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企業の製品・商品在庫積み上がる

対ドルで円は2002年5月以来約13年ぶりの安値を付けた。米雇用統計が予想を上回る好調を示し、数ヵ月後には利上げが行われる見通しが強まったからだ。これでほぼ米利上げは為替相場に織り込まれたと思う。米国の雇用は順調に改善しているが、経済全体をみれば緩やかな回復にとどまっており、雇用統計が示すほど良くない。4月の個人消費支出は前月比横ばい、前年比では2.8%に伸びは低下してきているほか、4月の非国防資本財受注(航空除く)も前年を下回るなど、実体経済は低空飛行している。

5月の実質ドル実効相場は前年比10%弱上昇しており、米企業の輸出はドル高の影響を受けつつある。米貿易統計によれば、4月の輸出は前年比2.6%減と4ヵ月連続のマイナスだ。ものに限れば4.8%も減少しており、製品の競争力は落ちてきていると言える。1-3月期の米実質GDPは前期比0.2%減少したが、寄与度をみると、純輸出は-0.5%と1985年4-6月期以来約30年ぶりの大幅マイナスとなっている。貿易が米国経済の足枷になりつつあることが、統計からも明らかだ。

雇用は改善するものの、ドル高が米国経済の足を引っ張ることになり、経済の足取りがドル高を阻止するように働くだろう。また、米国はいつまでもドル高を容認するほど寛容ではない。おもうように経済が動かなければ、執拗に為替相場に介入することはこれまでしばしば目にしてきたところである。

円安ドル高の梯子が外されることも想定しておくべきだ。円高ドル安に転じることになれば、日本株もそれで買われてきただけに、売りを浴びせられることになるだろう。日銀が国債購入額を増やしたところで、円高ドル安と株安は止まらず、政府と日銀はあたふたすることになる。実態の伴わない、政府・日銀演出の株高だけに、崩れるときは速いはずだ。

 日本株は急騰しているが、『法人企業統計』によれば、1-3月期の営業利益は前年比-0.1%の微減だが、2012年10-12月期以来9四半期ぶりに減益となった。前年同期が駆け込み需要により大幅増益となり、その影響があらわれたためだが、先行き収益が改善するような要因も見当たらない。

 売上高は微減となったが、人件費は0.8%とプラス。だが、2四半期連続で伸び率は低下した。従業員の賞与は6.9%増やしたが、給与は0.5%と依然低い。売上はマイナスだが、総資産は6.8%も増加し、総資産・売上高比率は4.3倍となり、過去最高水準である。資産のなかで伸びが高いのは現・預金で前年よりも11.7%増、金額では18兆円も増加している。棚卸資産も10.4%増加しているが、なかでも製品・商品が18.4%と急増しており、予想よりも売上が低調だったことを窺わせる。製品・商品在庫がこれほど積み上がるのは2007年7-9月期以来7年半ぶりである。1-3月期の売上高はマイナスだったが、意図しない製品・商品在庫増によって、向こう数四半期の売上高は前年を下回ることになるだろう。売上高が減少すれば、営業利益も減益は免れない。

 利益剰余金の拡大などにより、純資産は605.7兆円、前年よりも10.6%増加した。営業利益・純資産比率は2.6%にすぎず、金融危機以前の水準には戻っていない。第1次石油危機辺りをピークに純資産の運用利回りは長期低下に陥り、そこから抜け出したとはいえない。日本の企業は純資産を溜め込むことに熱心だけれども、その運用についてはまったく真剣さを欠いている。投資会社ではないのだから、事業会社が多額の現・預金や有価証券を保有する必要はない。経営者が厳しい視線に晒されておらず、よほどのへまをやらない限り、更迭されることがないから、リスクを伴う事業に挑戦するのではなく、安易な経営に向かってしまうのだろう。

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