Share |

「しっかり」しない米国経済

28日公表のFOMC声明で「経済活動はしっかりしたペースで拡大している」と景気判断を前回より上方修正したが、週末に発表された10-12月期の米GDP統計によると、実質前期比0.7%と前期よりも0.5ポイント低下し、「しっかりしたペースで拡大している」とはいえない。原油価格の急落などによりGDP物価指数は前期比横ばいとなり、物価は極めて安定している。PCEコア物価指数も前期比0.3%、前年比1.4%に低下しており、FRBの2015年見通し(1.5%~1.8%)を下回った。GDP統計をみれば、経済成長は鈍化しており、物価の伸びは鈍化しつつあり、FRBがゼロ金利を解除する理由を見出すことは難しくなっている。

実質GDPは前期比0.7%伸びたが、寄与したのは個人消費支出の0.7%が最大で、あとは在庫の0.2%といったところか。民間設備投資と住宅の寄与はほぼゼロとなり、貿易と政府部門はそれぞれマイナスの寄与となった。個人消費支出の前期比伸び率は3期連続で拡大し成長を牽引したが、民間設備投資の伸びが大幅にダウンしたことが成長を鈍化させた。個人消費支出のうち財が引き続き拡大し、ウエイトの大きいサービスが4期ぶりの高い伸びとなったことが、個人消費支出の寄与度を大きくした。

2014年の米実質GDPは前年比2.4%と前年を0.2ポイント上回り、2010年以来の高い伸びとなった。個人消費支出は2.5%と前年を0.1ポイント上回ったが、サービスの伸びが財を下回っていることが、個人消費支出の高い伸びを阻害している。2014年のサービスは2.0%増加したが、2013年までの6年間は2%未満の低成長であった。

個人消費支出は2014年、実質2.5%増加したが、2006年以来8年ぶりの高い伸びなのだ。個人消費支出は好調なときには5%を超えていたが、いまでは3%にも届かないのである。なぜこれほど個人消費支出の低迷が続くのだろうか。最大の理由は可処分所得の伸びが低いからだ。

2007年から2014年まで個人所得は2000年から2007年までの伸びとそれほど大きな違いはないが、報酬となると2007年までの7年間(A期)は34.8%拡大したが、2014年までの7年間(B期)では16.6%と伸び率は半減した。可処分所得の伸びもA期の42.0%に対してB期は23.5%に鈍化している。さらに可処分所得を1人当たりでみると、名目では32.9%に対して17.0%、実質では13.8%に対して2014年までの7年間ではたったの4.4%しか増加していないのである。これでは個人消費支出が伸びないのが当たり前だ。

 国民所得に占める賃金・給与の割合が低下していることも可処分所得の拡大を抑え、個人消費支出低迷の要因になっている。2013年の報酬の割合は52.1%と5年連続で低下し、1941年以来実に72年ぶりの低い比率なのである。他方、2013年の税引後利益の割合は7.2%と1965年と並び、これを上回るのは1929年の8.9%しかない。これほど報酬と利益の分配は歪んでいるのである。労働分配率の低下と利益の拡大が続くならば、極度の需要不足に見舞われ、米国経済は激しい不況に陥ることになりかねない。

 米GDPの発表を受けて、米国債利回りは1.65%と2012年12月以来約2年ぶりの低い水準に低下した。10-12月期の名目GDPは前年比3.7%成長しているにもかかわらず、国債利回りは成長率の半分以下である。経済成長が思わしくないので、FRBのゼロ金利政策が長引くという期待もあるのだろうか。先行きの経済が分配の問題や個人消費支出の低迷などにより、停滞色を強めるとの考え方が広まっているからだろうか。

 ドイツの国債利回りは0.3%と過去最低を更新し、日本にほぼ並ぶ。いかにも異常である。1月の独消費者物価指数が前年比-0.3%、ユーロ圏消費者物価指数が-0.6%とマイナスになり、デフレ感が強まり、ECBが国債購入を決定したことも独国債買いを促した。英国債利回りも1.33%に低下するなど主要国の国債利回りは軒並み過去最低を更新する有様。

米国の失業率は昨年12月、5.6%まで低下したが、12月のユーロ圏は11.4%と改善は進まない。スペイン、ギリシャ(昨年10月)は23.7%、25.8%、25歳以下に限れば51.4%、50.6%と半分の人が失業している状態である。フランスやイタリヤも25歳以下は25.2%、42.0%と異常に高い。高失業率の状態が続くことになれば、個人消費にさしたる変化はなく、消費者物価のマイナス幅は大きくなるだろう。物価の下落幅が大きくなれば、消費はますます控えられ、ものから金に資産はシフトすることになる。金融政策では実体経済を動かすことができない経済状態に欧州は陥っているのである。

日本の消費者物価は消費税引き上げで昨年4月以降、前年比3%台に上昇したが、昨年12月は総合2.4%、生鮮食品を除くは2.5%まで低下してきた。12月の消費者物価指数は昨年4月を0.2%上回っているだけであり、資源価格の急落などの影響もあり、今年4月はマイナスになるだろう。円ドル相場は弱い米国経済や日本の消費者物価の前年割れを睨んでピークアウトしたとみてよいと思う。

関連資料サイズ
150202).pdf382.87 KB