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いつまで続く円安・株高

7月以降、円安ドル高が進んでいたが、9月は5円56銭、10月、2円70銭、11月、6円31銭と急激な円安となり、先週末の円ドル相場は6月末比、約20円も安くなった。政府と日銀の政策が奏功したことに、正反対の日米の景気と金融政策が円安ドル高に拍車を掛けたといえる。円安ドル高は即座に日本株買いに繋がり、外人主導により、日経平均株価は急騰し、あっという間に1万8,000円に近づいた。4月には一時1万4,000円を割り込んでいたが、今では年初来安値から4,000円も値上りしている。円安とGPIFの日本株のウエイト大幅引き上げは絶大なる効果を発揮した。

自民党の300議席超獲得といったマスコミ報道も買い材料となり、目下6連騰である。自民党圧勝期待が株高を呼び、株高が自民党をより強くするという株式と自民党の好循環が保たれている。さらに、11月の米雇用統計が予想よりも良かったことから、週末、NYダウも過去最高値更新で引けている。NYダウは週間では7連騰とこちらも日本株高を後押ししている。

 2007年7月以来の円安ドル高が日本の株価をここまで引き上げたけれども、円安ドル高はさらに進行するのだろうか、進行すると株価もこれまでのように上昇するのだろうか。 

日本のGDPは7-9月期まで名目、実質共に2四半期連続の前期比マイナスだが、米国はプラスであり、日米の経済は逆方向に動いている。こうした日米の経済動向は容易に変わらないだろう。米国が日本の成長率を上回る状態は続き、成長性や金利の側面からは円安ドル高の基調は崩れないように思う。ただ、米株の上昇期間は長期化しており、株式は実体経済の成長速度をはるかに上回っており、バブル化している。ゼロ金利の弊害が株式や国債相場、耐久消費財などに現れており、米株式相場が崩れることになれば、円安ドル高は円高ドル安へと一気に進むだろう。

10月の景気一致指数は2ヵ月連続で上昇し、7-9月期を上回っているが、4-6月期よりも低く、10-12月期も低迷から抜け出せないだろう。7-9月期の名目家計最終消費支出が前年比-0.5%と2四半期連続のマイナスとなったが、賃金が伸びなければ、名目家計最終消費支出の前年割れは持続し、名目成長率も伸びないことになる。翻って、米国は雇用統計が改善しているように、10-12月期のGDPは前期以上に伸びるだろう。経済成長の格差が大きく、金融政策も一方は引き締め、他方は緩和となるのでは、円安ドル高はいたしかたない。

日本経済は景気後退に陥っているが、金融政策ではどうすることもできないのだ。すでに長期間、日銀は大規模な国債購入を続けており、結果は明らかになっている。それでも、懲りずに同じことを繰り返すとは遇の骨頂だ。金融政策の効果は、ゼロ金利ですでに出尽くしている。貨幣需要がないところへいくら貨幣を供給しても非民間金融部門へ貨幣が流れていくことはない。貨幣の最大の需要先である企業は有り余る資金を保有しており、金融機関から金を借りる必要があまりないのである。結局、過剰貯蓄は、日銀が国債を年間80兆円購入しようがしまいが、日銀の行動に関係なく、不足部門である国に流れていくのである。

日銀が国債を購入しなければ、金融機関が国債を購入し、国に金が流れ込むことになる。あたかも日銀が金融機関から国債を購入すれば市場に金が流れ込み、金融緩和のようにいわれているが、とんでもない誤解だ。今の日本では、1%以下の金利でも金を借りて事業を起こしたり、設備投資をする意欲が湧いてこないのである。つまり、日本経済は定常状態下にあり、新規の資金需要はほとんどないということなのだ。

国内銀行の資産・負債(銀行勘定)によれば、今年10月末の貸出額は453.4兆円、2013年3月末比2.7%増の12兆円の増加にとどまっている。預金は648.1兆円、15.1兆円増であり、預金の増え方も緩やかである。大きく変化したのは日銀預金額であり、2013年3月末の45兆円から今年10月末109.1兆円へと2倍以上に増加する一方、国債は166.6兆円から129.3兆円へと減少した。国内銀行の日銀預金が増加し、それを元に日銀が国債を購入したのであり、買い手が変わっただけなのである。

市場に金が溢れるような報道が目に付くが、溢れるのではなくて、資金移動があっただけで、非金融部門に金など溢れていない。本当に溢れるようにするには日銀が直接、社会に金をばら撒くことしかないのである。そうすれば、2%の物価目標などただちに達成できるだろう。金融機関から国債をいくら購入しようが、金が非金融部門に溢れ、それが消費や設備投資に使われなければ、物価は下がっていくだけだ。国債購入は物価上昇率2%を念仏のように唱えることとなんら変わりない。

消費税率の引上げで、4月の消費者物価指数は前年比3.4%に上昇したが、5月の3.7%をピークに10月は2.9%に低下している。消費需要の低迷により、消費者物価は下がり続け、消費税の影響がなくなる来年4月にはゼロ前後に低下するだろう。日米の経済成長の違いは存続するものの、日本の消費者物価がふたたびマイナスになり、お金の価値が上昇することになれば、円は強くなるだろう。円高ドル安になれば、輸入物価の下落により、消費者物価はさらに低下し、前年割れが常態化すると思う。消費者物価の大幅な低下となる4月以前から円高ドル安に変わり、それに伴い株高も終了しているはずだ。

金融政策が掛け声倒れに終わり、日銀の化けの皮は剥がれ、日銀の権威は完全に失墜することになる。そのときは、日銀の後ろ盾の政府の政策、「アベノミクス」も単なるキャチフレーズにすぎないことが知れ渡るはずだ。結局、金融政策は破綻し、財政政策によってのみ、日本経済の需要不足の一部は埋め合わすことができたといえる。「アベノミクス」=財政政策なのである。

経済産業省などが成長戦略の振り付けをしたところで、所詮机上の空論の域をでるわけではなく、頭の中だけで実行できるデザインなど描けるものではあるまい。そもそも人口減・超高齢化で、だれが前年を上回るほどモノやサービスを買うのだろうか。なだらかにGDPが減少していくのが現実に即した経済なのだ。成長戦略のようなことに頭を使うくらいなら、原発をすべて廃炉することにでも集中したらどうか。経済の落ち込みを最小に留めたいのであれば、雇用の正社員化や労働時間の短縮、有給休暇の完全取得化などまず実行すべきである。そうすれば消費をいくらか刺激できるからだ。

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