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利下げを迫るトランプ大統領

3月20日、FRBは利上げを中止し、バランスシートの縮小も9月に終えると発表したが、29日、トランプ大統領は「FRBは誤った利上げをせず、愚かな量的引き締めもしていなかったとすれば、GDPの3.0%も株式市場ももっとすごかったはずだ」とFRBを批判した。さらに同日、米国家経済委員会のカドロー委員長は「FRBは直ちに0.5%の利下げを行うことが望ましい、それが大統領の意向だ」とメディアに語った。

最近の経済指標などに基づけば、米国経済の減速傾向ははっきりしてきており、それに歩調をあわせるように物価もより落ち着いてきている。昨年の12月からのFRBの姿勢はあきらかに金融緩和を滲ませているが、トランプ大統領はそれでも不満なのである。FRBに対する政治的圧力はさらに高まり、FRBは利下げを余儀なくされることになるだろう。

2018年の2.9%成長から今年は1.9%~2.2%に減速するとFRBは予測する。1%も低下するのであれば、利上げなどもってのほかだ、直ちに利下げすべきだということになる。来年、大統領選を控え、これから経済が失速する事態にでも陥れば、選挙で不利になることは間違いない。だから、トランプ大統領は景気拡大を持続させることに躍起になっているのだ。経済を良くするためにはあらゆる手段を動員するはずだ。

トランプ政権にとって金融政策は格好の標的である。政権にとってはコストの掛からない、景気刺激策だ。金融政策についてトランプ大統領は露骨に不満を言うが、決定するのはFRBであり、責任はFRBにある。成長、雇用および物価の動向をみながら、金融政策の舵取りをするわけだが、これまでも再三指摘してきたように、金融政策は実体経済と整合性のとれたものではなかった。

FRBは自らの信念だけで金融政策を決めてきたのではない。金融政策を行う上で、政治的な要素が入り込み、配慮もされていた。ましてや経済が減速するというのであれば、金融緩和に舵を切らなければならないのは当然のことだろう。政治的圧力は否が応でも増す。いままでのだらしのない金融政策により経済をゼロ金利中毒患者のようにしたFRBの責任は重い。

減税により嵩上げされた経済が減速に向かうのは自然なことだが、トランプ大統領にとってはそんなことを言っている場合ではない。なにがなんでも経済成長を維持することが最大の課題なのである。トランプ大統領が招いた米中貿易紛争も早期に収束させたいのは山々だ。みずからが蒔いた種によって経済が減速していることを棚に上げ、FRBに責任を転嫁しているのである。だが、トランプ大統領たちのこのような理不尽な批判にさらされても、FRBは沈黙したままである。沈黙し、反論しないことは批判を受け入れたとみなされる。

来年の大統領選が時々刻々と近づいている。トランプ大統領は時間がないのだ。カドロー委員長の「直ちに」は重要である。利下げの効果が現れるには半年以上かかる。それも0.25%の小幅ではなく、0.5%以上の下げでなければ効き目はない。この段階で利下げしても、大統領選挙にやっと間に合うといったところか。大統領選挙に間に合わせるためには、「直ちに」利下げをFRBにさせなければならないのである。

 

米貿易収支によれば、今年1月のものの輸出は前月比1.3%増加したが、昨年5月をピークに減少していることは間違いない。輸入は前月比3.0%減と3ヵ月連続のマイナスとなり、国内需要の低迷を示唆している。前年比でみると、輸入は1.1%とプラスだが、昨年9月の11.6%をピークに伸びは大幅に鈍化しているし、輸出も昨年5月には前年比13.5%も伸びていたが、今年1月は3.2%であり、海外需要も弱くなっていることがわかる。

1月の米個人消費支出(PCE)は前月比0.1%と前月のマイナスからプラスに転じたけれども、回復したといえるような数値ではない。2018年の個人消費支出は前年比4.7%伸びたが、1月は前年比3.7%に低下している。これは昨年の可処分所得が前年比5.0%も伸びたが、今年2月は4.3%に低下しているからだ。

2017年と2018年の個人所得は前年比4.4%、4.5%とほとんど同じ伸びだが、個人所得税が2017年の前年比4.1%から2018年には減税によって0.8%に抑えられたため、可処分所得を押し上げ、個人消費支出を引き上げた。

個人消費支出の伸びの鈍化によって、PCE物価指数も1月、前年比1.4%と昨年12月から0.4ポイントも低下した。ものの価格が前年比-1.0%と2ヵ月連続のマイナスとなり、昨年7月の1.4%から様変わりしている。コア指数も前年比1.8%と前月から0.2ポイント低下し、2019年のFRBの予測をいずれも下回ってきた。

物価上昇率がFRBの予測を下回ることは、目標値を達成するために、利下げしなければならないことになる。物価の伸びがますます低下していくことになれば、消費者は購入を先延ばしするかもしれない。そうなると経済はさらに低迷していくことになる。これを食い止め反転させるには、利下げしろと政府はFRBに迫るだろう。

だが、実際には利下げでは消費は拡大しない。期待収益率が変わらないとすれば、金利の低下は設備投資を刺激し、それによって経済活動は活発になり、消費も拡大するという経路でしか経済は動いていかないからだ。

だから、FRBが政策金利を引き下げ、市中金利も低下したとしても、これが直ちに消費増に結び付くことはないのである。だとしても、トランプ大統領は執拗に利下げを迫り、そしてFRBはそれに応えるだろう。

米政策金利と日本株とはほぼ似たような動き方をしている。相関性はつよいのである。これから米政策金利が低下していくのであれば、日本株は安くなる可能性が大きい。米経済が良くないのだから、政策金利を引き下げる。そのことが円高ドル安傾向を強め、さらに日本株安へと連鎖していくことになる。

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