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円高・消費税で景気後退は必至

FRBは6月18日、19日開催のFOMCで政策金利を2.25%~2.50%に据え置いたが、経済成長を維持するためには適切に行動すると表明し、利下げ行う意志を明確にした。昨年末から示唆していることであり、特別、新味はないけれども、株式・債券・為替は大きく反応した。S&P500は過去最高値を更新、10年債利回りは2017年9月以来の低水準に、ドルは円をはじめ主要通貨に対して値下がりした。円ドル相場は昨年4月20日以来の107円台乗せだ。金融市場はまさに金融相場の様相が濃くなってきた。

日本やEUは金融緩和の余地がほとんどなくなっているのに対して、米国は金利だけで2.25%の下げ余地がある。経済が悪化しても利下げで対応できるが、日本とEUは国債購入くらいで、不況になっても、利下げができず、財政頼みとなり、景気は米国以上に深刻になることは間違いない。トランプ大統領はこうした米国の強みをよく知っているのだ。米国経済が優位にある状態では、貿易問題でも日本やEUに強固な姿勢を貫くはずである。

トランプ大統領は来年の大統領選に向けて、FRBに一段の圧力を掛けるだろう。トランプ大統領はなんとしても株式を上昇基調に乗せておきたいのだ。そのためにはあらゆる手段を使うはずだ。最近、パウエルFRB議長を以前更迭しようとしたような噂も流れていたが、トランプ大統領であれば、そのようなこともやりかねない。大統領選に勝つためには株高は必須の条件だからである。

FRBの今回の経済予測によれば、2019年のGDPは2.0%~2.2%、失業率も3.6%~3.7%と前回3月の予測とほぼ同じだが、物価については1.5%~1.6%へと0.3ポイント、コア指数は1.7%~1.8%へと0.2ポイントそれぞれ下方修正した。今年1-3月期の米実質GDPは前年比3.2%だから今年10-12月期は1ポイント程度減速すると見込んでいる。それに伴い、物価はより安定し、FRBの目標から遠ざかるのだ。そうであれば、経済の再拡大を図るために利下げを行うことは、FRBにとっても理に叶っているといえる。次回7月30日~31日に開催のFOMCでは0.25%~0.5%の利下げが実施されるだろう。

米国経済にも仕掛けた貿易戦争の影響が徐々にあらわれている。6月のNY連銀製造業景況指数は-8.6と前月の17.8から一気にマイナスに転じ、2016年初以来の悪化となった。また、6月の米PMI総合指数は50.6と2016年2月以来3年4ヵ月ぶり、製造業に限れば50.1と2009年9月以来9年9ヵ月ぶりの水準に低下し、米国経済は今、景気の拡大か収縮かの境目辺りという微妙な状態にある。

米国経済もおかしくなりかけている。それでも株価は過去最高値を更新、米10年債利回りは2.0%に接近。景気減速と利下げ期待の高まりによって、利回りの低下は顕著である。その結果、株式配当利回り(S&P500、2.1%)が10年債利回りをわずかながら上回ってきた。実物経済の成長率5%(1-3月期名目GDP前年比)を3ポイントも下回る利回りでも、まだ資金が流れ込むのは値上がり期待が大きいからである。こうした値上がり期待を膨らませているのはトランプ大統領とFRBである。

世界の主要株式と比較しても米株に魅力があるわけではない。配当利回り、株価収益率、株価純資産倍率はいずれも米国よりも日本や欧州の主要株式の魅力が優っており、株価の割安感を示している。それでも米株が強いのは、トランプ大統領とFRBを後ろ盾に投機相場が演じられているからだ。

FRBは必ず政策金利をさげる。今年の下げ幅は0.5%を超えるだろう。0.25%の小刻みの利下げでは、トランプ大統領は納得しはしない。来年11月の大統領選まで時間は限られている。来年の今頃には経済に効果があらわれるような利下げをすべきだとトランプ大統領は考えているはずだ。大統領選までには100ベイシスポイント下げさせるシナリオを想定する。それでもまだ1.25%残っており、市場に期待を持たせることができる。

こうした米国の利下げシナリオに基づけば、円ドル相場は大幅な円高ドル安に向かうだろう。1ドル=100円を突破し、90円台に円が上昇すれば108.87円(3月短観、大企業製造業)という今年度の想定レートより大幅な円高ドル安となり、製造業の輸出採算は悪化、日本経済全体へのダメージもおおきくなる。トランプ大統領の要求する農産物や自動車などの通商問題に為替が加わり、日本経済は景気後退に陥るだろう。

2008年のリーマンショックにより、FRBは政策金利を2007年8月の5.25%から2008年12月にはゼロへと1年4ヵ月で5.25%も下げた。これに伴い、円ドル相場は同期間115円75銭から90円65銭(月末)へと25円も円は急騰した。

今後予想される米利下げ幅は金融危機時に比べれば小幅と予想されるが、実行されれば、円高ドル安はそれなりに進行するだろう。すでに円ドル相場は円高ドル安傾向を示しており、日本の輸出は5月まで6ヵ月連続の前年割れである。

さらに、約3ヵ月後の10月には消費税率が10%に引き上げられる。家計の懐具合はほとんど良くなっていないし、先行きも悪くはなっても良くはならないと多くの家計は思っているため、消費支出はより絞られるだろう。駆け込み需要の反動もあり、10月以降の消費は相当深刻になると思う。外需だけでなく内需も悪くなれば、景気後退は必至である。

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