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口から出任せの安倍政権

日経平均株価は3週連続の大幅安となり、4月第1週以来の安値に戻ってしまった。5月22日のピークから12営業日で2,750円、17.1%もの急落だ。安倍政権は「成長戦略素案」や「骨太方針素案」、さらには年金積立金管理運用独立行政法人が資産運用割合の見直しを発表するなど、株式急落食い止め策を矢継ぎ早に打ち出したが、火に油を注ぐばかり。これほど下落すれば、先物や信用は損切りに追い込まれ、将来のことをいわれても、売りが引っ込むわけはない。もうすでにやられているのだから。

毎度のことだが、落ちるときのスピードは尋常ではない。高所恐怖症に罹っていたところに、金融緩和というこれまでの支えが徐々にだが取り払われる恐れがでてきたからだ。日本株相場をリードしてきた外人が買い手から売り手に変わればひとたまりもない。あっという間に相場は崩れ、暴落する。

米株もそうだが、企業収益に基づいて買われてきたのではないことが、いっそう明白になった。安倍首相や黒田日銀総裁の口車に乗せられ、お祭りのようにはしゃいだ半年だったといえる。デフレ脱却、円安・株高の宣伝効果も失せた。まともに日本経済に向き合うと、安倍首相や黒田日銀総裁のシナリオのように日本経済を進めることなどできないのだが、それでも美人投票の為せる業か、舞い上がってしまった。

日本の経済学者やマスコミの知的水準が貧弱であることも露呈した。原発推進派となんら変わることはない。政府や日銀と一緒になって貨幣数量説を唱え、円安・株高・債券高を狙うという。これら3者を居心地の良い水準を留めておくことなどできないことなのだが。物価上昇と円安を目指し、債券利回りを引き下げるなど考えられないことだ。みんなで失敗すれば、お咎めなしということなのか。

1-3月期の『法人企業統計』が公表されたが、全産業の売上高は前年比5.8%減と4期連続の前年割れである。営業利益は2.4%と3期ぶりのプラス、設備投資は3.9%減と2期連続のマイナスとなり、企業業績にさほど変化はない。原価を売上高以上に削減したことなどにより、営業利益をプラスにすることができた。だが、非製造業の営業利益は6.6%減と3期連続のマイナスとなり、苦しい状況が続いている。一方、製造業は31.6%と3期ぶりのプラスとなり、2010年7-9月期以来の高い伸びとなった。製造業の営業利益が2桁増となったのは自動車などの輸送用機械が思わぬ円安の影響を受け、好業績を達成することができたからだ。製造業の営業利益増加額の4割強は輸送用機械に依存しており、一部の産業が突出して稼いだ仕組みになっている。大企業製造業(資本金10億円以上)に限れば、営業利益は51.3%拡大しており、為替などは大企業有利に働いていることがわかる。

製造業は2桁の営業増益になったが、設備投資は8.3%減と2期連続の前年割れである。非製造業の設備投資も2期連続のマイナスと冴えないが、これは売上高が依然落ち込んでいることに加え、先行きも期待できないと思っているからである。消費税の税率引き上げを控え、駆け込みにより一時的に売れたとしてもその後、消費が冷え込むことは間違いなく、設備投資には二の足を踏む。

さらに企業はすでに十分な資本設備を保有しており、むしろ適正な水準に固定資本を縮小しなければならないのである。これはいまさら始まった問題ではなく、1980年代のバブル崩壊後続いている問題なのである。大企業の固定資産・売上高比率をみると、1980年代半ば頃までは低下から横ばいで推移していたが、その後はほぼ上昇しており、過剰資産を抱えていることはあきらかである。1989年末、大企業製造業の固定資産・売上高比率は1.53であったが、2013年3月末には2.53、非製造業は1.78から3.68へと上昇しており、非製造業の過剰固定資産の問題はより深刻である。

 過剰資産を抱えていると新たに設備投資をすることにためらい、資本設備の年齢が高く旧式になり競争力が衰える。日本の電気メーカーが輝きを失ってしまったのは、こうした資本設備の古さが関係しているのかもしれない。

バブル崩壊以降、売上高にはでこぼこがあるもののほぼ横ばいで推移しているととらえて間違いはない。日本株が過去最高値をつけてから今年は24年目に当たるが、株価はいまだにピークの三分の一である。1929年、NYダウの暴落は大恐慌の引き金になり、1932年には1929のピークから77%も値下がりした。だが、25年後の1954年に過去最高値を更新した。日本株の低迷ぶりが際立つけれども、これはやはり売上が伸びていないことからも理解できる。企業業績を決するのは売上であり、これが拡大できなければ利益もでず、設備投資をすることはできないのである。

20年以上、売上が停滞していれば設備投資は更新にとどまり、増産のための設備拡大は不要なのだ。安倍政権は名目3%成長を目指すというが、売上が横ばいでなぜそのようなことができるのだろうか。とんでもないたわ言だといわざるを得ない。福島原発の事故などなかったかのように、原発を推進するのだから、名目3%成長を掲げるくらい平気の平左なのだろう。

2011年度までの10年間のGDP統計を顧みても、名目3%成長などあまりにも現実離れしている。GDPの約6割を占める家計最終消費支出も過去10年伸びなかった。家計最終消費支出が伸びなければ成長は不可能である。過去10年を比較すると、人口構成の変化によるものか、食品、酒、被服はいずれも減少している。娯楽・レジャー、外食・宿泊も減少傾向を示している。半面、住居・電気・ガス・水道、保険・医療、交通、通信への支出は増加しており、10年間の伸び率では通信の19.4%増がトップで、2位が保険・医療(16.4%)である。人口減と高齢化がより進行することになることから、こうした家計の支出形態はより強まるはずだ。

2015年の生産年齢人口は7,681万人(出生率低位・死亡中位)と2010年比491万人減少する一方、65歳以上は446万人の増加だ。2015年の生産年齢人口は2000年から940万人もの減少になるのである。これだけ生産年齢人口が減少すれば、GDPが落ちていくのは避けられない。働くひとが減少することは、作り出すもの・サービスがそれだけ減少するからだ。

65歳以上のひとを働かせるだけの需要はない。14歳までの年少人口は1985年から2015年の30年間で1,020万人減少し、2030年までにさらに583万人も減少するのである。これほど若いひとが少なくなる社会で65歳以上のひとが活躍できるほどの需要は生まれてこないだろう。ましてや名目GDPが年3%も増えるなど妄言もはなはだしい。

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