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参議院選の最大の論点は人口減と少子高齢化だ

米株式は過去最高値を更新した。6月の米雇用統計によれば、非農業部門雇用者は前月比22.4万人増と5月の7.2万人増から回復し、大幅な利下げ観測は後退した。だが、米景気関連の指標は、先行きの不透明感を示している。6月の製造業ISMは51.7と3ヵ月連続で低下し、今年1月から8.7%もの低下だ。5月のモノの輸出は前年比-2.2%とマイナス傾向だし、輸入は2.0%とプラスだが、昨年に比べれば大幅にダウンしている。トランプ大統領の株高政策により、高値を更新しているけれども、米国の実体経済に目を向ければ、トランプ効果の持続には疑問だ。

5月の独資本財受注は前月比-2.7%と3ヵ月ぶりのマイナスとなり、前年比では7.5%も落ち込み、昨年12月から6ヵ月連続の前年割れだ。米非軍事資本財受注(航空機除く)も前年比1.0%まで低下しており、設備投資は失速しつつある。日本の資本財出荷(輸送機械除く)は5月、前年比-4.1%と昨年12月から6ヵ月連続の前年割れとなり、主要国の設備投資意欲は低下してきている。

JPMorgan Global Mfg PMIの低下傾向には歯止めがかからず、6月は49.4と2012年10月以来6年8ヵ月ぶりの水準に低下した。特に、新規受注や新規輸出が良くない。米中貿易戦争による貿易の低迷、それに伴い中国およびアジアが設備投資に慎重な姿勢を強めているからである。トランプ大統領は、対中関税の第4弾は見送ったが、これまでの高関税が続いているため、世界貿易の低迷は解消しないだろう。

6月調査の『短観』によれば、今年度の大企業製造業設備投資計画(ソフト・研究開発含む土地除く)は前年比8.5%と昨年度の4.3%を上回っている。上期の11.2%に対して下期は6.2%に低下するものの底堅い。不思議なことに、業況が悪化し、今年度の経常利益は-8.1%と前回調査から下方修正されながら、設備投資は強気で積極的である。資本財出荷だけでなく、機械受注(総額)も4月まで5ヵ月連続のマイナスと設備投資関連の指標は『短観』の設備投資計画とは異なる景色をみせている。10月に消費税率が引き上げられることも多少影響しているのだろうか。

参議院選挙が公示され選挙戦に入った。10月から引き上げられる消費税、年金不安、憲法などが論じられているが、最大の論点は人口減、少子高齢化ではないだろうか。人口減などは、すぐにはトレンドを変えることができないだけに、目先の問題に焦点を合わせがちである。だが、遅れれば遅れるほど二進も三進もいかなくなる。

希望者すべてが保育所にはいることができるというのは、女性が労働に参加できる最低限の条件ではないだろうか。そのためにはひと、かね、ものを手当しなければならない。切羽詰まっているのだが、本気で取り組んではいない。

預けて働くには非正規労働、労働時間、休暇などの労働条件の改革が不可欠。だが、これらもやる気になればすぐできるが、緩やかな改正にとどまり、みすみす国政の事情で有効な労働を逃しているといったところか。株式にあれだけの資金投入を日銀や年金が平気で行っているにもかかわらず、国の存亡に関わることへの取り組みはまったく遅々としている。

2018年の生産年齢人口(15歳から64歳)は7,580万人、1990年から1,033万人減少した。生産年齢人口は減少したが、名目GDPは1990年の453.6兆円から2018年には548.9兆円に拡大し、1990年から2018年までの28年間の年率成長率は0.68%であった。2000年から2018年までの18年間ではたったの4.2%しか増加していない。年率に直せば0.22%であり、ほぼ停滞していると言ってよいだろう。

2018年の生産年齢人口一人当たりの名目GDPは724.1万円であり、1990年の526.5万円の1.375倍、年率では1.14%と名目GDPの伸びを0.46ポイント上回っている。これを労働生産性とみなし、32年後の2050年まで過去28年間の労働生産性を適用すると2050年の生産年齢人口一人当たりの名目GDPは1,042万円となる。2050年の生産年齢人口5,275万人(出生中位・死亡中位)に1,042万円を掛ければ名目GDPは549.6兆円となる。

労働生産性が2018年までの過去28年間と同じであると仮定すれば、名目GDPは2018年とほぼ同じ水準にとどまることになる。2020年までの10年間の生産年齢人口の減少率は年率-0.94%、2030年までの10年間では-0.74%に縮小するが、2040年までの10年間では-1.38%へと大幅に減少し、2050年までは-1.24%と引き続きマイナス幅は大きく、労働生産性が飛躍的に伸びるか、生産年齢人口を増やさなければ、経済規模は縮小してしまう。

そのためには労働環境の改善を図り、労働参加率を高める施策を実行しなければならない。特に、女性が働くことができる環境を整えることが喫緊の課題だといえる。2018年までの28年間の労働生産性は年率1.14%であったことを思えば、2030年代や2040年代はマイナス成長になるということだ。よほどの生産性向上の対策を図らなければ、日本は沈んでいくことになる。

非農林業就業者数は2008年の6,163万人から2018年には6,454万人へと10年間で291万人増加した。産業別の増加数をみると医療・福祉が2018年、831万人、2008年比231万人増と増加は突出している。医療・福祉の就業者が向こう10年間、過去10年間と同率で伸びると仮定すれば、2028年には2018比319万人増の1,150万人に拡大することになる。

生産年齢人口が減少するなかで医療・福祉だけで319万人もの就業者を確保することができるだろうか。こうした問題を提起するだけでも、人口減と少子高齢化は日本社会の最大の問題だと言える。安倍政権は憲法を取り上げることで真の問題をカモフラージュしている。2050年などすぐにやって来る。時間との闘いとなる。

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