いまでは8%程度に低下しており、これだけで11兆円ほどの利益拡大になる。また、税金・売上高比率が1.5%にとどまっていることなども、利益に寄与している。
今のところ、売上高が伸びなくても、企業はコスト削減で利益拡大を図っているが、このような方法をいつまでも続けることはできない。企業が業績の拡大を持続させたいのであれば、従業員給与の増額が不可欠である。当りまえのことだが、従業員給与を増やさずして、売上高を伸ばすことはできない。経済は企業だけで成り立ってはいないのだ。需給のバランスを図ることが、企業が持続的な成長経路を辿るための条件である。
企業は巨額の利益を手にしても、結局、資金の使い道がなく、投資有価証券に余剰資金をつぎ込んでいるのだ。2017年度末、大企業全産業の投資有価証券は252.3兆円(全規模全産業保有投資有価証券の73.6%を占める)、2008年度末から108.4兆円もの増加だ。総資産の28.6%が投資有価証券という異常な資産構成になっている。投資有価証券の238兆円は株式であり、株式相場が上昇していれば問題はないが、リーマンショックのようなことが起これば、紙屑になる株式もでてくる。そうなれば、1990年代のように、株式は不良資産になり、バランスシートは痛めつけられる。米株がバブル化しているときに、巨額の投資有価証券を保有していることのリスクは極めて高いといえる。100兆円規模の減価が起こることも、なんら不思議なことではない。
投資有価証券などに資金を注ぎ込む余裕があるなら、それらは従業員給与に回すべきである。そうした行動をとることが企業の本来の役目ではないだろうか。