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一事が万事のらりくらりの政府と企業

米国の物価は約40年ぶりの高い伸びとなり、インフレが心配されているが、日本の物価は落ち着いている。1月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.5%、前月比0.3ポイント低下した。生鮮食品を除くは0.2%、さらに生鮮食品とエネルギーを除くコアも-1.1%へといずれも前月から低下している。特に、コア指数は昨年4月から10カ月連続のマイナスとなり、マイナス幅は2011年3月以来約11年ぶりである。エネルギー(ウエイト10000分の712)がCPIを1.23%引き上げたが、情報通信関連(ウエイト500)が1.47%引き下げたことが低下に寄与した。

15日発表の『四半期別GDP速報』によれば、昨年第4四半期のGDPデフレーターは前期比-0.8%と3期連続のマイナスとなり、前年比でも-1.3%と4期連続で下落し、日本経済はデフレ下にあると言える。民間最終消費支出デフレーターは2020年第4四半期以降5期連続の前年割れとなり、消費不振による物価下げ圧力が掛かっているようだ。

昨年第4四半期の名目GDPは前年比-0.6%と2期連続のマイナスだが、実質的には、消費税率が引き上げられた2019年第4四半期以降、前年割れは続いており、日本経済は下降経路を辿っているようだ。デフレーターのマイナスは、このような2年以上におよぶ総需要の低迷に起因しているのである。これまでの四半期名目GDPの最高は2019年第2四半期の562.5兆円(季節調整値)だが、昨年第4四半期は541.8兆円であり、2020年第1四半期(553.8兆円)をも下回っている。

2021年の名目GDPは542.2兆円と前年を0.8%上回ったが、2019年を16.2兆円下回っている。特に、家計最終消費支出(持家の帰属家賃を除く)は前年よりも0.9%増加したが、2019年、2020年が0.2%、6.6%それぞれ減少していたからである。だが、戻りは弱く、その水準は2012年並みである。

家計最終消費支出のGDP構成比は43.2%と前年と同じであったが、2013年の47.0%から3.8ポイントも低下している。民間最終消費支出の構成比も2013年の58.1%から2021年は53.9%へと4.2ポイントの大幅な低下だ。一方、同期間の公的需要の構成比は25.0%から27.0%に上昇、2018年以降は4年連続で上昇している。

過去4年間、日本経済を支えているのは紛れもなく公的需要なのである。2011年から2021年までの過去10年間、名目GDPは44.8兆円増加したが、そのうち民間最終消費支出は7.6兆円にすぎず、民間企業設備12.7兆円よりも少ない。増加額で最大の部門は23兆円の公的需要であり、増加額の51.3%を占めている。

人口減と少子高齢化が新型コロナ禍で加速化している現状に鑑みれば、これからの民間最終消費支出も減少傾向を辿るだろう。政治は新型コロナ一色で右往左往しているが、人口減と同じように消費もあきらかに長期低迷に陥っているのだ。このまま消費をほったらかしにしておけば、消費のこの萎縮した状態は続き、公的需要への依存度がさらに高くならざるを得ない。

貯蓄が投資よりも多い超過貯蓄だからGDPが減少するのだが、GDPの減少を食い止めることができるのは公的部門だけである。最終消費が期待できない見通しでは、民間設備投資意欲が強まることはない。輸出を推進したいところだが、世界を魅了するような商品・製品を作り出せるか、と問えば相変わらずローテーション人事でプロが育たない環境では、疑問符を付けざるを得ない。つまるところ、日本経済は公的部門に頼るほか生きる術はないのである。

今の日本経済の仕組みのままでは、最終消費に活を入れることはできないのだ。人口減と少子高齢化によって、医療・介護、年金などが増え続け、はたして先行きどうなるのか若い世代の不安は募るばかり。今の政府の方法ではいずれ行き詰まり、十分な社会保障を受けることができないのではないか、だから少ない給与の中からでもこつこつ貯蓄しているのだと思う。

総務省の『家計調査』によれば、2021年の勤労者世帯(二人以上の世帯)の貯蓄額(月平均)は18.3万円、前年比5.0%減少した。ただ、2019年に比べれば20.0%増であり、依然、家計は消費よりも貯蓄を選好する行動を取っている。

2020年10月の『国勢調査』によると、日本の総世帯数は5、570万世帯、うち二人以上の世帯は3,455万世帯である(一人世帯は2,115万世帯、総世帯の38.0%)。『家計調査』では二人以上の世帯の53.5%を勤労者世帯とみなしており、この比率から勤労者世帯を求めると1,848万世帯となる。この世帯数と貯蓄額から勤労者世帯の年貯蓄額を計算すると約40兆円となる(2020年は約43兆円)。

2020年度の財務省の『一般会計歳出歳入決算』によると、公債金の収納済歳入額は108.5兆円、総歳入額184.5兆円の58.8%を占めている。これだけ巨額の国債の増発を可能にしたのは、勤労者世帯などが給付金の多くを消費に使わずに金融機関に預金したからだ。

貯蓄が積もり積もって、(日銀の『資金循環』よれば)家計の金融資産は昨年9月末、約2,000兆円、世帯数で割れば一世帯約3,600万円になる。すべての世帯がこれだけの金融資産を保有していれば、金銭面では先行きそれほど心配することはないのだが、資産格差は極めて大きく、3,600万円も保有している世帯は一握りでしかない。

総務省の『家計調査、貯蓄・負債編』の「世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高」(二人以上の世帯、2020年)によると、世帯主が40歳未満では貯蓄額は708万円だが、40~49歳1,081万円、50~59歳1,703万円、60~69歳2,384万円、70歳以上2,259万円と60~69歳の貯蓄額が最大だ。世帯数分布で70歳以上の世帯主の総貯蓄を求めると、総貯蓄の40%を保有しており、60~69歳では28.5%を占め、60歳以上の貯蓄額は総貯蓄の7割弱に達している。他方、40歳未満では総貯蓄の4.5%しか保有していないという極めて偏った貯蓄の全体像が見えてくる。

乱暴だが、『資金循環』の2,000兆円に60歳以上の保有比率を当てはめると1,370兆円を60歳以上の世帯主が保有していることになる。過大な数値だとしても、恐らく高齢者層が金融資産の半分以上を保有しているのではないだろうか。

高齢者保有の巨額の金融資産の一部は投資信託や変額保険などの変動資産に投じられている。証券会社、資産運用会社、銀行、生命保険会社などがそうした金融商品の販売で甘い汁を吸っているのだ。少なくても、こうしたいかがわしい商品の売買には高い税率を課すべきである。

日本経済が閉塞状態から抜け出すには税制を根底から見直し、改革していかなければならない。高所得・高貯蓄層にはそれなりの税を納めてもらい、低所得・低貯蓄層に分配する以外に消費を喚起する方法はないのではないか。

どうでもよいことばかり議論し、肝心な問題はほったらかしにする。人口問題など尻に火が付いていても未だに真剣に取り組もうとしない。一事が万事のらりくらりと、やっているそぶりをみせるだけで、ことの核心部分には踏み込まない。非正規労働や男女の賃金格差、労働時間、休暇等法律で定めればできることをやろうとしない。

人口減と少子高齢化の加速が日本を弱体化させているが、これを食い止めるには働きやすく、子育てしやすい労働環境の整備など待ったなしだが、政治に切迫感はない。政治も企業もそうだが、在職中、波乱なく現状維持で終わることに執着し、それを良しとする風潮が、日本経済衰退の元凶ではないだろうか。

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