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常識が通じない政府と電力会社

6月28日、東電の株主総会が開催されたが、総会が長時間におよんだことを除けば、議案はすべて会社の方針通りに可決された。大事故を起こし、その処理にどれほどの労力と時間と金がかかるかわからない状況下にあっても、株主から提案されていた脱原発は否決され、東電は従来と変わらない原発推進路線を踏襲するようだ。

東電以外の電力会社もこれまでの原発路線を続ける決定をした。事故を起こせば電力会社だけで収束させることができず、10年単位の処理期間を要する原発をまだ造りたいともいう。使用済み核燃料の置き場さえもなくなってきているが、どうするつもりなのだろうか。いますべての原発を止めても、すでに発生した核廃物は、人類が生存しているかどうかわからないくらいの長い年月保管しておかなければならない。10万年、100万年も核廃物を閉じ込め続ける容器など造れないのだが、電力会社は歯牙にも掛けない。原爆や核廃物の怖さがわかる人であれば、原発を動かすことなど恐ろしくて、とても人間が手をだせるものではないと悟るほかない。

6月以降実施された新聞社等の世論調査をみると、脱原発路線に賛成する割合が6割から8割を占めており、現状維持は2割~3割である。こうした世論調査によってか、新聞の報道にも原発推進のトーンが弱くなってきている。

首相であればだれでも脱原発に賛成の多い世論調査を目の当たりにすれば、脱原発を争点に解散総選挙に打って出たいと考えるだろう。ドイツをはじめイタリアやスイスでも脱原発を決定したが、メルトダウンを起こし、いまももがいている日本でなぜ脱原発の大きなうねりが巻き起こらないのだろうか。戦争に匹敵するような事態に直面していながら、国民の意思が反映されずに、ずるずると原発推進の悪い破滅の道をたどることなど愚の骨頂である。大きな運動にするためには選挙は必要なのかもしれない。

電力会社や株主は社会の通念からかなりずれた考えを持っているようだ。大企業の社長も常識からのずれが大きい。「原発やめますか、続けますか」のアンケート(週刊現代6月18日号)に、大企業の社長の多くは「答えられない」、「回答を控える」と答え、自分の意見も表明できない臆病者である。主義主張のない没個性的な経営者が企業の舵取りをすることができるのだろうか。まさに幼稚であり、曖昧を良しとする本性が一転の曇りもなくあらわれている。重大な決定をしなければならないときはいつも曖昧な態度で逃げ、まわりを睥睨しながら流れに従っていく。日本経済が長期的におかしくなっているのは、このような常識からずれたリーダーの資質なのだ。

日本企業が長期的に衰退しているのは、法人税や電力不足のような問題ではなく、社会の常識からずれた無能な社長を選抜し、周辺をイエスマンで固め、彼らの独裁的な組織運営と支配構造によって企業経営がなされてきたからである。だから、人、物、金をうまく活用できず、延いては企業の活力が失われていくことになる。問題は企業の外部にあるのではなく、企業内部にあり、自己崩壊を起こしているのだ。

廃炉までの道筋がまったく立たず、放射能を撒き散らしていながら原発をまだ続けたいとはどういう神経の持ち主なのだろうか。放射能の危険に曝されている人、放射能を避けるために非難している人の心痛は計り知れないが、『体の奥深くで鈍痛が続いている感覚』(和合亮一)を覚える人もたくさんいるだろう。

痛みを痛みとして感じない東電や国の非人間的な体質は、一億玉砕を掲げ戦争に突き進み、凄惨な結末に導いたことを繰り返そうとしている。放射能被害を受けるのは東電や国の原発推進者ではなく、大多数は一般の人たちである。戦争被害者も戦争推進者たちではなく、大半は赤紙一枚で召集された人たちだ。原発事故が発生しても、電力会社は生き延び、被害を被るのは原発周辺地域の住民である。原発を動かすのであれば、電力会社の本社は原発に隣接させるべきだ。

 東電同様、東証も官僚以上に官僚的な組織であり、そのような組織が株式市場を運営しているとは摩訶不思議といえる。実質的に破綻を繰り返しているような公的管理の東電をいまだ上場させ、市場経済を標榜しているのも東証らしい。だが、企業の自由行動を前提に、利益を追求するという枠組みから逸脱した企業の上場は、市場の理念とは相容れない。電力会社にとどまらず、総括原価主義を採用しているガス会社なども利益が補償されているのであるから、上場にそぐわない。しかも、東電は破綻した企業であるから、上場などとんでもない。東電が上場されるのであれば、上場廃止に該当する企業などでてこない。東京市場の血の巡りの悪さに輪を掛けることになり、市場の活力は失われていくだろう。市場の胴元である東証が市場の掟を破り、自ら市場を破壊しているといえる。

東電は日経平均株価の採用銘柄でもあり、株式市場への影響は大きいけれども、いまだに東電は日経平均株価の算出に採用され続けている。企業として自律することが出来なくなったのだから、日経は採用銘柄から速やかに削除しなければならない。いつまでも異常な状態を続ければ、株価の信用問題に発展し、市場は歪み、歪みを元の状態戻すには、膨大は時間と金が掛かることを忘れてはならない。