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戦前よりも生命を脅かされる二大政策

日経平均株価は2週連続増で約600円上昇した。自民党の安倍総裁が金融緩和を無制限に進めるという発言により、対ドル・ユーロで円安が進行しているからである。株価は大幅に値上がりしているが、商いはさほど膨らまず、大半の市場参加者は様子見の姿勢を取っているようだ。日本経済の現状を直視すれば、とても株式を買うという気持ちにはなれないのが正直なところではないか。鉱工業生産は低下し続けているが、在庫は思うように捌けず、さらなる生産の削減に迫られている。売上高が減少し、生産水準を引き下げる過程では収益は大きく落ち込む。収益の悪化と株高によって、株価収益率は上昇しており、株式は割高だ。

市場参加者が先行きどのように見通すかを見通すこと、さらにその先を見通すという美人投票で市場は成り立っているが、所詮、よって立つ前提は脆く、いつ梯子が外されるかわからない。まさに生き馬の目を抜く相場といえる。

危うい材料について行くことが相場の醍醐味ともいえるが、騙しあいの要素も多分にあるため相場の転換点の見極めは至難の業だ。おそらくたいていの機関投資家といわれている人たちもこのような相場の波に上手に乗ることはできない。つまり、売り買いのタイミングを逸してしまい、身動きが取れなくなるのが落ちである。

ファンダメンタルズだけを頼りに市場に参戦しても些細な材料の出現に、相場は逆方向に動いてしまうことが間々ある。現状もそうだといえるが、ついつい株価の上昇に釣られて当初の目論見とは違う決定をしてしまう。

とはいえ、最終的には株価はファンダメンタルズには逆らえず、落ち着くべきところに落ち着くのである。国内需要が弱く、そのうえ輸出が不調であれば、日本の製造業にとって数円の円安など焼け石に水なのである。その円安も持続するかどうかはなはだ疑問である。米国経済は依然病気から立ち直るところまでは回復していない。主力の個人消費支出はもたつき、生産の足取りは重く、米国政府も輸出を伸ばし、経済を持ち上げたいところだ。

4-9月期の日本の対米輸出は前年比16.6%伸びたが、輸入は2.5%と輸出の伸びを大幅に下回ったため、2.4兆円の貿易黒字を計上することができた。アジア全体の黒字(2.2兆円)よりも大きく、国別ではもちろん最大である。4-9月期は3.2兆円の貿易赤字となったが、対米黒字がなければ赤字は6兆円近くまで拡大していた。

それほど、今の日本にとって対米黒字はありがたい半面、米国にとっては疎ましいことなのである。為替が円安ドル高に振れることは米国の対日赤字が一層拡大することでもある。基本的な米国の為替政策は円高ドル安だと思う。このまま円安ドル高が続くことになれば、米国はそれを阻止するために、日本になにか圧力を加える行動を取るだろう。米国は国益を守ることには最大限の力を注ぐからである。

10月の日本の貿易赤字は5,489億円と前年の約倍に拡大した。だが、対米では4,164億円の黒字である。国別では最大であり、中国の4,065億円の赤字と対照的である。オーストラリアや中東の国を抜き中国が10月、最大の輸入超過国になった。

安倍総裁の発言以降、株式や為替は大きく動いたが、国債利回りにはほとんど変化がない。日銀の国債直接買取など勇ましい発言のわりには国債相場はおとなしい。国債の大量発行が予想されれば、国債価格は下落するはずだ。国債市場は、安倍発言は妄言にすぎないと無視しているのだろうか。株式や為替の材料にはなったけれども、国債はそうならなかった。あるいはこれから反応するのだろうか。

 国債相場は需給関係では決まらない。基本的は期待収益率や短期金利の見通しで決まる。だが、一時的にでも、妄言で国債相場が急落することにでもなれば、首相の首をすげ替えるくらいでは済まされない。金融機関は巨額の評価損の計上を余儀なくされ、自己資本比率を維持することができなくなる。そうなれば、信用不安により、円はますます売られ、株式も暴落することになるだろう。

言うなれば、相場はナイフエッジの上を歩いているようなもので、極めて危うい状態に常にあることを忘れてはならない。なんとか折り合って価格が成立しているところに、政治屋が妄言を発することで、ナイフエッジから転落してしまうことになる。相場が崩れ、想定外の値段が付く。一旦、崩れてしまった相場が立ち直るには、長期間を要し、その間経済の混乱が続き、経済的損失は計り知れない。無知無謀な政治屋の不用意な発言で国民はとほうもない被害を被ることになる。

金融関連発言では直接、生命を奪われることはないが、国防軍が設立されれば国民の生命が直接危険に晒され、奪われることになる。英雄気取りで国防軍の設立を目標にしているが、それで国民の生命と財産を守ることができるのであれば、なぜ第2次世界大戦で日本は無条件降伏に追い込まれたのか。第2次世界大戦の無条件降伏は、軍隊では国民の生命・財産を守ることができないことを証明している。いまでも物騒な自衛隊を国防軍に格上げしても、日本を守ることはできない。日本がより物騒になるだけである。

これまでの凄惨な戦争を凄惨だと思わない人間がまだまだ世の中にいるが、右派の政治屋の発言はそういう人たち煽ることになる。子供たちには「いじめ」は良くないといいながら、大人は「国防軍」を作るという、なんという矛盾であろうか。人殺しの集団や兵器を作るのではなく、音楽や芸術に金を使えばなんと楽しく愉快な世の中になることか。原発に加えて国防軍という、第2次大戦以前にもなかった生命の危機に陥れる二大装置が作られつつある。 

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