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出生、死亡と新型コロナ

6月4日、厚生労働省が『2020年人口動態統計月報年計の概要』を発表した。昨年の出生数は84万832人、前年比2万4,407減と5年連続のマイナスとなり、明治32年以降では最低を更新した。50年前の1970年の出生数は193万人、100年前の1920年は202万人であった。一方、新型コロナ禍でありながら、死亡数は137万2,648人と前年よりも8,445人減少した。前年を下回るのは2009年以来11年ぶりである。出生数から死亡数を差し引いた自然増減数は53万1,816人減と2007年以降14年連続で減少幅は拡大している。減少数を53万人と仮定すれば、日本の人口は10年後、530万人、20年後には1,060万人減少することになる。

2020年の婚姻件数は52万5,490組と前年比-12.3%の大幅減となった。婚姻率(人口千対)は4.3と前年よりも0.5ポイント低下し、低下傾向に歯止めはかからない。新型コロナ禍が収まらないことから、2021年の婚姻件数も回復することはないだろう。婚姻件数の減少は取りも直さず、出生数のさらなる減少となる。出生数の減少と死亡数の増加によって、自然減は年53万人から拡大し、予測を上回る人口減に直面することになるだろう。

人口減に少子高齢化が加わり、人口構成はますます歪になり、日本は閉塞状態に追い込まれる。人口減と少子高齢化は喫緊の課題だが、政府の対応は消極的である。非正規の低賃金労働者ではなく正規雇用を増やし、残業時間もより厳しく制限しなければならない。有給休暇や育児休業も法律で定め、100%取得を義務付ける。賃金と休暇を婚姻や出産が可能になる水準に引き上げなければ、日本はこのまま人口減と少子高齢化社会に突き進み、生産や消費は低下していくことになるだろう。日本のワークライフバランスはOECDのなかでは最低グループに位置している。

新型コロナ禍であるにもかかわらず、死亡数は減少したのだ。昨年末までの新型コロナで死亡した人は3,459人、総死亡数の0.25%にすぎなかった。今年6月4日現在の新型コロナ累計死亡数は1万3,445人に達しており、今年はすでに9,986人が死亡している。もしこの傾向が持続するならば、2021年は2万人前後の人が新型コロナで亡くなることになる。

新型コロナの月次の死亡数は今年1月、2月は2,000人超であったが、3月と4月は1,000人台に減少した。ところが、5月の死亡数は2,818人と月間では最高となり、6月も4日間で401人とこのまま推移すれば5月並みになりそうである。

なぜ5月の死亡数がこれほど増加したのだろうか。5月は高齢者へのワクチン接種が始まった。ワクチン接種が始まった途端に死亡者が急増するとは皮肉なものだ。ワクチン接種によって新型コロナウイルスは暴れだしたのだろうか。

昨年の新型コロナの統計によれば、男性の死亡が女性よりも39%も多く、男性の死亡数の84%、女性の94%は70歳以上の高齢者であった。若年層ほど罹ったとしても、命を落とすことはほとんどないのだ。体力が劣り、免疫力も低下し、既往症を抱えている高齢者が罹患すれば、死に至る可能性は高い。このような高齢者は外出を控え、人に会わないようにするしかない。

『人口動態統計』によれば、高齢化に伴い老衰による死亡が急増している。死因順位の3番目であり、2020年は13万人2,435人、前年比8.7%であり、総死亡数の9.6%を占める(因みに、10年前の2010年は45,342人)。男女別では男の3万5,777人に対して、女は9万6,658人と女性の平均寿命が長いことを反映している。老衰死がこれだけ多いことは、死に至らないまでも相当衰弱している人がその何倍もいることを示唆している。

例えば、介護認定者数は今年3月、681.8万人だが、10年前の2011年3月は505.9万人であり、34.8%も増加している。65歳以上が3,632万人(2021年5月1日現在)、総人口の29.0%、75歳以上でも1,869万人、同14.9%の超高齢社会だということは、衰えているが、認定されていないあるいは把握されていない人も多数いるのだと思う。このような弱者は肺炎に罹りやすく、新型コロナに罹れば命を奪われることになる。

しかし、外出を控え、人に会わないことによるストレスが生きる力を奪うことになるかもしれない。2020年の自殺者は2万1,081人と2009年以来11年ぶりのプラスとなった。男女別では、男は1万4,055人、前年比23人減、女は7,026人、935人増加した。60歳以上の自殺者の割合は男が57.8%、女42.0%と高齢者の割合が高い。非正規雇用、家庭内の問題などが女性を逆境に追い詰めているが、加えて人と会うという日常の習慣が断たれたことも影響しているのではないだろうか。特に、高齢独居の女性世帯が急増していることも少なからぬ関係しているように思う。

昨年、死亡者が減少したが、その主因はインフルエンザや肺炎などの呼吸器系の疾患による死亡が前年比2万人超減少したからだ。手洗いや人と会う機会を減らせば呼吸器系の病気に罹りにくくなる。ただ、人間は誰とでも付き合うことができることが、人間社会の原動力になっていたと考えられ、こうした対話の減少はさまざまな人間の活動に支障をきたすことになりかねない。

日本の新型コロナ感染者数は5月半ばをピークに減少してきたが、死亡数は高止まりしている。感染のピーク後に死亡数はピークを付けるけれども、今回はどうなるだろうか。ワクチン接種が進んでいるイギリスでは感染が増加に転じているようだ。

世界の感染者数は減少しているが、死亡数はまだ高い水準にある。ワクチン接種をすれば新型コロナを封じ込めることができるのだろうか。新型コロナも自然に弱毒化していくはずだが、ワクチン接種は、そうした流れを止めることにはならないのだろうか。ワクチン接種が進行している国が、このまま感染を押さえつけることができるのか、あるいは再び感染が猛威を振ることになるのか、注視していかなければいけない。

 

■来週は休みます。

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