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円高ドル安、輸出減、消費税で株式離れ強まる

米株が頭打ちになり、円高ドル安となれば、日本株は売られる。7月第2週の外人は85億円(東証1部)の売り越しだった。米株は過去最高値を更新したが、日本株に対して外人は慎重である。利下げ期待が米株の推進力なだけに、織り込んでしまえば、出尽くし感が漂うだけなのかも。FRB関係者は口先介入を繰り返し、これからのFRBの姿勢を正当化しようと目論んでいるが、トランプ大統領にとっては、そのようなことはどうでもよいことなのだ。0.25%の小幅では、FRBを激しく攻撃するだろう。

長期的な円ドル相場は円高ドル安である。2015年6月の125円前後が円安ドル高のピークであり、FRBが利上げをする前にすでに円ドル相場は円安ドル高に転換していた。なぜかといえば、2013年4月に日銀が大規模な国債購入策を導入したからだ。第2次安倍政権発足以前から金融緩和期待で円安ドル高傾向にあったが、日銀の国債買いによって、円安ドル高は一層加速し、1ドル=70円台から125円へと急激に動き、2002年以来約13年ぶりの円安ドル高を付けた。3年ほどで、こうした50円もの円安ドル高はいかにも行き過ぎであった。だから、FRBが利上げに政策転換をしても円安ドル高には進まなかった。

2015年央まで円安が進行しても、輸出企業の業績が好転したくらいで、特に、家計部門にはさしたる影響はなかった。むしろ、企業と家計の格差が拡大するという事態を招いたといえる。さらに、円安ドル高により株高が進んだけれども、これも家計消費を引き上げたわけではない。実体経済と金融経済の関係が歪になるという捻じれが酷くなった。

外人の日本株買い越し額(東証1部)は2012年の2.7兆円から2013年には14.6兆円に急増した。日経平均株価は2012年末の10,395円から2013年末には1万6,291円に急騰する。2014年は0.9兆円へと買い越し額は急減、2015年、2016年と連続の売り越し、2017年は0.7兆円を買い越し、2018年は5.3兆円の大幅売り越し、今年も6月までは売り越している。

米株が過去最高値を更新し、米株が割高になっているにもかかわらず、外人の日本株の売り姿勢は継続している。外人が積極的に日本株を買わないのは、2013年の巨額の日本株買い越し分をまだ抱えているからだろうか。外需依存の強い日本経済への不信なども外人の日本株売りに関係しているように思う。

7月末のFOMCで利下げに踏み切る見通しだが、たとえ0.5%引き下げたとしても、それ以降も利下げ期待は持続し、円高ドル安の流れは変わらないだろう。米中貿易戦争による貿易の不振がすでにあらわれているが、円高ドル安の進行はさらに日本企業の業績を下振れさせることになる。

6月の貿易統計によれば、輸出は前年比6.7%減と昨年12月から7ヵ月連続の前年割れだ。輸入も5.2%減と昨年末から低調である。対米輸出はプラスだが、対EUとアジアはマイナス、特に、対中輸出は昨年秋頃から不振であり、6月も10.1%減少し、今年1~6月では8.2%減である。設備投資に関係する一般機械の対中輸出は昨年11月以降、ほぼ前年を下回っている。特に、半導体製造装置や金属加工機械の冷え込みが顕著であり、6月も-27.1%、-41.9%それぞれ大幅なマイナスである。中国企業は設備投資に相当慎重になっていることが窺える。

6月の工作機械受注は総額前年比38.0%減と昨年10月に前年割れ転じてから最大のマイナスとなった。内需は-40.3%、外需は-36.4%と依然大幅な減少となっており、内外の設備投資意欲は冷え切っている。6月調査の『短観』では大企業製造業の今年度の設備投資計画(ソフト・研究開発含む、土地除く)は8.5%と2018年度を上回っているが、不透明な経済の行方を前提にすれば、下方修正せざるを得ないのではないだろうか。

輸出減と円高ドル安では日本株は値下がりする。企業業績の悪化要因として実際に作用するし、わかりやすいからだ。複雑な理屈ではなく単純明快だから即座に反応する。今、外人が日本株を買い越ししないのは賢明な選択だと思う。これから輸出が回復に向かい、円高ドル安も反転する可能性が大きいのであれば、買い向かうだろうが、そのような兆しはどこにも見えない。むしろ、消費税率の引き上げにより、10月以降の消費が落ち込み、不況に陥るリスクがある。そんなときに、株式を買うだろうか。

日銀と年金資金、さらに事業法人が買い手となっているが、過去の公的資金による買い支えが機能しなかったことを想起する必要がある。一旦、売りに火が付くと容易に消すことなどできない。落ちるところまで落ちて、はじめて止るのが株式なのだ。能天気な日銀をはじめとする買手は値下がりを呆然と眺めるだけだろう。

激しく変動し、本当の資産価値がどこにあるかわからない株式に巨額の年金資金を晒す。10年後、20年後に価値が半減していれば、その責任はだれがとるのだろうか。責任者がすべての資産を提供しても微々たるものだ。だが、黒田日銀総裁や年金の責任者等には資産が没収されるという念書を求めるべきだ。

そもそも価値が激しく変動する株式に国民の貴重な資産をあてがうことは間違っている。株式は安全なものだと信じているから年金を株式に投入するのだろう。安全神話に浸っていた福島第1原発は世界中の放射能を撒き散らしたが、未だに、核廃物を取り出すなどという夢物語に夢中になっている。原発関係者がそうであったように、日銀や年金の責任者は、株式安全神話の信奉者なのだ。

2011年3月11日に「原子力緊急事態宣言」が出されたが、いまも「原子力緊急事態宣言」下にあることを忘れてはいけない。福島第1原発では放射能を放出、汚染し続けているのだ。そこに住民を帰還させている。これから、どのような疾病が発病するかもわからない。東電と政府は放射能室に住民を送り込んでいるのだ。政府はハンセン病や優生保護法などの過ちを犯したが、まったく教訓として活かされていない。どのような深刻な被害がでれば、政府は非を認めるのだろうか。

 

★来週以降、『レポート』しばらく休みます。

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