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依然底が見えない米住宅市場

S&P500は5週連続安となり、米株式は下降しつつある。4月の米個人消費支出は前月比0.4%と2ヵ月連続して伸び率は低下した。可処分所得が0.3%の伸びにとどまり、消費を拡大できる所得環境ではないからだ。対ドルでユーロが上昇したため、商品市況は4週連続で上昇し底堅い。日米のゼロ金利政策が続く限り、投機資金は潤沢に供給され、高値にある商品市況は維持されるだろう。

 米債券利回りは3.07%と4月第1週をピークに7週連続で低下し、昨年12月第1週以来約6ヵ月ぶりの低い水準に低下した。米債券利回りの低下につれて、日独の債券利回りも低下傾向にあり、独は3%を下回った。

 

 

足元の米国経済は急減速するような状態ではないが、内部には住宅問題というマグマを抱えており、それが再び米国経済を揺す振りかねない。FHFAによると、3月の米住宅価格指数は前月比0.3%減と10ヵ月連続のマイナスとなり、03年12月以来の水準に下落した。FHFA米住宅価格指数は07年4月をピークに下落し続けており、依然、底がみえない。

 

過去7年半の間に住宅を購入した人の住宅価格は購入価格を下回っていることを物語っている。2010年の中古住宅販売戸数は490.7万戸であり、04年以降の累計販売戸数は約4,000万戸程度になる。この膨大な住宅の市場価格が購入価格以下であることは、米家計は大幅なダメージを受けており、底なし沼の価格下落により、所有すればするほど含み損は拡大する状況下にある。

4月の米中古住宅販売戸数(年率)は505万戸、価格は一戸163,700ドルであり、購入者は総額8,266億ドルを支払ったことになる。1年後に住宅価格が10%下落したとすると、住宅価値は826億ドルの減価となる。資産は目減りする半面、物価が安定しているため負債の住宅ローンはそのまま残ることになり、家計のバランスシートは痛む。米国経済が本格回復するには、住宅価格が底打ち上昇することが不可欠である。

表面上、米国経済は回復しているようにみえるが、水面下では住宅問題がぐずぐず煮立っているのだ。貿易赤字と財政赤字という2つの赤字に加えて、家計部門が深刻な不良資産を抱えているためドルは売られやすい状況にある。原発の収束が不確かであるにもかかわらず、円ドル相場は80円台へと円高に振れている。住宅価格下落の景気におよぼす影響が大きいため、FRBは容易に利上げに舵をとることはできず、数年単位でゼロ金利を継続せざるをえないだろう。投機家はそうした金融政策も踏まえたうえでドル売りを出しているように思う。FRBは一般物価水準よりもストックの価格に注視せざるをえないのである。住宅価格の下落に加えて、実体経済が悪化する兆候があらわれれば、円は過去最高値を更新するだろう。 

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