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付けだらけの日本

為替や株式はギリシャ支援の行方、スペイン国債の取り扱い、FRBの次の一手などの思惑に揺れている。すでにこれまでにFRB、ECBは何度も金融緩和を打ち出してきたが、米国経済は依然高い失業率と消費低迷から抜け出せず、ユーロ圏経済は景気後退に陥っている始末だ。不動産バブル崩壊といった資産暴落による経済悪化局面では、金融緩和だけで経済を本格的に浮上させることはできない。ましてやユーロ圏のように、一方では緊縮財政を行えば、金融政策をいくら進めても、需要は回復しない。不況下での政策が出たら目に実行されていることが、一番の問題なのである。欧州連合の官僚たちは、市場主義原理に染まったままであり、こうした官僚がユーロを動かし支配している状態ではユーロ圏経済の復活はあり得ない。緊縮財政の強要は、経済が疲弊するだけであり、最終的には財政が出動せざるを得なくなる。早目に手当てすることが、疲弊しきって手当てするよりも労力もコストも少なくて済むことになるのだが、EUの官僚は手間も費用も時間もより掛かる方法を選択している。

日本の不良債権処理が遅れに遅れたことが、いまの日本のかたちを作っている。いま問題になっている領土問題も戦後ずっと放置していたことの付けが回ってきたということだ。さらに原発という途方もない付けが回ってきており、日本は身動きが取れなくなっている。問題を問題としないで、先送りした政治家と官僚、そして彼らを取り巻くむら社会が付けを膨らましてきたが、責任を取ることも反省することもなく遣り過ごしている。

 原発の付けは超長期に及ぶ。使用済み燃料の処分場もないまま、原発を動かし続け、核燃料サイクルといった妄想に凝り固まっている。まさに原子力むらはオウムのようでもある。彼らは使用済み燃料をどうするのだろうか。猛毒の核廃物を何万年、何十万年も保管・管理することなどできないのだが。

 原発の従業員は約9割が電力会社以外の下請けの人である。危険な仕事は他人に任せ、しかも電力会社社員に比べ下請けの給与は安い。危険な仕事であれば給与は高いのが普通だが、原発では給与は安くて、仕事は危険極まりないのである。こんなことを何十年も続け、福島原発の事故後も改まっていない。

電力会社は原発従事の社員数を抑え、外部の人を使うことの不条理をなんとも思っていない。自らできないことを他人に押し付けてやらせる。このような矛盾だらけの原発事業はやってはいけないのだ。非正社員を犠牲にして原発を動かし、解体から使用済み燃料の保管までさらに人的犠牲が積み重ねられ、しかも永久に放射能から逃れられないのだ。おまけに廃炉、使用済み燃料の保管等巨額の金が掛かる。妄想に取り付かれた一派の暴走が、よいことなどひとつもない原発を動かしてきた。いまこそ妄想集団の暴走を止めなければ止めるときはない。

日本経済が縮小している状態で、こうした原発のコストを負担しなければならないことは、国民の生活を相当圧迫することになる。本来なら生活に密着したところに使われる金が原発処理に使われるからだ。廃炉を先延ばしにすればするほど、廃炉、使用済み燃料処理コストは膨らみ、日本経済を蝕んでいくだろう。

1990年代の金融機関の不良債権処理が杜撰で中途半端あったために、次から次に不良債権は湧き出し、大変な処理コストが掛かった。原発のコストは不動産や有価証券価格の下落による不良化とは、根本的に違う。不動産や有価証券は価値がゼロになることはないが、原発の価値はマイナス、しかも何十兆単位のマイナスになるからだ。価値がマイナスになるだけではなく、放射性物質を放出し続けるという代物だ。このような化け物と付き合いながら生活するのは遣りきれない。

 

原発のために超長期的に金を溝に捨てざるを得ない構造が、弱い日本経済に伸し掛かってくるため、日本は衰弱せざるを得ない。一方、短期に目を移しても、日本経済の消費は不振であり、外需も減少している。7月のスーパーは前年比4.9%、百貨店とコンビニは3.3%、それぞれ減少した。いずれもマイナス幅は拡大しており、消費にブレーキが掛かっている。企業収益を左右する輸出は7月、前年比8.1%減と2ヵ月連続のマイナスとなり、まだマイナスが持続しそうである。輸入は2.1%と2ヵ月ぶりのプラスになったが、自動車などの輸送用機器が70.1%も急増したからだ。最終需要の不調から生産の原材料になる素材等の輸入は弱い。

対米輸出の失速、対ユーロのマイナス幅拡大、対アジアの不振が輸出悪化の原因である。特に、対ユーロ輸出は前年比25.1%減と09年10月以来2年9ヵ月ぶりの大幅なマイナスとなった。対米も6月までの2桁増から4.7%(数量では0.9%)に鈍化した。こうした欧米の需要不振がアジア経済に波及しており、対アジア輸出も9.0%減少した。

8月にはいってもユーロ圏経済は低迷状態が続いており、対ユーロ圏への輸出の大幅な減少はまだ続くだろう。8月のユーロ圏PMI総合産出指数は46.6と前月比0.1ポイントの上昇にとどまり、ほとんど変化がなかった。なかでもドイツは前月から低下しており、4-6月期の実質GDPがプラスだったドイツ経済も7-9月期はマイナス成長に陥るかもしれない。

ユーロ圏の景気悪化は短期金利にもあらわれており、ユーロ3ヵ月物金利は24日、0.17714%と過去3ヵ月で0.427%も低下し、過去最低を更新中。いままで円金利がユーロ金利を下回っていたが、21日以降はユーロ金利よりも円金利が低い状態が続いている。それだけ足元のユーロ経済が悪く、資金需要が弱いのだろう。

 米中古住宅販売は7月、前月比2.3%増、新築住宅も3.6%増加し、住宅市場はやや回復しつつある。一方、これだけFRBは超低金利を続けているが、米設備投資は冷えてきている。7月の非軍事資本財受注(航空除く)は前月比-3.4%と2ヵ月連続減、前年比でも6.2%下回った。成長が上向かないなら行動する用意があるとFRBは表明したが、買いオペの増額では、すでに十分に下がっている長期金利を下げることは出来ない。下がったとしても、期待収益率はもっと下がっているので、買いオペの効果はまったくない。そのような子供染みた芝居をFRBはいつまで続けるのだろうか。 

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