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トランプ大統領では米経済袋小路に(その2)

25日、NYダウは初めて2万ドルを超えた。大統領令を矢継ぎ早に発令し、傲慢さを撒き散らしながら、独裁政治の様相を漂わせている。民間企業への介入など何のその、トランプ大統領の行動は社会主義経済を地で行くものである。中国の経済政策に近いといってもよいだろう。そうしたトンプ大統領の社会主義的行動を米株式市場は高評価するのである。株式市場は経済的要因よりもトランプ大統領の胸中を忖度することに最大の関心を払っている。トランプ大統領のツイッターが相場に関与するという過去にない相場展開になっている。

とはいえ、いつまでもトランプ大統領のツイッターに右往左往させられるのだろうか。最終的には、米国経済が健全な経路を歩んでいくことができなければ、相場は崩れていくだろう。忖度に忖度を重ねるという期待だけでは長続きすることはなく、早晩、実体経済に相応しい水準に落ち着くことになるはずだ。

週末、10-12月期の米GDPが公表されたが、株式が過去最高値を更新できるような内容ではなかった。実質前期比0.5%増と7-9月期の伸びより0.4ポイント低下した。これで2014年10-12月期以降、9四半期連続の1.0%未満の低い成長だ。前年比でも2015年10-12月期以降、5四半期連続の1%台であり、米国経済はかなり低空飛行している状態である。

実質前期比0.5%成長の寄与度をみると、個人消費支出の0.4%がトップだが、次が在庫の0.3%、設備投資と住宅はいずれも0.1%にとどまり、ドル高の影響か純輸出は-0.4%と前回の0.2%からマイナスに悪化した。

GDP構成比の約7割を占める個人消費支出、さらにその63%を占めるサービスが前期比0.3%しか伸びないのでは、高い成長は望めない。個人消費支出の足取りが重いので設備投資も0.6%増にとどまり、成長を牽引する力はなかった。

名目GDPは前期比1.0%増と前期を下回った。個人消費支出は1.2%伸びたけれども、サービスの0.8%が足を引っ張った。個人消費支出の次に寄与したのは在庫である。純輸出はマイナス幅が拡大し、政府支出も弱い。

名目の前年比伸び率は3.5%と2015年4-6月期以来6四半期ぶりの高い伸びとなった。実質では前年比1.9%であり、2四半期連続で伸び率は大きくなった。個人消費支出を左右する可処分所得(名目)が前年比3.8%伸びているので、概ね、名目GDPもその程度の伸びとなるのである。可処分所得の長期トレンドは右肩下がりであり、米国経済も長期的に下降傾向を示している。

2016年の実質GDPは前年比1.6%と前年よりも1ポイントも低下し、2011年以来5年ぶりの低い伸びとなった。金融危機後の2008年、2009年と2年連続マイナスとなったが、その後も回復力に乏しく、最も高かったのが2015年の2.6%であった。2016年までの6年間の平均成長率は2.0%である。米国経済の今の実力はこの程度だと考えておくべきだろう。

経済成長の鍵を握っているのが可処分所得だが、2008年の金融危機後、可処分所得は明らかに下方屈折している。2009年の可処分所得は前年比-0.5%と1938年以来71年ぶりのマイナスとなり、その4年後の2013年にも前年を下回った。2016年までの6年間の年率では3.8%にとどまり、2000年から2010年までの10年間の年率4.0%、1990年から2000年までの10年間の年率5.6%に比較すると伸び率低下はあきらかである。 

可処分所得の伸びが低ければ個人消費支出の伸びもそれに準じ、さらにGDPの伸びもそれに制約される。GDPの伸びが低くなれば可処分所得の伸びもそれ相当に低下する。このように、可処分所得がGDPを決定するといってもよい。

それではなぜ米可処分所得の伸びは低下したのだろうか。1980年以降の可処分所得と税引き後利益といった分配がどのように変化したかを調べてみよう。2016年の税引き後利益はまだ公表されていないので、1980年から2015年までの35年間の伸びをみると、可処分所得の6.95倍に対して税引き後利益は8.09倍であった。

1980年から2000年までの20年間では可処分所得は3.28倍と税引き後利益の1.82倍を大きく上回っていた。だが、2000年から2015年の15年間では税引き後利益(3.66倍)が可処分所得(2.47倍)の伸びをはるかに上回っている。

2015年の税引き後利益・可処分所得比率は11.7%と2014年よりも1.6ポイント低下したが、2014年までの3年間は13%台で推移し、利益の分け前が過去最高水準(2006年の13.7%)であったことを考慮すれば、依然利益の割合が高いといえる。1980年から2003年まで税引き後利益・可処分所得比率は10.0%を超えたことはなかった。が、2004年に10.4%とはじめて10%を超えてから、2008年に一度だけ10%を下回った他は、すべて10%を超えている。

こうした企業優位の分配と可処分所得の低い伸びが続く限り、力強い米国経済の復活はあり得ない。トランプ大統領の政策が分配にメスを入れることはないだろう。むしろ、企業利益の拡大を図り、さらに分配を歪めるのではないだろうか。そうであれば税引き後利益・可処分所得比率は高止まりし、個人消費支出は低い伸びにならざるを得ない。個人消費支出の低迷は、企業収益を圧迫し、米国経済は実質2%成長も危ういことになるだろう。

日米共に経済政策は間違っている。法人税の引き下げでは経済は悪化するだけだ。なすべきことは法人税を引き上げ、所得税の累進性を高め、為替や株式に取引税を導入することである。家計への分配をより多くしなければ経済は好転しない。

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