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実体経済と株式

先週、日経平均株価は2000年5月以来14年9ヵ月ぶりの高値を付けた。16日に公表された昨年10-12月期のGDPは低い伸びとなり、実体経済の足取りは依然弱いにもかかわらず、株式はきわめて好調である。安倍政権の株式への梃入れが功を奏しているのだろうか。円安ドル高で輸出企業を中心に業績は底堅く、加えて日銀や年金資金という後ろ盾を背にすれば、鬼に金棒かといったところか。だが、いくら日銀や年金資金が控えているとはいえ、株式は実体経済から無闇に離れることはできない。株式は実体経済を映したものであるはずで、実体経済とは切っても切れない関係にあるからだ。

昨年10-12月期の実質GDPは前期比0.6%と3期ぶりにプラスに転じた。プラスにはなったものの、民間最終消費支出は0.3%、住宅は-1.2%と3期連続減、民間設備投資は0.1%と3期ぶりのプラスだが微増にとどまり、国内需要は0.3%伸びたにすぎない。寄与度をみると最大は輸出の0.5%、国内では在庫が民間最終消費支出と同じ0.2%であった。

名目GDPは前期比1.1%増加したが、寄与度が最大であったのは輸出で1.0%、民間最終消費支出は0.3%にとどまる。前年比では1.8%増と7-9月期を上回ったが、民間最終消費支出は-0.5%と3期連続減、住宅は-13.1%へと悪化し、民間設備投資は1.9%と1-3月期をピークに大幅に鈍化している。成長を支えたのは輸出であり、前年比16.0%も伸び、2.5%も寄与した。

 昨年10-12月期の名目GDPは490.2兆円と2008年7-9月期以来約6年ぶりの規模である。だが、10年前の2004年10-12月期は502.4兆円、ITバブル期の2000年4-6月期は510.3兆円であり、昨年10-12月期をいずれも上回っている。民間需要は2008年4-6月期が昨年10-12月期を13兆円上回っているが、2000年や2004年とはほぼ同じ。公的需要は昨年10-12月期が最大であり、純輸出は昨年10-12月期の-12.4兆円に対してすべてプラスである。これから言えることは、民間需要の増加は期待できないということである。民間需要が伸びないのは、その8割弱を占める民間最終消費支出が伸びないからである。それでも民間最終消費支出が10年以上前とそれほど変化していないのは、IT関連への支出が拡大したからだ。耐久財や半耐久財の長期トレンドは減少しつつあることを示している。

 輸入が輸出よりも多い状態が2011年4-6月期以降続いている。昨年10-12月期も12.4兆円の超過輸入であり、これがトントンまで改善すれば、名目GDPは500兆円超になる。輸出は2008年7-9月期の過去最高に達していないが、輸入は過去最高水準にある。世界経済の伸び悩みと今は急落している原油等の資源高、さらに政府・日銀による円安ドル高政策が貿易赤字拡大に拍車を掛けた。

 名目GDPの規模はITバブル期以下であるが、株価はその当時の水準に戻ってきた。ということは実体経済に比べて株式がより評価されていることになる。先週末の東証1部時価総額を名目GDPで割った値は1.1倍となり、時価総額がGDPよりも大きくなっていることをあらわしている。1955年以降の株式時価総額・GDP比率をみると、年末ベースで1倍を超えたのは5回を数えるのみ。相当稀な現象だということになる。しかも1.1倍は1989年、1988年に続く第3位なのである。

売買回転率(東証1部、代金ベース)は昨年119.6と2004年以降11年連続で100を超えている。1980年代後半のバブル期では最高でも80程度であったが、日銀が政策金利をほぼゼロにした2000年頃から売買回転率は上昇し、2003年には過去最高を更新した。その後もとどまることなく、2013年には169.6まで上昇、今も株式は異常に回転している状況にある。まさに日本は博打に夢中になっているのだ。政府・日銀は株式市場を大博打場に仕立て上げたが、さらに博打場を作ろうとしている。が、博打場が活況を呈したからといって社会が豊かになることはありえない。仕事そっちのけで博打に現を抜かすことで経済が良くなると思っているのだろうか。むしろそうした社会は荒廃し、衰退を加速させることになるだけだ。

昨年の投資家別売買動向(東証1部)によれば、最大の買い手は信託銀行(買越額2.76兆円)であり、次が、事業法人(1.12兆円)、外人(0.99兆円)は3番目だった。今年にはいっても2月第2週まではやはり信託銀行が買越額トップ、次が自己部門、事業法人と続く。巨額の資金を抱え使い道に困っている事業法人は2011年以降4年連続の買い越しだ。2月第2週に自己は6,000億円弱の買い越しであり、高値への振付の意図が窺える。

上場企業の業績は今期も増収増益になりそうだが、伸び率はわずかなものにとどまるだろう。一部の輸出企業が円安ドル高を謳歌しているのが実態だ。昨年度の好業績を検討しても、大企業製造業・非製造業が営業利益増加額の大半を手に入れているからだ。財務省の『法人企業統計』によると、2013年度の全規模全産業の営業利益は48.6兆円、前年比21.5%の大幅増益だった。過去最高は1990年度の49.6兆円であり、後一歩のところまできた。それにしても23年も前の記録をいまだに塗り替えることができない、この現実を企業家は真剣に考えているのだろうか。

2013年度営業利益の前年度比増加額は8.6兆円だった。このうち大企業(資本金10億円以上)の増加額は7.2兆円であり、中小は1.3兆円にすぎなかった。増加額の8割以上が大企業の懐に入っていったのである。大企業営業利益増加額7.2兆円は製造業4.6兆円、非製造業2.6兆円という内訳だ。つまり、全営業利益増加額の半分以上は大製造業のものになったのである。さらに突き詰めれば、大製造業の増加額4.6兆円の1.7兆円は自動車・同附属品の懐に入り、1.7兆円の55%に当たる0.97兆円はトヨタのものなのである。全規模全産業営業利益増加額の11.3%をトヨタ一社で享受した。

2013年度の大製造業営業利益は前年度比67.2%も急増したけれども、中小製造業は6.2%のささやかな増益にとどまった。非製造業も大企業の19.5%に対して、中小は7.0%と一桁増である。

円安ドル高の恩恵を受けた企業は今期も大企業に限定されており、しかも企業の力で手に入れたものではないことを肝に銘じなければならない。棚から牡丹餅のような利益拡大をはしゃぐ株式市場はいかがなものか。円安ドル高が円高ドル安になれば、一気に利益は縮小することになる。そのようにならないとも限らない。株式、国債、為替のそれぞれの相場は互いに結びついており、きわめて不安定なものだ。3者が程良い状態にあることはめずらしいことなのである。

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