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世界経済は減速だが、設備投資意欲強い日本企業

世界経済は減速しつつある。特に、減速が著しいのは欧州だ。12月のユーロ総合PMIは51.3、前月比1.4ポイント低下し、約4年ぶりの低水準である。ドイツは52.2だが、フランスは49.3と50.0を割り込み経済収縮の領域に入った。イギリスのEU離脱問題に米中の貿易戦争の余波を受け、欧州経済は試練にさらされている。11月の中国の小売売上高は前年比8.1%と2003年5月以来の低い伸びとなったと国家統計局は発表したが、実際はもっと悪いのだろう。12月の日本PMI(製造業)は前月比0.2ポイント増の52.4と今のところ横ばいを維持している。米国は製造業の伸びが鈍化しており、やはり、中国との貿易戦争の影響があらわれているのではないだろうか。

日欧に比べて米国経済が相対的に良いためドル高が続いている。昨年末比では円、ユーロ、ポンドのいずれの通貨にたいしてもドルは強く、12月7日のドル実効相場は昨年末よりも7.6%高い。トランプ大統領は輸出を伸ばし、輸入を抑え貿易赤字を縮小させたいのだが、ドルが強いのでは貿易赤字を減らすことはできない。

今週、FRBは利上げを実施するだろうが、利上げはドルを強くすることになり、トランプ大統領を怒らせることになる。為替に影響力が大きいのは、むしろ来年の利上げ見通しがどうなるのかである。それによっては、為替相場は動くかもしれないが、一時的な変動にとどまるだろう。

13日、ECBは量的緩和の終了を決定したが、ユーロ経済がこうもはかばかしくないので、利上げはいつになるか見通せず、量的緩和の再導入ということもあり得るのではないだろうか。米国経済とユーロ経済を比べてみれば、多くの市場参加者はユーロよりもドルが選好されると思っているように思う。来年、FRBが今までの予測のように3回利上げするのではなく、当面、利上げを見送る姿勢を示したとしても、そのことは相当相場に織り込まれており、ドルが大きく売られることにはならないだろう。

世界経済の減速が明らかになるにつれて、主要国の株式は下落している。今のところ昨年末を上回っているのはナスダック総合くらいだ。下落したとはいえ、S&P500でピークから11.3%である。商品相場も昨年末より低く、急落している原油相場も反発する力はない。資源の輸入大国である中国経済が悪化していることを商品相場の下落は裏付けている。米国の高関税措置が中国経済にじわじわと効いてきているのかもしれない。

日本でも中国向け工作機械受注は前年を大幅に割り込んでおり、11月の工作機械の外需は前年比28.9%減と前月の-2.4%から急速に悪化した。中国に加えて、欧州や米国からの受注も落ち込んだのかもしれない。世界経済の先行きが不透明なっていることが、経営者の設備投資マインドを冷やしているのだ。

10月の『機械受注統計』によれば、民需(船舶・電力を除く)は前年比4.5%増加し、外需も3ヵ月ぶりのプラスとなった。ただ、半導体製造装置を含む「電子計算機等」の前年比伸び率は昨年10-12月期をピークに低下しており、9月と10月は2ヵ月連続の前年割れだ。また、産業用ロボットの前年比伸び率は昨年4-6月期をピークに低下していたが、今年5月以降は6ヵ月連続のマイナスである。

ロボットの代表的企業であるファナックの地域別受注高をみると、中国からの受注高は昨年10-12月期をピークに減少しており、7-9月期は前期比-45.9%、ピーク比-61.7%と激減している。総受注高も昨年10-12月期をピークに3四半期連続の前期割れであり、7-9月期はピーク比25.1%減少している。米国との貿易戦争が激しさを増すにつれ、中国の企業家の期待収益率は低下しており、設備投資に神経質になっていることを窺うことができる。

12月調査の『短観』によれば、大企業製造業の業況判断(「良い」-「悪い」)は19と9月と同じであった。ただ、業況のピークは昨年12月(26)であり、9月まで3四半期連続で低下していた。先行きは15と4ポイント悪化する見通しである。

今回の調査では大企業製造業の業況が前期から悪化したのは16業種中6業種だった。設備投資に関係深い「はん用機械」と「生産用機械」の業況も悪化したが、47と40と依然高く、大企業の業種別業況では最高と三番目である。ただ、先行きの「はん用機械」の業況判断は大企業-11、中堅企業-14、中小企業-23とかなり悪化するようだ。大企業はすでに下請けには生産縮小の計画を伝えているのだろう。

設備投資関連の業種の業況は悪化する見通しだが、大企業製造業を始めとする設備投資計画(ソフトウェア・研究開発含む土地除く)は前回調査とほとんど変わらず強気である。大企業製造業は今年度、前年比8.9%と昨年度3.8%を上回り、非製造業は昨年度の5.7%から今年度12.1%へと拡大する。全規模全産業でも昨年度の4.6%から今年度は9.6%に伸びる計画である。

設備投資判断の決め手となる大企業製造業の経常利益は今年度上期の前年比4.8%から下期は-5.3%と減益に、大非製造業も上期の0.3%から下期は-4.1%への悪化を見込む。下期は減益を予想しながら、設備投資の拡大を図る。世界経済の減速による減益は一時的であり、利益の回復は早いと想定しているのだろうか。

だが、トランプ大統領の言動、イギリスのEU離脱の行方や米中関係など不確実要素が多く、期待収益率の上昇は期待できない。設備投資に積極的に取り組むまでにはかなりの時間を要するだろう。経済減速がさらに進行し、景気後退に入るのか、あるいは経済減速から回復に向かうのか、しばらく経済動向に目を凝らす必要がある。

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