Share |

大非製造業営業利益9期ぶりの減益

主要国の株式は好調を持続しているが、利益に照らし合わせると買われすぎである。先週、ナスダック総合は2000年3月以来15年ぶりに5,000を超え、あと一息で過去最高値を更新するところまできた。ITバブル期の高みまで駆け上がってきたのだ。ITバブル後の2002年10月には1,114まで急落、NYダウやS&P500は金融危機によりITバブル後の安値を更新したけれども、そのときナスダック総合は2002年10月の安値を下回らなかった。それにしても米株式の上昇期間はすでに6年超と長期化しており、前回よりも長い。米国の経済成長率は緩やかであり、したがって、企業収益の伸び率も低下している。利益と株価の関係をあらわす株価収益率はS&P500 で20倍、ナスダック総合では30倍弱に上昇しており、長期的な株価収益率の水準を超え、株式は割高になっているのである。

 株式が割高になりながら高値を更新しているのは、収益ではなく金融、つまりFRBの金融政策の力が大きく働いているからだ。ゼロ金利、証券買取と金融機関救済策によって金融部門の回復力はめざましく、金融危機など起こったのだろうかと錯覚するほどである。金融部門は回復したが、実体経済は金融危機の後遺症を引きずっているのである。家計や企業など非金融部門の絡み合った巨額債務の解消は一筋縄ではいかないからだ。

 2月の米非農業部門雇用者は予想以上に増加した。本来、雇用の改善は経済の拡大を示唆し、株式にも好影響をおよぼすはずだが、今回はFRBの利上げが早まるという見方が強まり、米株式は値を下げた。それだけ、株式は金融政策に強く依存し、敏感になっているのである。

 米国経済の雇用は改善しているけれども、週時間当りの賃金は前年を1%しか上回っていないし、1月の資本財受注(国防・航空を除く)は前年をわずかだが下回っている。1月の個人消費支出は前月比-0.2%と2ヵ月連続減となり、原油価格急落から個人消費支出物価指数は3ヵ月連続の前月比マイナスだ。このように個人消費がもたついている状態では米国経済は本調子ではない。たどたどしい歩みのなかで、株式だけが好調を保つということは、やはり異常なのである。

日本経済の長期トレンドは縮小しているので、短期的にはぶれる企業収益も長期的には減少していくだろう。先週のはじめに昨年10-12月期の『法人企業統計』が公表されたが、『法人企業統計』など一顧だにされず、株式は好調を持続、TOPPIXは4営業日上昇した。

全規模全産業の売上高は前年比2.4%増加した。売上原価は2.5%増と売上高をやや上回ったが、販管費の伸びを0.7%に抑えたため、営業利益は7.0%増加した。コストのなかでも重要なのは人件費だが、人件費は前年比1.0%と2期連続のプラスだが、大幅に抑えられ、これによって営業利益は7%も伸びたのだ。

人件費の内容をみると、役員給与は0.6%と低いが、賞与は26.7%も伸びている。従業員も給与は0.6%を抑えられた半面、賞与は3.3%増加したが、役員に比べればあまりにも低い。従業員の給与と賞与の合計額は前年比1.1%にすぎず、役員の1.7%よりも低い。さらに福利厚生費は前年比0.1%の微増に抑えられたことから、人件費は1.0%増と2013年4-6月期以降7四半期連続で売上高の伸びを下回っている。

人件費を1.0%ではなく、売上高と同じ2.4%に引き上げれば、営業利益は2.6%増にとどまる。営業利益拡大は人件費の抑制によって捻出されたといえる。それでも営業利益伸び率は消費税引き上げによる駆け込み需要がピークだった昨年1-3月期の28.8%をピークに低下傾向にある。そのような営業利益伸び率の低下にもかかわらず、株価が高値を付けることは過去の事例ではみることができない。

2014年10-12月期を第3次安倍内閣が発足した2012年10-12月期と比較すると、売上高は6.3%、売上原価は6.6%、販管費は-0.4%と販管費の減少により営業利益は37.5%も増加している。なかでも人件費は2.9%削減され、営業利益拡大の源になっているのである。人件費の問題がこれだけ注目されているにもかかわらず、企業は人件費を抑え込むことによって、利益を獲得しているのだ。これでは消費支出が伸びることはなく、国内設備投資を拡大する必要もない。

昨年10-12月期を10年前と比較すると、売上高はほぼ同じでありながら、営業利益は17%増加している。人件費の削減と支払利息の大幅減などが営業利益増に寄与している。これからも売上高の伸びは期待できないことから、コストの削減が利益拡大を図る最大の要因になることは間違いない。企業は決して人件費を売上高の伸びよりも高くしないだろう。  

全規模全産業の昨年10-12月期の営業利益は前年比7.0%増加したが、株式に関係する大企業(資本金10億円以上)の営業利益は前年比1.4%と20134-6月期の40.6%をピークに鈍化し続けており、今年1-3月期はマイナスに転じる可能性が大きい。製造業は9.5%と2期連続のプラスだが、非製造業は-5.0%と2012年7-9月期以来9期ぶりの前年割れだ。

円安ドル高により、輸出企業は為替差益で利益を嵩上げしたことが、自動車・同附属品をみればあきらかになる。自動車・同附属品の営業利益は6.0%にとどまっているが、営業外収益等を加えた経常利益は39.5%も伸び、営業利益の約2倍の規模に膨らんだ。製造業全体でも営業利益の3.64兆円に対して営業外純収益は2.07兆円と営業利益の56.9%の規模である。為替の影響を受けない非製造業の経常利益は5.3%の前年割れだ。

 為替により純利益も拡大しているが、本業の営業利益は前年割れを危ぶむところまで低下している。為替にしてもいつまでも円安ドル高は続かない。日本の消費者物価の下落観測などから、早晩、円高ドル安に反転するとも考えられる。為替に立脚した脆い収益構造に目が向けられれば、株式は見放されることにもなりかねない。2月の東証1部の投資部門別売買状況によると、2月の最大の買い手は証券会社の自己で1兆5,550億円を買い越し、次が信託の2,839億円、外人は3番目で1,764億円、個人は1兆6,501億円を売り越した。月間で自己がこれほどの額を買い越したことが過去にあっただろうか。

関連資料サイズ
150309).pdf398.19 KB