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お人好しの日本人

衆議院選挙は予想通り自民・公明で3分の2を維持する与党の大勝で終わった。安倍首相にとっては約700億円もの金を注ぎ込んで選挙をした甲斐があったことだろう。「アベノミクス」という魔術をつかい、国民を幻惑させ、勝利した。これで今後4年間、これまでの方針を強力に推進することができる。勢いづく安倍政権は日本をさらに右に大きく舵を切るだろう。

「アベノミクス」が浸透すれば、中小企業や地方、さらには非正社員まで恩恵が及ぶというが、格差拡大のなかで、そんなことができるのだろうか。「アベノミクス」とカタカナでなんとなくいいなあという感じを抱かせているけれども、金融・財政政策を推進しただけであり、過去の経済政策となんら変わらない。名前を変えただけだが、カタカナに弱い日本人には効果絶大であった。日銀の「異次元緩和」も目眩ましにすぎない。実体経済に効果がない「アベノミクス」を信じるお人好しのなんと多いことか。

すでに日本経済は縮小経済に入り、成長することはないのだが、あたかも成長し、いまよりも経済が大きくなるような幻想を国民に与え、それがよいとされたのだ。だれもマイナス成長よりもプラス成長になることを望むのだが、無い物ねだりであり、マイナス成長経済下でいかに国民は生活を送るべきかを考えていかなければならないのである。それをいまだに経済成長を目指し、成長を前提に年金や医療などのシナリオを描いているのだから、早晩、すべては崩れ去ってしまうことになる。現実離れした経済成長路線を想定すれば、日本経済はますます歪になり、膿も溜まりほどこしようがなくなる。付けをどんどん先送りし、金融資産や財産課税の導入を図らなければならなくなるだろう。

今回の投票率は過去最低であり、半分近くの有権者が棄権した。これでは組織率の高い公明党や共産党、自民党が勝つのは当たり前。小選挙区制で組織力の弱い野党が乱立すれば、自民党に議席を差し出すことになる。しかも、投票所へ足を運ぶのは中高年者が支配的である。前回の衆院選の年代別投票率をみても60代が74.93%と最高であり、以下50代の68.02%、70代以上の63.3%と続く。20代は37.89%と年代別では最低。人口構成でも最大の団塊世代を含む60代と70代が自民党の最大の応援団なのだろう。

「アベノミクス」がなにかを見極めることなく、簡単に騙され、集団的自衛権や原発稼動を認める。なにが大事なことかを判断することができない。正鵠を射る目利きがほとんどいないのだ。大半が似非目利きなのである。言葉に騙され、本当のことがわからなくなる。二者択一問題に馴らされ、なんとなく「アベノミクス」に賛成してしまう。

戦後、大学進学率は飛躍的に伸びたが、進学率が高くなっただけで、知力は低下しているように思う。進学、就職といった本来、学問することと関係ない目標だけを目標にしてきた結果が、今の日本の政治状況を作り上げたのだ。大学が就職するための機関への堕落は、大学が自らを否定していることである。

 大学人が「アベノミクス」にほとんど言及せず、大学でおとなしくしているようでは、社会の活力は生まれてこないだろう。教師は学内で忙しく、学生は就職で右往左往しており、政治問題などに関わっていられないといったところか。為政者にとっては、大学人の政治への関心が低くなれば、政治はやりやすくなる。労働組合はまったく衰退してしまい、政治に拮抗する勢力は消えてしまった。為政者と経済人との二人三脚で国を支配できるという、為政者にとっては、これほど政治をやり易い時代はないのではないか。お人好しの日本人が、為政者の勝手気ままを許し、独裁への道を与えているように思う。

 

原油を中心に商品相場が崩れている。WTIは前年末比41.3%の急落だ。急落しているとはいえ、急騰していった2004年以前の水準にはまだ戻っていない。それまでWTIはほぼ1バレル10ドルから30ドルの範囲に収まっていたが、米国の低金利政策により、株式同様、商品もマネーゲーム化し、一時、140ドルを超え、本来の相場から逸脱してしまった。ところがFRBが長期ゼロ金利を来年の早い段階で打ち切り、利上げに踏み出すことから、これまでのようなマネーゲームを続けるわけにはいかない状況になってきた。

米国経済も成長しているとはいえ、7-9月期、実質前年比2.4%と金融危機以前に比べれば低く、日本はマイナス、ユーロも低迷しており、こうした世界経済の不振も商品相場下落に追い討ちをかけている。

 先週末、日本の国債利回りは0.3台に低下し、過去最低を更新した。ドイツの国債利回りも0.6%台に低下し、過去最低を更新、米国も2.08%と低下傾向を強めつつある。国債利回りは歴史的に異常に低い水準に低下しており、先行き主要国の成長はきわめて低調に推移することを示唆している。

 国債利回りの低下は期待成長率の低下であることから、通常、株式は下落するけれども、今回の利回り低下過程では逆に、株式は値上りしている。商品相場の急落にもかかわらず、株式は強い。これほどの景気見通しへのリスクの高まりは、近いうちに株式も調整局面を迎えることを暗示しているように思う。

 東証1部の時価総額は先週末、506.6兆円、名目GDPの1.05倍の規模である。株式時価総額が名目GDPよりも大きくなったのは戦後(年末時点)4回記録している。1988年、1989年、2005年、2006年だが、今年末もこのまま推移すれば5回目となる。株式が実体経済より大きくなることは、株式がバブル化していることなのだ。

米国は株式価額・名目GDP比率は9月末、2倍と日本の倍であり、歴史的にみても異常な比率なのである。これがバブルでなくてなにがバブルかというほどの株式の膨れ方である。このような株式が膨張した状態で利上げが行われるとどのような結果になるのだろう。米株式の破裂は即座に日本に伝染し、政府・日銀ではなす術がなく、呆然と立ちつくすのみか。

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