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世界経済の減速を示唆する日本の輸出

円ドル相場は今月3日、114円台半ばまでの円安に振れていたが、米株の動揺などによって、112円台まで戻している。円高ドル安に伴い日本株も3週連続安だ。米国経済に金利上昇の影響が少しずつ現れている。9月の米小売売上高は2ヵ月連続の前月比0.1%と弱く、前年比では3.1%へと前月から大幅に鈍化した。しかも3.1%のうち0.9%は値上がりしているガソリンが寄与している。9月の米鉱工業生産は前年比5.1%伸びたが、その半分強はエネルギー関連の寄与であり、生産に偏りがあり、全体的に生産が強いとはいえない。
米国経済のやや減速を示す指標などから、米10年債利回りも10月5日付けた3.22%を上回るような状況ではない。トランプ大統領の自国第1主義の経済政策も綻びを見せており、経済成長率もピークアウトしたのかもしれない。そうであれば、債券利回りも今の水準から大幅に上がることはないだろう。流動性を手放し債券買いの動きが強まることも考えられる。日米の長期金利差もさらに開かないと見通すことができるようになれば、円高ドル安が加速するだろう。
ドイツ経済も減速している。10月のZEW景況指数は9月まで2ヵ月連続で改善していたが、10月は-24.7と7月と同じ悪い水準に戻った。産業別では自動車の景況指数が-56.9に落ち込んでいる。8月の生産は前年比-0.8%と昨年1月以来19ヵ月ぶりのマイナスになったほか、資本財受注も6月以降3ヵ月連続の前年割れだ。難航しているイギリスのEU離脱交渉や米中貿易戦争が企業家心理を冷やしている。
日本の貿易にもトランプ大統領の保護貿易主義の影響があらわれてきている。台風の影響もあっただろうが、9月の日本の輸出は前年比-1.2%と2016年11月以来、1年10ヵ月ぶりのマイナスになった。9月の月平均円ドル相場は111.13円(昨年9月109.48円)と昨年よりも円安ドル高だったが、輸出は振るわなかった。対米輸出も6月、7月のマイナスの後、8月はプラスになったが、9月は0.2%だが、再び前年を下回り、対米輸出は低調になってきている。そのため対米黒字は3ヵ月連続の前年割れである。
対米輸出の3割弱を占める主力の乗用車は、数量では9月まで4ヵ月連続の前年割れだ。金額では9月、0.3%のプラスだったが、8月までは4ヵ月連続のマイナスであった。2018年度上期(4月~9月)の対米乗用車輸出は数量、金額ともに3.4%、3.7%それぞれマイナスとなり、自動車メーカーはいままでのような好業績は上げることは難しくなってきている。
『鉱工業生産』によれば、8月の輸送機械工業の生産は前年比0.1%と辛うじてプラスを維持している状態だ。4-6月期は3.2%と1-3月期の2.5%よりも伸びたけれども、7-9月期は前年比横ばい程度に低下するだろう。昨年4-6月期には7.1%も伸びていた輸送機工業の生産は減速が著しい。
7-9月期の対世界輸出は前年比3.0%とプラスだが、伸び率は2017年7-9月期の15.1%をピークに明らかに鈍化している。一方、原油価格の上昇により、7-9月期の輸入額は前年比12.3%と昨年10-12月期以来3四半期ぶりの二桁増となった。そのため、貿易収支は5,338億円の輸入超と2015年7-9月期以来の大幅赤字である。
日本の輸出の伸びがさらに鈍化し、前年水準を下回っていけば、GDP成長率を低下させ、企業収益も悪化するだろう。人口減と超高齢化によって内需は弱く、成長は外需頼みの脆い経済構造は変わっていない。
貯蓄と投資の恒等関係から貯蓄、投資、公的支出が変わらないとすれば、超過輸出のマイナスはGDPを縮小させることになる。超過輸出の減少を補うには投資や公的支出の拡大が必要である。
『法人企業統計』によれば4-6月期の全産業の設備投資は前年比12.8%と強く、短観の設備投資見通しでも昨年度の4.6%から今年度は9.2%へと拡大する計画である。
だが、足元の設備投資関連の指標はこのような予測に疑問を投げかけている。『鉱工業生産』によれば、資本財(輸送機械を除く)の生産の伸びは大幅に鈍化してきている。昨年12月には10.1%も伸びていたが、今年6月は1.8%減である。7月、8月はプラスで推移しているが、以前のような勢いを取り戻すことはできないだろう。
8月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前年比12.6%と2ヵ月連続の2桁増と好調である。ただ、7月は化学の急増、8月は半導体製造装置の拡大など一部偏った伸びによるものであり、機械受注がこのような高い伸びを持続することはないだろう。
景気に敏感な外需や代理店は8月、2.7%、2.3%それぞれ前年を下回った。特に、外需は昨年7-9月期、前年比32.6%も伸び、その後今年1-3月期までは二桁増だったが、4-6月期以降は一桁増に低下している。
外需に連動している「一般機械」の輸出は昨年11月の前年比22.9%をピークに今年9月には0.1%へと大幅に低下した。「一般機械」の米国、EU、アジアへの輸出は9月、前年比0.4%、-0.4%、1.4%といずれも弱く、好調であった世界経済も保護貿易の台頭によって、モノの流れが細ってきている。
純輸出がマイナスになり、民間設備投資も低迷することになれば、公的支出の拡大を余儀なくされる。ここ数年、98兆円前後で推移している一般会計予算の歳出は膨らんでいくだろう。公的支出の拡大によってのみ日本経済は現状を維持できる状態に陥りつつある。

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