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中央銀行の時代錯誤の金融政策

ECBの利上げ先延ばしに続いてFRBも今年、利上げはしないという。よって、米10年債利回りは2.44%と前週比15ベイシスポイント低下し、2017年12月以来、1年3ヵ月ぶりの水準に低下した。ユーロドル3ヵ月物との金利差はさらに開いた。長短金利差が最大のところが概ね景気のピークに当たることから、景気動向への関心が強まり、NYダウは大幅な下げとなった。FRBが利上げをしないことから、対ドルで円は2月8日以来の109円台に上昇した。3月の日本PMIは製造業が引き続き減退していることを示し、日本株は厳しい状況に陥っている。

3月に入ってからの外人の売り越し額はすでに1兆円を超えている。外人のうち最大のプレーヤーである欧州勢が円高ユーロ安により、売り姿勢を強めているからだ(今年1月と2月だけで欧州の売り越し額は9,264億円)。これに向かっているのは証券会社の自己である。外人の売り越しをそのまま引き受け、3月第2週までの2週間で約1兆円を買い越している。生産の低迷と円高という二重の収益圧迫要因が深刻さを増すならば、外人は売り姿勢を一層強めるだろう。

昨年第4四半期の米実質GDPは前年比3.1%伸びたが、今年第4四半期には1.9%~2.2%へと鈍化するとFRBは予測する(昨年12月の予測2.3%~2.5%から下方修正)。2018年の米実質GDPは2.9%と2016年の1.6%を底に2年連続で成長率は拡大し、リーマンショック以降では2015年と同じ高い伸びとなった。高い成長をもたらしたのは減税である。その減税による需要拡大も今年は薄まってしまう。減税に代わる需要刺激策はなく、成長率は低下していくことになろう。だが、このようなことは前々からわかっていたことであり、いまさら成長鈍化懸念に株式が反応するとは市場参加者の眼力は衰えてしまったのだろうか。

3月に今年の利上げを封じ込めてしまうFRBの姿勢は頂けない。金融経済の僕に成り下がってしまったことを象徴している。2018年の米名目GDPは5.2%と2006年以来12年ぶりの高い伸びであった。それでも10年債利回りは2.68%(2018年末)と経済成長率の半分ほどでしかなかった。これほど乖離が大きくなっているのは、FRBが政策金利を低水準に保っているからだ。

2006年から2007年のFFレートは4.25%~5.25%、10年債利回りは3.94%~5.14%(月末値)である。現状に比べればはるかに高い。だが、実体経済(2006年名目GDP成長率6.0%、2007年4.2%)との比較では高くはないのである。

昨年第3四半期の名目GDPが前年比5.5%まで上昇する過程で、FRBはFFレートを5%程度まで上げていなくてはいけなかった。これほどの伸びは2006年第3四半期以来12年ぶりだからだ。それを恐る恐る小刻みにしか上げられなかったことは大失敗であった。

巨額の金融資産が存在する経済では金融政策の実体経済への効果ははなはだ心もとなくなっており、政策金利は最低でも名目GDPの伸び率程度には維持していくべきだ。そうでなければ、マネーを原料とする金融経済を有利にし、金融経済が膨張し、最終的には破裂してしまうからだ。

ゼロ金利や超低金利の状態は金融経済にとっては好環境なのだ。実物経済に比べて金利が低く設定されていれば、金融経済の成長は実体経済を上回り、金融と実体は乖離していくことになる。ECB、FRB、BOJ、BOEの主要中央銀行は、こうした金融経済と実体経済の乖離を促す政策を遂行しているのだ。これだけ金融資産が積みあがっているにもかかわらず、相変わらず「成長と物価安定」を金科玉条としている。こうした時代錯誤の金融政策がバブルを作り出しているのである。

1930年代の米大恐慌や日本の1990年代の株式・不動産バブル崩壊など、経済の大変動の元凶は低金利による金融バブルとその崩壊であり、実体経済が経済を破壊するケースは少なくなってきている。マネーが暴れることこそ制御しなければならないのだ。それほど金融ストックは経済全般に激しい振幅をもたらすのである。金融ストックほど金利に敏感なものはなく、しかも瞬時にグローバルにマネーは移動する。儲かりそうだということだけのために、機敏にマネーを動かす。経済がどうのこうのといったことなど、投機家にとっては頭の片隅にもない。そうした投機を制御できるのは、マネーのコストを高くするしかないのだ。利上げし金利を高くすれば投機的動機を抑制することができる。金利を適切な水準に設定することにより、強欲な資本主義を少しはましにすることができるのである。

日本など1995年以降24年間も政策金利は1%以下である。これほど長期間金利がないような世界であっても実体経済は低迷したままである。ということは、金融政策では経済を引き上げることはできないということだ。よくゼロ金利や大規模の国債購入は市場にマネーを供給しているというが、どの市場にどれだけマネーは流れているのだろうか。すくなくとも家計には流れていない。企業にも流れている気配は感じられない。こうした経済主体に金が流れていないから経済がいつまでも低迷状態から抜け出せないのだ。日銀がいくら金融緩和政策を拡大しようが、家計や企業にマネーが流れることはない。せいぜい金融資産の構成が変化するくらいのものだ。

物価の安定とゼロ金利政策によって、投機家は願ってもない環境下にあると言える。首都圏を中心に値上がりが見込めそうな不動産に投機資金をつぎ込んでいる。また、富裕層は預金金利がほとんど付かないので一部のお金を株式・不動産等にまわしている。信用取引もやりやすい。投機家や富裕層にとっては我が世の春といったところか。いずれにしろ、ゼロ金利は金融資産をさほど保有していない一般庶民にとってはなにの恩恵もないのである。ゼロ金利政策は巨額の金融資産保有者とそうでない人との資産格差をますます大きくする政策といえる。

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