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世界経済の減速と日本の輸出

週末比、米株が横ばいであったため、円ドル相場も動かず、日本株も僅かな上昇にとどまった。週初、IMFが2019年の世界経済成長率見通しを下方修正したことが、株式関係者に心理的圧迫感を与えた。今年の世界経済は3.5%と昨年10月の予測から0.2ポイント下方修正された。昨年の3.7%(予測)から減速する。米国の見通しは2.5%と変わらず、日本は1.1%と0.2ポイント上方修正されたが、ユーロが0.3ポイント減の1.6%に引き下げられたことが、世界経済見通しの修正に大きく影響した。さらに新興国も4.5%と0.2ポイント下方修正された。だが、米中の貿易戦争が激しくなれば、この見通しもさらに下方修正されることになるだろう。トランプ大統領が政権についている限り、何が起こるかわからない。米国の政治がかつてない経済の不確実性を高めている。

トランプ大統領が仕掛けた保護貿易政策は、ユーロ経済を中心に世界経済の足取りを重くしている。ユーロ経済の中心をなすドイツが0.6ポイントも下方修正され、2019年の経済成長率は1.3%と予測された。昨年の1.8%(予測)からも0.5ポイントの低下だが、ドイツ政府の見通しでは今年の経済成長率は1.0%とIMFよりも厳しく見ている。貿易戦争を引き起こした米国は減税効果が薄れ、減速するけれども2.5%と先進国のなかでは底堅い。

IMFは日本を上方修正したが、1.1%と先進国ではイタリア(0.6%)の次に低い。日本の経済成長率は消費税率の引き上げがどうなるかによってだいぶ変わることになる。昨年の経済成長率は0.9%(予測)なので、これを少し上回る程度の予想だ。

1月のユーロPMI(総合)は50.7、前月から0.4ポイント低下し、5年半ぶりの低い水準に落ち込んだ。ドイツは52.1と前月比0.5上昇したが、フランスは47.9と昨年12月から経済の収縮状況に陥っている。

足元の日本の状況は、全産業活動指数によれば、昨年10月と11月の平均は前年比1.9%と7-9月期の0.1%から回復している。災害等の影響で10月が高くなったことを考慮すれば、7-9月期と10-11月期の伸びは共に0.8%程度であり、大きく変化していない。ただ、全産業活動指数のピークは2017年第4四半期(前年比1.8%)であり、これ以降の伸びは鈍化している。1月の日本のPMI(製造業)は昨年12月の52.6から50.0へと景気の良いか悪いかの分かれ目まで低下した。

昨年12月の日本の貿易統計によれば、輸出は前年比3.8%減少した。数量では-5.8%と2ヵ月連続の前年割れである。四半期別では昨年第2四半期の7.5%をピークに、第3四半期2.9%、第4四半期1.3%と伸び率は大幅に鈍化している。確かに世界経済が減速していることを貿易統計は示している。

昨年12月の輸出は前年比マイナスになったが、特に、対中輸出が前年比7.0%減少したことが響いた。昨年8月まで対中輸出は6ヵ月連続の2桁増と好調であったが、自然災害により9月は前年割れとなった。10月は9.0%伸びたが、11月は0.4%にとどまり、12月は7.0%ものマイナスだ。

昨年12月の季節調整値の輸出は3月以来、9ヵ月ぶりの低い水準であり、10月から4.7%の減少である。原油価格の急落によって、12月の輸入は10月比6.1%減少した。

中国経済が悪くなれば、中国との繋がりが深いその周辺国の経済も悪くなる。対香港、韓国、台湾輸出もすべて振るわない。中国を核とした生産のネットワークが構築されているため、中国の減産は周辺国の生産にも悪影響を及ぼし、日本からの当該国への輸出は減少する。

昨年12月の日本のアジア輸出は6.9%減少したが、アジア輸出は総輸出の54.5%を占めるため、アジアだけで総輸出を3.8%引き下げたことになる。アジア輸出で悪化したのは一般機械や電気機械だが、特に、半導体製造装置、半導体や通信機などの不振が目立つ。

昨年11月までは原油や液化天然ガスなどの鉱物性燃料の輸入が市況高により、前年よりも3割以上にふくらんでいたが、昨年10月をピークに原油価格が急落したため、12月の鉱物性燃料の輸入は8.7%と一桁の伸びとなった。そのため、11月の貿易赤字額は7,377億円だったが、12月は552億円に縮小した。

原油安は日本の貿易収支を改善する。昨年は原油高により輸入額は前年比9.7%増大した。鉱物性燃料は21.7%も増加し、これだけで輸入を4.6%押し上げた。輸出額は4.1%にとどまったため、2018年は1.2兆円の貿易赤字となった。

貿易赤字になれば円よりもドルをより多く手当てしなければならないため、円安ドル高になりやすい。他方、原油安により、貿易収支が黒字になれば、ドルを売り、円を買う動きが強まり、円高ドル安に進みやすくなる。原油価格の動向は円ドル相場を見るうえで欠かせない要因のひとつなのである。

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