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債券バブルが弾ける時期は近い

日経平均株価は昨年11月第2週を底に上がり続け、3月第2週までに約3,800円も値上りした。先週、安倍首相のイエスマンである黒田氏が日銀総裁に就任したが、今回の上昇過程で株式は週間で最大の値下がりとなった。日本の実体を直視しない成長信奉者のこのコンビは日本を危険な経済状態に陥れようとしている。金融緩和、脱デフレを念仏のように唱えることで信者は増加し、内閣支持率は上昇している。一見、日本経済が良くなるかのような印象を与え、それが多数の国民の支持を獲得しているのだろう。

小泉政権のときの熱狂に近い政治情勢が再現されている。熱狂しているときは欠点も欠点にならず、すべてが良くみえるものである。福島原発は今も深刻な状況にある。だが、安倍政権は原発の再稼動や原発を推進する。それさえも容認してしまうことになる。憲法改正しかり。熱狂の最中に憲法改正を含むすべてのことをやり遂げるつもりなのだろう。

小泉政権のときもそうだが、熱狂が醒めれば、アラが見えてくる。政治的にも経済的にも良い方向に進みはしなかった。米国追随の市場原理を振りかざしたが、米国・欧州の住宅バブルによる予想外の需要拡大が日本にも押し寄せただけである。住宅バブル破裂とともに、欧米経済が急速に収縮し、その大波に日本は飲み込まれてしまった。

小泉首相時代の市場原理から今の安倍首相は財政出動、金融緩和と市場原理とは掛け離れた政策を取り入れている。何の疑問もなく自民党は市場主義から市場介入へと舵を大きく切った。市場介入の効果が限界に打ち当たっているが、それでもなお必要に金融緩和を唱え、それが効果を発揮すると信じているのだ。

10年債利回りは週末、0.5%台に低下した。週末比較では03年6月第2週以来約10年ぶりの過去最低に近い超低水準だ。当時、債券利回りの低下とともに日経平均株価は7,000円台に急落している。債券利回りの低下は期待収益率や成長力の低下をあらわしているので、株式は売られることになる。債券買い株式売りなのである。

だが、今は債券買い株式買いであり、過去の動きとは異なる。どちらかが間違っているはずだ。黒田日銀総裁の「なんでもやる」が債券の買い手に自信を与え、投機を促している。が、ここまで利回りが低下すると、ゼロ以下にはさがらないので、低下余地はもはやない。後はバブル相場が弾けるだけだ。

実体経済にほとんど変化がないにもかかわらず、株式がこれほど急騰するのはバブル相場だからだ。1980年代後半にはウォーターフロントとかリニア新幹線などが真しやかに語られ、それらの関連銘柄が推奨され、外人も個人もそれらに飛びつき、株価は天井知らずの様相を呈した。安倍首相と黒田日銀総裁の話もまったく1980年代の突飛な話と同じであり、政府と日銀が一体になってバブル相場を演出するという前代未聞の事態を招来している。

 日銀は国債を買うことで国債相場を吊り上げ、リスク資産の購入で株式等の価格を適正価格以上に持ち上げ市場価格を歪めている。日銀が永久に国債を買い続け、バランスシートを膨らませることはできず、歪んだ価格はいずれ適正水準に修正されることになる。適正水準に戻る過程では巨額の損失が発生し、消費や設備投資に打撃を与えるだろう。

日銀の買いオペによる「貨幣数量の増加は、他の事情に変化のないかぎり、利子率を低下させるものと期待してよいけれども、もし公衆の流動性選好が貨幣数量よりもより多く増加しつつあるならば、そういうことにはならないであろうし、また利子率の低下は、他の事情に変化のないかぎり、投資の量を増加させるものと期待してよいけれども、資本の限界効率表が利子率よりもより急速に低下しつつある場合にはそういうことにはならない」(ケインズ、『一般理論』)。

国債利回りは1年前の1.045%から0.5%台へと低下してきたが、設備投資は一向に回復しない。人口減による需要の減少がより深刻になることから、資本の限界効率が著しく低下している。特に、生産年齢人口の最も減少するときに、消費税率を引き上げる暴挙にでることが、実体経済の崩壊を予想させるからだ。

2015年10月、消費税率が10%に引き上げられるが、その後の消費は散々たるものになるだろう。確実に需要が減少することが分かっているときに設備投資などするはずがない。設備投資が伸びなければ、企業業績も好転しない。

消費税率引き上げ後のことではなく、足元の世界経済をみても、欧州などは不況の只中にある。2月の貿易統計によると、日本の輸出(数量)は前年比15.5%減と09年9月以来の大幅なマイナスとなった。対米、対欧、対アジアすべての地域で2桁減と不振であり、特に、欧州への輸出は23.7%も落ち込んだ。3月のユーロ圏PMIが46.5と前月比1.4ポイント低下したことから、3月の対欧州輸出も大幅なマイナスになるだろう。

数量では輸入も-0.1%とマイナスだが、金額では11.9%も増加した。これは円安ドル高によるもので、現状の為替相場を前提にすれば、これからも輸入金額は嵩み、貿易赤字が続くだろう。輸入額の2割を占める原油・粗油は数量では前年比-2.7%だが、金額は12.3%増、電力で使用の多い液化天然ガスは数量-1.9%、金額 19.1%となっている。為替が効いているとはいえ、やはり高値掴みをしているのではないか。

輸出(数量)は昨年6月以降9ヵ月連続の前年割れ、輸入も昨年6月以降マイナス月が6回あり、世界経済、国内いずれも需要の弱い状態が続いている。日本の大企業は輸出依存度が高く、このように輸出が低調では、業績はますます厳しくなっているはずだ。

株高・債券高をもたらしているのは、偏に中央銀行の無節操な金融政策である。この突っ支い棒が外れると大崩落がおこるだろう。今は、痘痕も靨の蜜月状態にあるが、政府と日銀が示したような実体経済が実現できない兆候があらわれれば、金融政策の突っ支い棒が支えになっていても相場は崩れると思う。その時期は以外に早いのではないだろうか。 

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