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厳しさを増す今年度の日本経済

週末、円ドル相場は118円台を付け、2月下旬以来の円高ドル安だ。ドルユーロも約1ヵ月ぶりのユーロ高となり、ドル全面安となった。3月の米非農業部門雇用者数の伸びが予想を大幅に下回り、利上げ時期が後ずれするとの観測が強まったからだ。雇用統計だけでなく、米国経済の主エンジンである個人消費の足取りが依然弱く、このような状態で利上げに踏み切れば、米国経済は失速しかねない。2月の米貿易統計によると、輸入は前年比5.1%減と2ヵ月連続のマイナス、非国防資本財受注(航空機除く)も前年比0.1%に低下するなど、米国の主力部門の低迷は深刻になってきている。

3月の非農業部門雇用は前月比12.6万人と前月の26.4万人の半分以下となり、製造業に限れば前月比減となった。週平均労働時間は前月比横ばい、時間当り賃金は前年を2.1%上回るにとどまり、雇用が改善するわりには賃金の伸びは緩やかであり、これでは個人消費を刺激することはできない。個人消費が振るわなければ、設備投資意欲も湧かず、消費者物価の伸びも低下していくことになる。ドル高は輸入にプラスになるはずだが、1月、2月と2ヵ月連続の前年割れとなったことは、米個人消費はかなり悪化していることを示していると言える。

日本、米国、欧州のなかでは米国経済が最も良好であったが、今はその米国が怪しくなってきた。世界最大の経済規模の米国が不確かになれば、世界経済にも暗雲が垂れ込めてくる。米国経済の成長が鈍化すれば、その影響は当然日本にもおよぶことになる。先週発表された『短観』によると、大企業製造業の2014年度の輸出売上高計画は前年比3.5%だが、2015年度は1.6%に低下すると予想されている。円安ドル高だが、輸出の伸びの鈍化によって、2015年度の売上計画は0.6%と前年度の半分になるようだ。

2015年度の売上計画は大企業全産業でも0.7%と2014年度(2.7%)から落ち込む計画だ。全規模全産業では今年度、0.6%の売上計画であり、経常利益も0.6%とほぼ横ばいになるとの予想である。2014年度の経常利益も1.9%増となり、経常利益は2年連続で微増にとどまりそうだ。

 大企業全産業の当期純利益(計画)は2014年度、前年比10.1%、2015年度は-1.0%と減益を見込んでいる。大企業製造業も8.8%から0.1%へと伸びはとまる。2013年度の前年比150.3%の急増からすでに大企業製造業の収益状況は一変しているのである。だが、年度では日経平均株価は4年連続の前年比プラスとなり、4年間で約倍に上昇した。しかも、上昇率が最大になったのは2014年度の29.5%である。大企業全産業の当期純利益は2014年度、前年比10.1%と2013年度の86.1%から大幅に鈍化し、今年度は減益になりそうだが、2014年度の株式上昇率は2013年度を10ポイント上回った。

2015年度の大企業全産業の当期純利益は、上期の前年比-4.4%に対して下期は3.2%増益計画である。ただ、2014年度は上期5.9%、下期15.8%と下期の伸びが大きく、2015年度の下期プラスは楽観的であるといわざるを得ない。

 業況判断(「良い」-「悪い」)は全規模全産業で3月、7と昨年12月よりも1ポイント上昇、先行き5を見込んでいるが、売上高や経常利益の計画からすれば、依然「良い」が「悪い」を上回っていることに違和感を覚える。大企業製造業の輸出が2014年度の3.5%から2015年度には1.6%に低下する計画であるにもかかわらず、海外での製商品需給判断は3月の-7から先行き-4へと改善するというちぐはぐな結果となっている。

 設備投資計画(ソフト含む土地除く)は、全規模全産業で2014年度の5.3%から2015年度は-2.4%へと悪化する。売上高や収益が低迷すると予想されている状態では設備投資マインドは冷え込む。『家計調査』によれば、2月の消費支出は名目でも前年比0.4%減とマイナスが続き、『毎月勤労統計』によると2月の現金給与総額は前年を0.5%上回っているにすぎない。このような物価上昇率にもとどかない給与では消費は増えず、結局、企業の売上は低迷し続け、設備投資を実施する必要性がなくなる。企業の出し惜しみが結局は自らの首を絞めているのである。

 消費の低迷は生産にも影響している。2月の鉱工業生産指数は前月比3.4%減と3ヵ月ぶりのマイナスとなった。在庫が思うように減少しないことが、生産の頭を抑えている。出荷は昨年度第1四半期大幅に落ち込み、その後も生産指数を下回る状態が続き、在庫が昨年夏以降、ほとんど変化なく高止まりしている。製造業で広く使われる非鉄金属を始め、機械工業、電気機械工業といった主力産業の在庫増が顕著である。

財別では資本財(輸送機械を除く)の在庫指数が145.0(2010年=100)と2009年1月以来約6年ぶりの高水準に上昇し、資本財にはあきらかに意図しない在庫が積み上がっている。資本財は在庫調整を余儀なくされ、生産は低下していくだろう。資本財の在庫指数が上昇しているときに、株価も上昇しているケースは稀であり、通常、株価は下落している。意図しない資本財在庫が積みあがっているときの株価上昇はバブルと見てよい。

『短観』の今年度の設備投資計画は2.4%減だが、資本財生産・在庫動向から予測すれば、これよりもさらにマイナス幅は大きくなるように思う。設備投資の減少は製造業の収益に直接的に響く。製造業部門の業績悪化は、製造業部門の消費減少を経由して非製造業部門の業績を下振れさせることになる。

マイナス物価の定着や米国経済の停滞から、円高ドル安に向かい、今年度は設備投資需要の減少だけでなく円高も製造業の企業収益に打撃を与えることになるだろう。国の一般会計予算は今年度96.3兆円と昨年度の99兆円(補正後)を下回る。国債費が昨年度よりも増加するため、国債費を除いた歳出は4.3兆円少なくなり、2008年度以来7年ぶりの低い水準だ。この減少分だけで名目GDPを1%弱引き下げることになる。今年度の日本経済は高騰の株式とは似て非なるものになるのではないか。

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