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博打場の活況で経済はよくなるか

日経平均株価は24日、ITバブル期の2000年4月の高値を超え、1996年12月以来、約18年半ぶりの高値を付けた。米株式が足踏みし、円安も抑えられている状況下で日本の株式だけが、高値を更新している。週末の日経平均株価は昨年末比18.6%と主要国では最大の伸びだ。次がDAXの17.2%と日経平均株価に近い伸びだが、米株などは数%にとどまる。

株価の上昇で東証1部の時価総額は600兆円を超え、過去最高を更新した。時価総額を名目GDPで割った比率は1.2倍を超え、実体経済と株式の乖離拡大は1980年代後半のバブル期以来となった。

東証1部の売買回転率は株数、代金のいずれも1980年代のバブル期の約2倍に達している。今年1月から5月までの売買回転率(年率)は株数152.8%、代金123.4%と1989年の73.1%、61.1%と比べものにならないほどだ。バブル崩壊後、売買回転率はいずれも20%以下に落ち込み、閑古鳥が鳴いていたが、1990年代後半以降商いは盛り上がり、2004年以降は株数、代金ともに100%を超え、しかもその後一度も100%を下回ることなく、株式の超活況が持続している。

 全株式が年間に1回転以上回転し、所有者が変わっている超短期売買だが、これだけ売買が行われていることは売買代金も嵩んでおり、同様に、今年5月までの5ヵ月の一日当たり売買代金は2.8兆円と1989年(1.3兆円)の2倍以上に膨れている。2004年以降、2012年を除けば1989年の売買代金を超える状態が続いているのだ。過去最高は2007年の3兆円であり、2位は2013年の2.6兆円、今年5月まではこれを上回っている。

このような株式活況に至ったのは、日銀のゼロ金利政策や政府の後押しによるところが大きい。市場といいながら、人為的、作為的であり、ルールなどあってないような株式市場なのである。国家管理の東電や他電力会社が平然と上場し、粉飾決算の東芝にも毅然とした態度を示せぬ東証などなど、株式市場は政府、日銀公認の博打場といってもよいだろう。

国、日銀、財界が凭れ合い、ぐるになり、株式を持ち上げるだけ持ち上げる。株式が高騰して日本経済が良くなるのであれば株高も頷けるが、株式と実体経済には相関性がないのである。株式売買高が膨らみ、時価総額が拡大しても、名目GDPはほとんど変化しないのだ。名目GDP(暦年)の最高は1997年の523兆円、今年第1四半期は497兆円と18年前の水準を26兆円下回っている。どれだけ株式を刺激しても実体経済はびくともしないのである。

株式売買高が膨らんでも、利するところは寺銭の入るところであり、なにも生産しない部門が生産部門から収奪し、経済全体としては、株式売買高の拡大は社会的にはマイナス要素になる。株式売買コストや投信の売買・保有コストは膨大なものである。なにも生み出さない寄生部門に金を吸い取られる。極端な話、それほど株式の活況が社会に有益であるならば、生産活動を放棄して、みな博打打になるのがよかろう。博打場に入り浸り、生産が疎かになれば、株式どころではなくなることはだれにでもわかる。

『法人企業景気予測調査』によると、今期の大企業経常利益は減益と予想されており、株価を決める最大要因の収益からは今のところ株式の価値を引き上げる力はない。1%の減益予想だが、3ヵ月前に比べると、マイナス幅は4.6ポイント改善している。だが、売上高予想は前回の1.5%から今回0.4%へと下方修正されており、収益の改善とは異なる。大企業の売上高が今期、0.4%の微増を想定していることは、給与はそれ以下に抑え、収益の落ち込みを最小限にしたいと考えているのだろう。

『家計調査』によると、5月の消費支出(2人以上の世帯)は前年比実質4.8%増加した。これは前年同月が8.0%減と大幅なマイナスだったからだ。季節調整値は95.8と前月比2.4%増加したが、依然低水準にとどまっており、4月、5月の2ヵ月平均は第1四半期を2.6%下回っている。勤労者世帯の実収入は実質1.5%と2ヵ月連続のプラスだが、世帯主は-0.7%と15ヵ月連続のマイナスであり、消費の底上げなど期待できる状況ではない。

今年1月1日現在で人口は前年より0.22%減少しているが、生産年齢人口は1.49%も減少する半面65歳以上は3.46%も増加している。しかも人口減少率は着実に拡大する。これで消費が伸びるなどと考えられるだろうか。減少するのであり、そのような前提で経済の運営を考えていかなければならない。

消費が弱いから消費税で一旦上がった消費者物価(CPI)は再びゼロに近づいた。5月のCPI(生鮮食品除く)は前年比0.1%まで低下した。CPIの伸びが低下すれば、円の価値は強まり、為替は円高に向かうはずだ。米国の5月のCPI(コア)は前年比1.7%、日本よりも1.3ポイント高い。つまり、円の値下がり率よりもドルの値下がり率が大きいということだ。この差が拡大すればするほど円の価値は相対的に上がることになり、円高ドル安に自然と向かうだろう。

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