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なりふり構わぬ財政支出が消費の激減を食い止めることができるか

実体経済を尻目に株式は絶好調だ。先週末のナスダック総合は過去最高値に限りなく接近した。過去1ヵ月で11.4%の上昇である。株式が示すように、各国のなりふり構わぬ財政支出が功を奏し、この先、実体経済は回復基調を強めていくのだろうか。実体経済が回復するということは、極端に落ち込んだ消費支出が急速に上向いていくことでもある。だが、一旦落ち込んだ消費支出が以前の水準に戻るには、数ヵ月や半年の期間では無理だろう。年単位の長期の時間を要するのではないだろうか。

深刻な不況下の金融相場、いや国策相場がいつまで続くのだろう。トランプ大統領や安倍首相のような民主主義を踏みにじり、独裁を好み、所得・資産格差で社会を不安定にする政治を続けるならば、実体経済も不安定化するのは必定ではないか。

国策だけで相場が保たれるはずがない。自由市場を標榜しながら、実態はそれから掛け離れた国家管理の博打場に成り下がっていることを市場関係者はどのように受け止めているのだろうか。常識がまったく通用しない相場は博打と同じである。いまの株式市場は市場とは言えない。

新型コロナがこのまま収束するとは考えにくく、人と人の接触は長期間、制限される状態が続くだろう。そうであれば自宅での生活時間が長くなり、外食、宿泊、観光などのサービス業の不振も長引くことになる。ウイルスという目に見えないことへの不安感がいつまでも脳裏にこびりつき、人の活動に自制を促すだろう。

5月の米雇用統計によれば、非農業部門雇用者数は前月比250.9万人増加した。4月の2,068.7万人減の一部が職場に戻ったようだ。最大の増加はレジャー・接客の123.9万人であり、これだけで増加の約5割を占める。

失業率も13.3%と前月比1.4ポイント低下した。ただ、失業者は前月比209.3万人減少したが、なお2,098.5万人もいる。2008年の金融恐慌後、失業者が最大になった2009年10月の1,535.2万人よりも563.3万人も多い。4月の非労働力人口は前月比657.0万人増加したが、5月は159.5万人減にとどまり、非労働力人口にもかなりの求職を諦めた人が加わり、失業率の低下を手放しで喜ぶわけにはいかない。

20歳以上の白人男の失業率は5月、10.7%だが、白人の女は13.1%と男より2.4ポイント高い。黒人は男15.5%に対して女は16.5%と前月よりも上昇している。学歴別(25歳以上)では、大学卒以上は7.4%だが、高卒になると15.3%跳ね上がり、高校を終了していない人は19.9%とさらに高い。大卒以上の失業者の総失業者に占める割合は27.7%だが、大学卒の資格を持たない人が失業者の72.3%を占めており、米国は日本以上に学歴社会なのである。学歴がなければ、賃金は安く、今回のような事態に陥ると真っ先に首切りになる。

格差だらけの不満が渦巻く社会だから米国社会は、なにかのきっかけがあれば荒れることになる。火に油を注ぐ大統領だから余計に騒ぎは拡大する。良識に欠けるまともでない大統領が米国社会をさらに混乱に陥れるかもしれない。

 

『家計調査』によれば、4月の勤労者世帯(二人以上の世帯)の消費支出は前年比9.9%減少した。可処分所得も0.5%減となったが、消費支出が大幅に減少したため、平均消費性向は70.9%、前年比7.4ポイントも低下した。可処分所得から消費支出を除いた黒字額124,776円と前年よりも31,238円多い。この31,238円を年率でみれば約20兆円の黒字増・消費支出減となる。家計が消費を控え貯蓄を増やす行動を持続させるならば、今年度の消費支出は20兆円程度減少するかもしれない。

4月の日本の輸出は前年比21.9%減、金額では1.46兆円の減少である。年率では17.5兆円の急減だ。2008年度と2009年度の輸出の前年比減少額は14.0兆円、12.1兆円であったことから、今年度の輸出が17.5兆円減少することも十分に考えられる。

国内消費支出と外需の落ち込みによって、設備投資も冷え込むだろう。2019年度の民間設備投資は名目87.4兆円である。2008年度、2009年度の民間設備投資は前年比5.0兆円、11.3兆円それぞれ減少している。国内消費に加えて外需も干上がっていては、今年度の民間設備投資は10兆円前後のマイナスを覚悟しておくべきだ。

今年度の名目GDPは主要な支出だけで前年を約50兆円下回ることになるだろう。2019年度の名目GDPは552.0兆円であるから、およそ10%の減少となる。ただ、第1次補正で25.6兆円が成立し、第2次補正では31.9兆円が閣議決定されている。補正予算第2号が成立すれば補正の合計額は57.5兆円となり、57.5兆円はすべて国債で賄われる。今年度の一般会計の規模102.6兆円に補正を加えれば160.1兆円、国債発行額は90.1兆円へと膨らむ。

貯蓄がかなりのスピードで増加している半面、設備投資と超過輸出額は減少傾向を強めている。これを放置すれば、GDPは急速に減少し、不況の谷は深く、長期化するだろう。景気後退を食い止めるには政府の支出は不可欠である。

それにしても今年度の一般会計予算の規模は巨額だ。昨年度の名目GDPの29%に当たる。もはや資本主義経済と言える経済体制ではない。財政政策と金融政策の稼働率を100%まで引き上げてしまった。もし地震等見舞われたならば、追加支出が可能だろうか。そうなれば、日銀が国債を直接引き受け、日銀券を政府に供給する方法を採ることも視野に入れているのではないだろうか。

どさくさに紛れて、大企業や経済産業省に結びつきの強い企業が補正予算の甘い汁を吸っている。火事場泥棒のようなことが起こっているのだ。安倍側近政治の為せる業なのだろうか。新型コロナ特需とでも言える巨額の財政資金に群がる得体の知れない会社が暗躍するのはいつものことである。使途が決まっていない予備費が補正2号では10兆円も用意されていれば、なおのことそつない面々が近づいてくるだろう。下請けをいくつもかませることで資金の多くは労苦のない企業に吸い取られてしまう。

10兆円が、必要とするところへ到着するまでには7兆円になっているかもしれないのだ。3兆円はブローカーに吸い上げられ、濡れ手で粟の丸儲けになるのだ。補正57.5兆円のどの程度が最終需要に結びつくかはわからない。安倍方式では資金の多くが企業に流れてしまい、消費需要を刺激する効果は金額ほどではないことは確かだ。補正予算を有効に使うには、小中学生を抱えた低所得者層に再度給付することではないだろうか。

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