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かなりな速度で落ち込む日本経済

FRBの金融緩和策が発表された9月13日までに、株式や商品はその効果を織り込んでしまった。金融緩和策の経済効果よりも金融政策自体が、多くの市場参加者に株式や商品の値上がり期待を抱かせていたからだ。まさに美人投票の結果といえる。CRB指数などは9月14日までの7連騰で4.1%上昇したが、26日には14日比5.4%も下落した。S&P500は14日の高値を抜けず、金融緩和期待に基づく相場も終わったようだ。

日経平均株価はS&P500がピークを付けた2営業日後の19日に高値を付け、月末値はそこから3.9%下落し、下落率はS&P500よりも大きい。株式の下落に伴い10年物国債の利回りは週末、0.765%と8月6日以来の低い水準に低下した。株が値下がりし国債が値上がりするにはそれなりの理由がある。実体経済が悪いからだ。それもかなりな速度で落ち込んでいる。金融政策で相場は多少持ち上げられたが、実体経済の悪化には逆らえない。

 株価はどこまで下落するのだろうか。これからの企業収益力に依存しているが、減益に向かっていることから、日本株は割高だと判断している。日経平均株価でいえば7,000円台に落ちてもなんら不思議ではない。日本の悪い部分が取り除かれるのではなく、さらに悪い要素を取り込んでいるからだ。

 ぶどうがすきでこの季節がいつも待ち遠しいのだが、もう何年も前から巨峰は種無しが主流になり、昨今ではスーパーで種ありを求めるのが難しくなってきた。なぜわざわざ手間がかかり、まずくなる種無し巨峰が市場を席巻するのだろうか。消費者が種無しを求めるのでしかたなく種無しを生産しているのが実情なのだろう。巨峰の味などどうでもよいのだ、簡単に口に入るものであればという感覚なのであろうか。日本人は種を出すことさえ億劫になっているのだと思わざるを得ない。

 種無し巨峰と同じように、手を加えてコストも余分に掛かり、品質も落ちるが、それでも売れている商品はいくらでもある。なにの取捨選択をするでもなく、ただ、商品があるから求めるという姿勢である。無駄と品質劣化がさまざまな生産プロセスで行われているのだと思う。種無し巨峰の生産がはびこればはびこるほど、本当の良さが失われてしまうのである。種をなくすことで大切なことが失われることを忘れてはならない。

週末、8月の鉱工業生産が公表されたが、前月時点での予測を下回り、生産指数は前月比1.3%下落した。これで2ヵ月連続減だが、9月は2.9%のマイナスが予測されており、さらに悪化することは間違いない。今年に入ってからの8ヵ月のうち5ヵ月がマイナスとなり、あきらかに生産は低下している。8月の生産指数がピークの1月から5.6%も減少していることは、製造業の業績悪化を予想させ、株式離れを促している。

 9月の生産は大幅減となり、10月は横ばいと予測されているが、在庫が08年の金融危機時の高水準に張り付いていることから、年内は減産が続くだろう。輸送機械の生産は8月まで4ヵ月連続の前月比マイナスだが、在庫は2ヵ月連続増と思うように在庫を少なくすることができない。

9月21日にエコカー補助金が終了したことから、新車販売は急減し、一段の生産縮小を余儀なくされるはずだ。鉱工業生産に占める自動車産業のウエイトは高く、関連産業の裾野が広いだけに、新車販売の厳しい状況が長期化すれば、製造業の回復もなかなか見込めないことになる。

液晶テレビの生産が8月、前年比91.4%減、在庫率419.6%に象徴されるようにエレクトロニクス関連は軒並み酷い状態にある。設備投資の怖さをまざまざと見せ付けられる。8月の鉱工業生産指数は90.5(2005年=100)だが、情報通信の生産指数は62.8と主要産業では最低である。一方、鉱工業生産の在庫指数は108.8だが、情報通信の在庫指数は192.8だ。先行きの需要見通しを誤り、過大な設備投資を行った付けが回ってきているのである。需要の増加が見込めないのであれば、不必要な設備を破棄し、身軽になる以外にはないだろう。ずるずると引き延ばしていれば傷口は大きくなり、取り返しのつかないことになる。9月末の東証電機株指数は875.41と3ヵ月連続の月末比減となり、ITバブル期の過去最高値から約76%下落し、1981年末の水準に戻った。日本のエレクトロ産業は重大な岐路に立っている。 

「法人企業景気予測調査」(8月中旬調査)によると、製造業の設備投資(ソフトウェアを含む、土地を除く)は今年度上期、前年比23.0%、下期は8.2%それぞれ増加すると予想されている。だが、鉱工業生産の資本財生産(輸送機械を除く)は8月、前月比3.9%減と2ヵ月連続のマイナスとなり、前年比でも7.7%減と4ヵ月連続の前年割れだ。出荷も前年比7.7%減と3ヵ月連続で減少しており、「法人企業景気予測調査」のプラス予想とは異なる。

機械受注(船舶・電力を除く民需)も4-6月期は前年比1.7%減、1-3月期をみても3.3%増と低い伸びである。先行き7-9月期の予想は4.8%減となっており、設備投資は「法人企業景気予測調査」のような高い伸びにはならず、下期はマイナスになるだろう。

資本財の生産は減少しているが、在庫水準は114.5と鉱工業生産の在庫水準を上回っている。資本財部門は過剰在庫を抱えており、今後さらに生産を縮小せざるを得ないだろう。設備投資に関連深い鉱工業生産の「一般機械」を取り上げても、設備投資は厳しい局面に向かっていることがわかる。一般機械の生産は8月、前年比9.6%減と4ヵ月連続のマイナスだが、在庫は13.7%増加しており、在庫が適正水準に低下するまで一般機械の生産は回復しないだろう。設備投資の冷え込みは経済を激しく収縮させ、企業収益を悪化させる。市場参加者は日本経済の厳しい現実を直視していない。 

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