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金融恐慌と原発のメルトダウン

福島第1原子力発電所はメルトダウンしつつある。政府と東電の癒着により原子力発電所の建設に突き進んだ負の遺産はあまりにも大きい。「原発は安全」という触れ込みで、地域社会をわずかの金で買収し、放射能を浴びせただけでなく、子々孫々に核廃物を押し付けた。狭い地震多発国に55基の原発を持ち、さらに原発計画は目白押しであり、原発とそこからでる核廃物が日本を身動きできなくしている。

08年には米住宅バブルが破裂したが、起こる前までは、確率的にはそのようなことは起こらないといわれていた。マネタリストのような市場原理主義者が経済思想を支配しており、市場が機能すれば、金融恐慌のようなことは起こらないと。だが、かれらの経済モデルは完全競争を前提としており、しかも、正規分布に基づいていた。完全競争モデルでは、最初からそのような現象は排除されており、金融恐慌や株式暴落は起こらないのである。もともと起こらないモデルで分析・予測していたので、異常事態はモデルに入り込む余地はなかった。そのような前提では金融恐慌や株式暴落は起こりえないが、現実の経済世界は完全競争モデルのようなお伽噺の世界とは異なり、恐慌や暴落は起こり得るのである。

経済学の完全競争モデルの出所は物理学であり、そこからからの借り物である。原発が安全だという根拠も、経済学の完全競争と五十歩百歩である。原子炉や格納容器の安全性も各部材・部品が独立に存在するかのように計算されている。膨大な部品の安全性を確保することさえきわめて困難であり、しかもそれらを集合としてとらえた場合、安全性を確率的に求めることは不可能だ。炉内の変化はみることができず、核分裂反応を維持するには微妙な操作を要求される。100万キロワット級の核分裂の数は約8時間で1発の広島原爆を爆発させることに相当する(高木仁三郎、『巨大事故の時代』)。これほど大量に生産されている自動車や電化製品でさえも故障することがあり、すべてが完璧な製品にはならないにもかかわらず、原発が安全と唱えている人は、坊主がお経を唱えていることと大差ないのである。政府と電力会社はそういう妄信的な学者や技術者を集めて、原発の推進に邁進した。金融恐慌や原発のメルトダウンは偏った考え方に突き進んだことによる人災であり、決して回避できない現象ではなかった。

福島第1原発から放射能は急速に飛散していっているが、チェルノブイリのような事態に悪化すると、日本全体が放射能で汚染されかねない。特に怖いのが使用済み燃料のプルトニウムだ。原子炉ではウラン235に中性子をぶつけて核分裂反応を起こし、熱エネルギーを得るが、その過程でプルトニウムが生産される。生産されたプルトニウムのなかでもっとも多いのがプルトニウム239(約6割)であり、これの半減期は2万4,100年。ほぼ永久に封じ保管しなければならないことになる。プルトニウム239は100万キロワット軽水炉で年250キログラム生産される。福島第1だけで年1,175キログラムでてくる。永久に保管するコストは天文学的な数値になることは間違いないし、何万年も先までということは保管しないといっているのと同じことだ。これは猛毒で破壊力が強いアルファ線をだし、年摂取限度は400万分の1グラム、体内に入れば被曝が長期間続くことになる。さらに廃炉することになれば、そのコストは原発建設費の何倍にもなり、高レベルの核廃物が多量に発生する。

原発から電力を得るには、ウラン鉱石の採掘・精錬・加工、建設、廃物貯蔵、廃炉等のコストが掛かる。さらに原発の設備稼働率は低く、故障や事故のコスト、運転時の電力使用など勘案すると、原発の電力生産コストは高く、発電に至るまでに投入された直接・間接エネルギー量は計り知れない。生産コストが高くエネルギー投入量が膨大なだけでなく、原発建設後は放射能の恐怖に永久に脅えなくてならない。放射能に汚染されれば生態系すべてに影響はおよび、被曝はもとより長期間その土地に住めなくなり、木や草花も損傷を受け変形する。こうした放射能に曝されるリスクや永久保管のことを国や東電はどう考えているのだろうか。

唯一の被曝国としていまだに多くの人が原爆に苦しんでいるなかで、同じような悲惨な被曝が起こりうる原発を平気で作り続けてきたことは、広島や長崎の教訓がまったく活かされていないといってよい。国は核兵器をつくらずと宣言しながら、原発は核兵器になるプルトニウム239を日々製造している。

原発依存から脱却する必要がある。あまりにも生活は電気に依存しすぎた。昼と夜の区別なく電気を使い続ける生活を変えなければ、日本から原発を断ち切ることはできない。夏は冷房を入れ快適に過ごすし、冬は暖房を入れ暖かく過ごすことなども考え直さなければならない。24時間営業のコンビニのような営業形態は適度な時間帯で閉店し、百貨店やスーパーもそんなに長い時間、店舗を開けることもないだろう。会社は5時、6時で終業し、無駄なエネルギーを使わないようにしたい。就業時間を守り、夕餉くらいは家族全員で取りたいものだ。

エネルギーを多量に消費しながら季節外れの作物を栽培するようなことも止めなければならないし、コンビニで求めたおにぎりを食べ、ペットボトルのお茶を飲むことも慎まなければならない。四六時中宅配便が走り回るような仕組みも決して良いとはいえない。国内にはエネルギー源がまったくないのだから。日本の身の丈に合った生活スタイルを構築しなければ、今回の危機を乗り越えたとしても、危機は幾度も津波のように日本に押し寄せてくるだろう。