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世界最大の経済と感染の米国

2020年4-6月期の米国とユーロ圏のGDPが公表された。いずれも統計を取り始めてから最大の減少となった。新型コロナがこれほどまでに経済に深刻な影響を及ぼすとは、当初、ほとんどの人は思っていなかった。ウイルスを侮っていたのである。

現在、人間がこの世に実在していることにウイルスの存在は欠かせないが、今回のように、われわれの命までを奪う働きをしてしまう。しかも皮肉なことに、世界経済の中心をなす米国でウイルスが蔓延しているのである。ウイルスにとって米国は住み心地がよろしいということなのだろうか。米国が最大の感染国になったことの原因のひとつに、所得・資産格差の拡大を挙げたい。歪な米国経済への鉄槌ともいえるのではないだろうか。

米国の名目GDPは前期比10.0%落ち込んだ。4-6月期、新型コロナ対策として、米政府支出(名目、年率)は9.0兆ドル、前期比4.1兆ドルも増加した。4.1兆ドルの内訳は個人への給付2.3兆ドルや補助金1.0兆ドルなどである。その結果、可処分所得は18.2兆ドル、前期比1.54兆ドルも増えたが、個人支出は前期比1.57兆ドル減少、貯蓄は4.69兆ドル、前期比3.1兆ドルも急増し、貯蓄率は25.7%に跳ね上がった。外出規制の影響はもとより、米国民も先行きへの不安が募り、消費よりも貯蓄を優先させたのだ。

名目GDP(年率)は19.4兆ドル、前期比2.16兆ドル減少したが、減少分のうち個人消費支出が約7割の1.53兆ドルを占めている。ものは0.2兆ドル減にとどまり、大半はヘルスケア、娯楽、輸送などのサービスが1.33兆ドルも前期を下回った。GDP減少分の26.9%は固定資本であり、前期比0.58兆ドル減少した。

急激なGDPの収縮によって、GDP物価指数は前期比1.8%低下し、前年比では0.6%へと鈍化した。コアも前年比0.8%と前期よりも1.0ポイントも低下した。

月次で米個人消費支出をみると、4月に前月比-12.9%の大幅減となったが、5月、6月は前月比8.5%、5.6%と2カ月連続のプラスである。だが、水準は今年3月にも満たず、前年比では4.8%減である。可処分所得は個人給付などで4月が前月比14.7%も急増したため、4月、5月は5.1%、1.4%それぞれ前月を下回った。可処分所得の減少と個人消費支出の回復によって、貯蓄も4月の6.35兆ドルから6月には3.37兆ドルへ減少しているが、なお貯蓄率は6月、19.0%と高い。

新型コロナが収束の気配を少しもみせていないことから、7月以降、米国の経済活動は横ばいから少し下がり気味で推移している。長期的にも米国経済は底這いからなかなか抜け出すことが難しく、ゼロ金利政策も長引くだろう。米10年債利回りは先週末、0.53%と過去最低を更新した。1930年代の米大恐慌期をはるかに下回る低い利回りなのである。FRBも「米国経済を支援するためにあらゆる手段を行使」(7月29日、FOMC声明)すると述べたことも債券相場を押し上げた。

長期間続くゼロ金利政策が債券利回りを低下させ、それがドル安要因になってきている。円高ドル安はFFレートに沿って進行する傾向がみられたが、今年3月の2回の利下げで1.5%からゼロへと大幅に引き下げたにもかかわらず、円ドル相場は比較的落ち着いた動きを示していた。だが、ここにきて、米国不況の長期化が現実的になってきたことから、円高ドル安に向かい始めてきた。

まだ、米株式が底堅いため、円高ドル安は急速には進んでいないけれども、米株式が本格的に値を崩すことになれば、円高ドル安に弾みがつくことになるだろう。円高ドル安の急激な進行は日本の輸出企業の業績を悪化させ、日本株は米株以上の下げとなるだろう。

日本の4-6月期GDPの発表は8月17日だ。欧米よりも2週間以上遅い。おそらく、米国よりも悪く、ユーロ圏並みの落ち込みになるのではないだろうか。ユーロ圏の実質GDPは前期比-12.1%、前年比-15.0%であった。ドイツは前期比-10.1%だったが、スペイン-18.5%、フランス-13.8%、イタリア-12.4%とラテン系はいずれもドイツよりも悪い。新型コロナの感染の度合いがGDP統計に現れている。

新型コロナの感染は欧米よりはるかに軽微な日本だが、こと経済に限れば、ダメージは大きく、GDPは大幅なマイナスになるはずだ。2000年以降の日米の実質GDP(前年比伸び率)を比較すると、ほぼ米国が日本を上回っていることがわかる。2008年のときも、震源地の米国は最大マイナス3.9%だったが、日本はマイナス8.8%も落ち込んだ。マイナス期間も米国の4四半期に対して日本は7四半期も前年割れが続いた。

過去のこうしたケースに当てはめるならば、4-6月期の日本の実質GDPは前期比10%以上のマイナスになるだろう。もともと弱い最終消費支出の一段の不振に期待収益率の低下による民間設備投資マインドの冷え込みが加わることになり、GDPは大きく下振れすることになる。

4-6月期の鉱工業生産指数は前期比-16.7%、前年比-19.6%と大幅マイナスであった。5月の全産業活動指数は前年比-17.4%と急激に低下しており、第2四半期は前期比でも10%を超えるマイナスになることは間違いない。雇用環境も厳しい状態が続いており、消費者は家計の防衛を最優先しているようである。

国会を開かず、のらりくらりした政府のコロナ対応では経済の迷走はとまらないだろう。強権的な政策では指導力を発揮するが、今回のウイルスに対してはお手上げ状態である。日本の基礎力のなさが、新事態に直面したときにもろに出る。その場限りの政策や教育の付けが回ってきていると言える。

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