Share |

まだまだ高い米株式

週間、日経平均株価は3,318円急落し、直近高値からの下落率は27.5%にもなった。2016年11月第2週以来、3年5ヵ月ぶりの安値だ。NYダウの直近高値からの下落率21.5%を上回る下げである。米株暴落の大波は世界中に波及し、欧州では30%を超えている。新型コロナウイルスがイタリアを中心に広がっているからだ。原油価格はサウジとロシアの仲違いが下落に拍車を掛け、直近高値から約5割も落ち込んだ。CRBも24.8%急低下しており、米株式暴落の影響はあらゆる相場に及んでいる。米株の動揺が収まらない限り、世界的な相場の波乱は収束しない。

米国経済はいまのところ変化はみられないが、欧州からの入国禁止や非常事態宣言などの影響があらわれ、景気は減速に向かうだろう。特に、原油価格がバレル30ドル近くまで下落するとシェールオイル関連は打撃をうける。

過去4年の米鉱工業生産の伸びは、エネルギー部門が牽引しており、非エネルギー部門は過去のピークを超えていない。2020年1月のエネルギー生産指数は119.2(2012=100)であり、2016年1月から12.7%上昇している一方、非エネルギー生産指数は105.1、過去4年間で3.5%しか伸びていない。非エネルギー生産指数の過去最高は2007年12月の110.7であり、今年1月はそれを5.1%下回っている。

エネルギー生産指数は概ねWTIの動きに連動しており、WTIの変動にやや遅れて反応している。最近の急激な原油価格の下落によって米エネルギー部門は深刻な状態に陥るだろう。生産コストの高いところは資金繰りに直ちに直面し、破綻に追い込まれ、貸付が返済不能になるなど信用問題が発生するだろう。信用不安の伝播はマネーの動きを委縮させる。

株式の暴落などが消費者心理に悪影響をおよぼし、消費や住宅購入に買い控えがみられるかもしれない。米GDPの約7割を占める個人消費が低迷することになれば、米国経済の成長は止まることになる。

トランプ大統領が就任したころの実質経済成長率は前年比2%であったが、その後上昇し、2018年4-6月期には3.2%まで拡大した。だが、それ以降成長率は鈍化しており、昨年10-12月期は2.3%と就任当初に戻ってきている。

そうした中でも、FRBの利下げによって株式は好調を維持し、過去最高値を更新していた。株式は経済成長率の鈍化に逆行していたのだ。経済成長率が鈍化しながら企業の純利益が増加することはない。良くて横ばい、普通は減益になるはずだ。

事実、昨年7-9月期の純利益は前年比0.3%減少している。トランプ大統領が就任した2016年1-3月期と比較しても13.3%増にとどまる。2016年1月末のNYダウと過去最高値を比較すると約8割も上昇しており、先週末でも40.8%の上昇となっている。純利益は横ばいから減益の見方が広まっているにもかかわらず、株式は高騰を続けていたのだ。少しでも火が付けば大火事になる状況にあったといえる。たまたま新型コロナウイルスによる着火が、遼原の火のごとく市場を襲い、バブルが破裂しつつある。

昨年末の米株式価額は54.9兆ドル、名目GDPの2.52倍となり、倍率は過去最高を更新した。ITバブル後と2008年の金融恐慌後には約1倍まで落ち込んでおり、今回も低下するだろう。が、先週末でも2.1倍程度であり、実体経済と釣り合いのとれた正常な状態とは言えない。株式価額・名目GDP比を1.5倍程度とみるとS&P500で2,000弱である。

トランプ大統領を支えている株式が崩落すれば、支持率は急低下し、再選は見通せなくなる。金融政策は効かないので財政政策を総動員させるだろう。非常事態宣言下にあるので、需要を喚起するような政策を打ち出しても、効果は限定的である。ウイルスが下火になるような対策が先決だが、いずれにせよ、免疫力が強まり、抵抗力が付かなければ終息しない。それまでには相当の時間を要する。

日本株は過去最高値の半分にも満たない水準に下落した。景気後退下にあることに米株の暴落が加わり、米株以上に深刻な状態にある。昨年10月の消費税率引き上げが消費を冷やしたが、さらに新型ウイルスが人の移動を妨げ、さまざまさ経済活動を低下させている。

日本株の急落で円も売られてきた。米株が一段安となれば、その時は円高になるかもしれないが、日本株の動向にもよる。日本経済が米国よりも悪いということが主な売り材料になっているのであれば、日本株はまだ叩かれる。

企業は設備投資をかなり絞り込むだろう。昨年10-12月期の民間企業設備(実質)は前年比4.4%減少したが、前年割れは向こう数四半期続くだろう。内需ばかりでなく外需もより細くなるという見通しでは設備投資をする意欲は湧いてこない。設備投資の下振れの日本経済へのインパクトは大きい。経済の見通しに不安を覚えれば、雇用にも慎重になる。すでに1月の新規求人倍率が2.04倍と前月から0.4ポイントも低下しているように、企業は採用方針を変えようとしている。

超金融緩和策を講じている日銀にとってなすべき正当な政策はない。上場投信を買うという覇道を取ってもこの様である。投機を煽り、相場を歪めただけで、酷いしっぺ返しをくらうだけだ。性懲りもなく買い増しするならば損失は雪だるま式に増えることになる。信用第一の日銀が信用不安の渦中となれば、その影響は計り知れない。円は大暴落し、相場は崩落、日本経済は見るも無残な姿になるだろう。

安倍首相におもねるあまり本来の日銀の路線から逸脱してしまった。証券会社や銀行のエコノミスト、アナリストが上司を忖度し、自説を曲げたレポートを発表するが、最終的には自分の首を絞めることになる。日銀は自分の首を絞めるだけでなく、国民の首を絞めることになる。そのことを肝に銘じてもらいたい。

関連資料サイズ
200316).pdf409.84 KB