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危うい日本経済

米株が売られれば、円は強くなり、商品市況は悪化する。WTIは1ヵ月で15.6%、銅は9.8%それぞれ下落した。金は4.3%値上がりしたが、CRB指数は前月比8.3%低下した。新型コロナウイルスの深刻化も影響しているが、世界経済の成長鈍化にもかかわらず、株式や商品が買われ過ぎていた矛盾が解消に向かっていると理解すべきだ。

昨年10-12月期の米実質GDPは前期比年率2.1%と前期と同じであった。個人消費支出は1.8%と2四半期連続して伸びは低下し、設備投資は-1.5%と3四半期連続のマイナスである。輸入の減少により純輸出の寄与度は1.5%に高まり、政府支出もGDPを0.5%引き上げた。

GDPの69.8%を占める個人消費支出の伸びが1.8%にとどまったことが、成長の伸び悩みを招いた。個人消費支出が伸びない限り、米国経済の拡大は望めないのである。その個人消費支出を決めるのは可処分所得だが、実質では、昨年10-12月期は前年比2.6%と低下しつつある。

2018年は減税により、所得税(名目)などが前年比1.6%に低下したため、可処分所得は6.1%も伸び、個人消費支出を引き上げた。減税効果が出尽くした2019年の所得税等は5.2%増となり、可処分所得は4.4%へと1.7ポイントも低下、名目個人消費支出は4.0%と前年を1.2ポイント下回った。

2019年の実質GDPは2.3%と前年よりも0.6ポイント低下し、2016年以来3年ぶりの低成長となった。所得税等の増加により個人消費支出の伸び率が鈍化したことに民間設備投資の不振が加わり、成長を引き下げた。が、財の輸出が2018年の前年比4.3%から2019年には0.2%、輸入も5.0%から0.2%へと低下し、純輸出の寄与度は-0.16とマイナスながら、0.13ポイント改善した。

米中貿易戦争は依然続いており、米国の財の輸出入は引き続き低迷するだろう。個人消費支出の改善が見込めなければ、民間設備投資意欲も湧いてこない。米国経済の民間需要が強くなる要因を見つけることは難しい。

物価は引き続き安定しており、昨年10-12月期のPCEは前年比1.5%、PCEコアも1.6%だ。FRBの今年の物価見通しはPCEで1.8%~1.9%、PCEコアでは1.9%~2.0%であり、低経済成長が続けばFRBの目標を下回りそうである。

内外需がこのまま振るわない状態が持続すれば、経済成長率の低下さらに需要低迷による一段の物価の伸び率低下が起こるかもしれない。そうなれば、FRBも事態を放置しておくことはできず、利下げを断行せざるを得なくなるだろう。

昨年10-12月期のユーロ圏GDPは前期比0.1%と7-9月期の0.3%から低下した。前年比では1.0%と鈍化しており、足元の経済状態はたどたどしい状態である。ユーロ経済の中心を占めるドイツ経済は依然思わしくない。昨年11月の鉱工業生産や資本財受注は前年比4.1%、7.0%それぞれ減少している。ユーロ圏外からの資本財受注は-14.2%と大幅に落ち込んでおり、回復の道筋は見えていない。経済の停滞から物価は安定しており、悪化しそうなユーロ圏失業率も12月、7.4%まで低下している。ドイツの失業率は3.2%と低く、雇用が保たれていることが、ドイツ経済の支えになっているように思う。

翻って日本経済はどうかというと、米国やユーロ圏よりも悪く、10-12月期の生産や販売は収縮している。昨年12月の鉱工業生産指数は前月比1.3%と3ヵ月ぶりにプラスに転じたが、出荷は前月比横ばいにとどまったため、生産者在庫率指数17.3%も急増してしまった。出荷は予想を上回る不振に陥っており、先行きの生産計画もより慎重になるはずだ。

昨年10-12月期の生産指数は前月比-4.0%と2四半期連続のマイナスだ。4-6月期だけがプラスで後の3四半期はマイナスとなり、第4四半期は前年を6.3%も下回ってしまい、これで4四半期連続の前年割れである。2019年では生産指数は2.9%減と2015年以来4年ぶりに前年を下回った。

生産の縮小は需要が減退しているからだ。『商業動態統計』によれば、消費税率引き上げの反動減に見舞われ、昨年10-12月期の商業計の販売額は前期比5.5%も減少した。消費税引き上げ前の7-9月期は1.3%増とそれほどの駆け込み需要が発生したわけではないが、それでも10-12月期は大幅に減少したのである。昨年10月の小売業は前月比14.2%も落ち込み、11月、12月は連続でプラスになったものの、回復力は弱い。

昨年の失業率は2.4%と低く、役員を除く雇用者は前年比64万人増加したが、正規雇用の18万人増に対して非正規雇用は45万人増と雇用の質は悪化していると言える。昨年の男の正規雇用は前年比5万人減と2014年以来5年ぶりのマイナスである。非正規雇用の22万人増で昨年は計17万人増となったが、2018年の50万人増から大きく減らした。

昨年の非正規雇用比率は38.2%と6年前の2013年に比べれば1.6ポイント上昇している。男の非正規雇用比率は昨年、22.8%と女の56.0%と比べればはるかに低いが、2013年比では男の1.7ポイントの上昇に対して女は0.2ポイントとほぼ横ばいなのである。こうした男の非正規比率の上昇も消費動向に影を差しているのではないか。雇用が増加したとはいえ、非正規が正規の2.5倍も増加するようでは、雇用不安は改善されず、また低賃金であることなどから消費意欲が高まることはない。

低失業率で雇用はほぼ完全雇用の状態にあるが、4割近くが非正規雇用であり、しかも賃金が横ばい状態では需要を喚起することはできない。昨年11月までの現金給与総額をみても前年比プラスは3ヵ月にすぎず、残り6ヵ月はマイナスであり、1ヵ月は変わらずである。消費の低迷は物価にあらわれており、1月の東京都区部消費者物価指数は前年比0.6%にとどまっている。商品市況の急落によって、今後物価はゼロにむかってさらに低下していくだろう。需要減から物価安という悪循環に陥りつつある危うい状態に日本経済は置かれている。

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