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一筋縄では行かない円ドル相場

4-6月期のGDPが上方修正され、消費税率が引き上げられようとしているが、名目GDPは前年比0.7%しか伸びていない。消費税率の引き上げが決まっていないといえ、伸び率は弱く、千鳥足の状態である。引上げが決まれば来年1-3月期まで経済は伸びるけれども、その後は大きく落ち込むだろう。

内閣府によると、8月の消費者態度指数(消費動向調査)は43.0と3ヵ月連続の低下だし、景気の現状判断指数(景気ウォッチャー調査)は51.2と3月をピークに5ヵ月連続で低下した。『法人企業景気予測調査』によれば、7-9月期の貴社の景況判断BSI(大企業製造業)は15.2%と前期よりも10.2ポイントも上昇したが、10-12月期、2014年1-3月期と連続して低下する見通しである。7月の機械受注(船舶・電力を除く)も前月比微減となり、2ヵ月連続の減少である。このように直近の指標からは、日本経済の雲行きは怪しくなっており、4-6月期のGDPが上方修正されたことに浮かれていては、景気判断を誤ることになる。

 9月15日はリーマン・ブラザーズが経営破綻し、金融危機が世界中に伝染した日である。リーマン破綻から5年経過したが、世界経済は一向に優れない。金融危機以前と比べてよくなっているのは株式や国債相場といった金融商品であり、実体経済の回復力は弱い。

2013年4-6月期の日本の名目GDPは5年前の2008年4-6月期を5.1%下回っている。物価が下落しているため実質では0.8%増だ。景気が良かったと言われる2008年4-6月期までの5年間でも名目1.2%の微増である。

今年4-6月期までの5年間、金融危機の震源地である米国は実質で4.8%、名目では12.5%と日本とは段違いの拡大である。ただ、2008年4-6月期までの5年間の伸び(実質13.8%、名目30.3%)と比較すると、米国経済も以前の調子にはほど遠いといえる。足元の状況も不安を抱える内容である。8月の小売売上高は前月比0.2%の伸びにとどまり、9月のミシガン大学消費者センチメント指数は76.8と前月比5.3ポイント低下した。

ゼロ金利政策の長期化により、7月の米住宅着工件数は前年比20.9%増加しており、住宅価格(S&P/Case・Shiller)も6月、前年比12.1%増と持ち直している。これほどの高い伸びは金融危機以前の06年3月以来であり、金融緩和の行き過ぎが再び住宅バブルを生み出しているのではともとれる。

こうした住宅市場の回復はイギリスでも見られ、消費者物価指数は安定しているが、住宅価格は上昇しつつある。7月の英消費者物価は前年比2.8%と落ち着いているが、住宅価格指数(Halifax)は前年比6.2%と5ヵ月連続で伸び率は高くなり、消費者物価上昇率を超えている。

ユーロ圏の住宅価格指数(eurostat)は四半期ベースだが、それによると、最新の今年1-3月期は前期比-1.0%と5四半期連続で低下し、バブル崩壊後の最低を更新した。なかでも住宅バブルの著しかったスペイン、アイルランドは前期比5.1%、2.6%それぞれ落ち込んでいる。

ユーロ圏の政策金利は1%まで下げたけれども、国債利回りは自由に決まるため、ドイツの1.98%からギリシャ10.38%まで約8%の格差がある。スペインは4.5%とギリシャに比べれば低いが、マイナスの経済成長では4.5%は高く、住宅取得に踏み切れない。本来、低金利により経済の悪化を食い止めなければならない国の金利が、財政赤字等の問題により、異常に高く、ユーロ圏の金融政策は効果を発揮できていない。

今週の17日、18日、FOMCが開催される。これまでの金融緩和が小幅縮小されるだろう。FRBが国債購入等で金融機関に資金供給しても、日本と同様、金融機関から市中に金は流れていかない。金融緩和を続けても意味がないということだ。

8月の米商業銀行の貸出等は前年比2.4%と4ヵ月連続で低下した。昨年6月のピーク(5.5%)からは半分以下である。商工業貸出の伸び率低下に加えて、不動産向けが1年半ぶりにマイナスに転じた。S&P/Case・Shillerによれば、6月まで住宅価格は上昇しているが、8月の不動産貸出は前年比0.2%減少した。4月を底に米国債利回りが急上昇しており、それに伴いモーゲージ金利(30年固定)も大幅に上昇、現在年4.57%と4月から約1%高くなっている。こうした金利の上昇が不動産貸出に影響していることは間違いない。

今後、FRBの金融緩和縮小により、金利高が進行し、さらに貸出は伸び悩むだろう。他方、預金は8月、前年比7.3%増と貸出の伸びを大幅に上回っている。預金の9.51兆ドルに対して貸出は7.3兆ドルと開きはますます拡大、預金・貸出比率は130%と1983年7月以来の高率である。2008年には100%近くまで低下していたが、まさに様変わりである。貸出・総資産比率は53.3%と最低となる。貸出の低迷により、米商業銀行の現金残高は8月、2.37兆ドルと過去最高を更新、現金・総資産比率も17.4%に上昇した。米商業銀行の指標は異常尽くめといえる。

こうした異常な金融機関を放置したまま金融緩和を縮小すれば、金は回らなくなり、米国経済は荒ぶことになるだろう。金融緩和縮小を国債利回りはかなり織り込んでいるとはいえ、FRBの金融政策変更の第一歩であり、これから縮小は止まることなく遂行されることになる。4-6月期の米名目GDPは前年比3.1%伸びており、長期金利もこの程度までは容認するだろう。

円ドル相場も100円を一時的には超えるけれども、そこからはなかなか進まない。米金融緩和縮小だけを取り上げれば円安ドル高だが、一筋縄ではいかない。緩和縮小で米株式・金融市場がどうなるか、実体経済にどのような影響がでるか、そのような複雑な課題が山積しており、ドル買いに傾けることのリスクも大きい。そのような影響を勘案しながら、為替相場は動いていくだろう。

ただ、米国経済は実体経済もマネー経済も依然ノーマルな状態ではない。株式は高値圏にあり、個人消費は弱い。相反しているが、折り合っているのはFRBが異常な金融緩和策を採っているからである。これが正常化する方向を示すことになれば、株式は実体経済に鞘寄せせざるを得なくなる。そうなれば円高ドル安にまた戻ることになる。当然、日本株も売られる。

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