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実体経済からますます離れる株式

 

1ドル=100円を突破した円安ドル高の勢いは止まらず、5月第3週も前週比1円64銭の円安ドル高となった。ドルは対円だけでなくユーロやポンドに対しても強く、ドル全面高の様相を呈してきている。5月の米消費者センチメント指数が予想を大幅に上回り、4月の米景気先行指数の上昇もドル買いを誘った。

1-3月期のGDP統計が出揃ったが、これをみると実質前期比では日本が0.9%と米国(0.6%)を上回っており、円買いドル売りのシグナルのようにも見受けられる。が、名目では米国が日本よりも高く、しかもデフレでマネタリーベースを異常に増やしている日本に比較すると米国経済に多少分がある。ユーロ圏は実質-0.2%とマイナスが続いており、ユーロよりもドルが選好される経済状況にある。

米国経済の緩やかな回復と極端な金融政策によって、米株価は過去最高値を更新している。急速な円安を背景に、日本株も年初来高値を更新し、2007年12月以来約5年5ヵ月ぶりの高い水準まで回復した。だが、これだけ急激な円安になれば、輸入物価の上昇は避けられず、物価上昇や国債利回りの上昇が現われてきている。

為替、株式、国債利回りのバランスは極めて微妙であり、3者がいつも居心地のよい水準を持続することは稀である。円安ドル高が進行しながら、国債利回りがいつまでも低位に安定していることはないし、利回りの上昇は株式の現在価値を引き下げることになる。

 円安が株高のシグナルとなり、円安が株価を引き上げているが、肝心の実体経済の足取りはそれほど変化していない。昨年末から日経平均株価は約5,000円上昇し、前年よりも75%も高くなっている。このような上昇率は過去にはない。信用強化と期待だけで株式は上げ足を速めているが、はたしていつまで持つだろうか。 

東証1部の時価総額を名目GDPで割った数値は90%を超えており、株式は実体経済の規模に近づいている。比率が急上昇していることは、株式が実体経済をはるかに上回る速度で拡大していることだ。東証1部の売買代金は1日当り4兆円を超える日もあり、昨年の1.2兆円に比べれば異常に膨らんでいることがわかる。さらに東電がいまだに上場されており、しかも週末の株価は626円まで回復、本来、何度も破綻している企業がいまだに存続し、株価が上昇することの奇怪さ。東証は東電と同根であり、いかさま市場を平気で運営しているのである。このような市場を市場といえるだろうか、まさに東証は博打場なのである。

 1-3月期のGDPは実質では前期比0.9%伸びたが、名目では0.4%にすぎない。2期連続の増加だが、半年で年率約2兆円の微増であり、実体経済はほとんど改善されていない。民間設備投資は5期連続の前期比マイナスであり、企業は先行き消費支出が回復するとは判断していない。事実、消費支出の動きも鈍く、家計の消費にたいする慎重姿勢は変わっていない。

 名目前期比0.4%増加したが、その寄与度は民間需要が0.3%と4期ぶりにプラスに転じた。公的需要は0.2%と5期連続となり、GDPに占める公的需要の比率は25.9%に上昇した。公的需要の拡大がなければ、昨年度下半期、日本経済はほぼ足踏み状態であったといえる。

 名目GDPは前期比では2期連続で伸びたけれども、前年比では-1.0%と前期よりマイナス幅は拡大し、3期連続の前年割れである。消費支出が0.3%の低い伸びとなったことに加えて、民間設備投資が-5.9%と落ち込んだからだ。公的固定資本形成が14.2%と4期連続の2桁増となり、寄与度は公的需要で1.0%となったが、それでも国内需要の寄与度をプラスにすることはできなかった。純輸出の寄与度は-0.8%と2010年10-12月期以降10期連続のマイナスとなり、公的需要の拡大がなければ日本経済のマイナス幅はより大きくなっていた。

 名目マイナス成長でデフレーターもマイナス1.2%と前期よりもマイナスが拡大しており、日本経済の実態はなにも変わっていないのである。そうした経済下で金融だけが騒がしくなることは、バブル以外のなにものでもない。政府・日銀主導のいかさまバブルが膨らんでいるのである。

 2012年度の名目GDPは474.6兆円、前年比0.2%の微増にとどまった。1994年度以降の19年間で下から3番目の数字だ。過去19年間で最大の年度は、消費税率を引き上げた1997年度(521.2兆円)であり、昨年度はこれを46.6兆円も下回っている。消費支出(帰属家賃を除く)も減少しているけれども、住宅や民間設備投資は1997年度に比べて大きく減少しており、民間需要だけで30兆円弱下回っているのだ。公的需要はほぼ同じだが、外需の大幅悪化もGDPの減少を大きくしている。輸出が2年連続の減少により2007年のピークから22兆円も減少してしまった。輸出の不振は世界経済が依然低迷から抜け出せず、低空飛行を続けているからだ。輸出依存の高い経済構造のままでは、自律的成長などできはしない。世界経済が好転しないことには、輸出は伸びず、成長もままならないという戦後の成長パターンからいまだに抜け出せないことが、日本経済の最大の問題なのだ。

人口減、少子高齢化が一段と進むことから、消費、設備投資、住宅は減少していくだろう。政策的にこれらの需要を刺激することはできても一時的であり、減少傾向を止めることはできない。

経産省の経済介入は実体経済を歪めるだけだ。福島原発の処理もできぬまま、原発再稼動に本腰を入れている経産省は戦前の軍隊そのものだ。原発には潤沢な資金がさまざまなルートから供給されるので、原発村の結びつきは想像以上に強固である。経産省が存続する限り、巨額の負の資産が積み上がるばかりである。