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政府の政策で作られた消費不振

日経平均株価は5週連続して続伸し、1996年11月以来約21年ぶりに2万1,000円を上回った。報道機関の衆議院選調査が、いずれも自民党が公示前勢力を維持するとの報道により株式は勢いを増した。従来の大幅に議席を減らすという見方とは反対の調査結果となったからだ。9月最終週、10週ぶりに日本株を買い越した外人は10月第1週、6,589億円と2015年4月第2週以来約2年半ぶりの大幅買い越しを演じ、おそらく第2週も積極的に購入したのだろう。株式市場関係者は自民党議席獲得が堅調であれば、政治の企業への対応も変わらず、売上高が低い伸びであっても、労働分配率を引き下げ、利益率を高くできるという枠組みは維持されると読んでいる。自民党が勝つことは、株式買いだと捉えているのだ。
欧米の主要株価指数が過去最高値を更新しており、それに比べれば日本株は戻ってきているとはいえ、依然過去最高値の54.3%の水準にすぎないことが、強気筋を支えている。日経平均株価は昨年末比10.7%上昇している一方、NYダウは15.3%、ナスダック総合にいたっては22.7%も上昇している。こうした出遅れ感も外人の日本株買いの背景なのである。自公体制が続けば、日銀や公的資金の株式買いも引き続き実行され、大崩れはないと予想しているように思う。
今のところ昨年に比べて円安ドル高であり、日本の輸出額は8月、前年比18.1%と2ヵ月連続の2桁増と好調だ。10月頃までは輸出は円安ドル高の恩恵を受けるだろう。輸出が好調であれば生産も強く、8月の鉱工業生産指数は103.6(2010=100)、前年比5.4%伸びている。鉱工業生産指数と株価は概ね連動している。鉱工業生産指数は昨年2月に底打ちし、回復しているが、株価はやや遅れて昨年6月を底に上向いている。
2008年の金融危機後、鉱工業生産は急低下し、その反動で反発はしたけれども、回復力は弱く、生産指数の最高は今年4月の103.8である。今年4月の生産指数を金融危機以前の生産のピーク(2008年2月の117.3)に比べると11.5%も低い。1990年以降2000年のITバブルまで生産指数は3回ピークを付けたが、いずれも109前後であった。8月の生産指数は過去9年間で最高に近いが、それでもITバブルまでのピークに比較すると5%程度下回っている。
生産水準はそれほど高くないが、製造業の当期純利益は過去最高を更新しているのである。原価や販管費、さらに支払利息、不動産賃貸料、法人税などの負担減も当期純利益の拡大に寄与している。だが、労働分配分が増加しないで、利益だけが増加していくことが経済的に持続可能であろうか。
労働分配分が変わらなければ、国民経済を構成する最大の支出項目である消費は伸びない。低労働分配により、日本経済は名目GDP(2016年度、537.9兆円)に占める民間最終消費支出(301兆円)が56.0%と低く、民間企業設備(82兆円、GDP比率15.3%)や公的需要(131兆円、同24.5%)への依存度が高い。2012年度の民間最終消費支出のGDP構成比は58.9%であり、2016年度は2012年度比2.9ポイントも低下している。
因みに、米国の2016年の名目GDP 18.6兆ドル(1ドル=112円で2,083兆円、日本の約3.9倍)に占める個人消費支出 12.8兆ドル(同1,435兆円、日本の4.7倍)の比率は68.8%と日本よりも12.2ポイントも高い半面、民間設備投資は12.4%、政府支出は17.5%といずれも日本を下回っている。
政府支出3.2兆ドル(同358兆円)のうち7,289億ドル(同81兆円)は軍事費であり、これを除けば政府支出の割合は13.6%となる。日本の防衛費は名目GDPの約1%だから、これを公的需要から除いて、米非軍事政府支出と比較すると日本の公的支出は米国よりも約10ポイント高いことになる。
日本は低消費国だから民間設備投資や公的支出を拡大しなければ、国民経済を維持できないのだ。米国並みに、公的支出の割合を引き下げれば、日本の名目GDPは38兆円減少する。いずれにせよ、低労働分配が見直されないかぎり、消費支出は増加せず、需要不足は公的部門、民間設備投資さらには純輸出で穴埋めせざるを得ない。日本経済を消費型の経済構造に変えていくには、今の所得分配を大幅に変更する必要がある。
2016年度の「一般会計決算概要」によれば、歳入は102.7兆円、そのうち38兆円は国債発行による借金である。税収は55.4兆円、その内訳は所得税17.6兆円、消費税17.2兆円、法人税10.3兆円である。2012年度の税収は43.9兆円と2016年度よりも11.5兆円少なかった。2011年3月の東北大震災により経済活動が低迷したため、2012年度の税収も前年度を1兆円ほど上回っただけである。2016年度の所得税は17.6兆円、2013年1月の復興特別所得税の影響により、2012年度比3.7兆円の増加である。2014年4月に引き上げられた消費税は4年間で7兆円弱の大幅増だ。一方、法人税は2016年度までの4年間で0.6兆円の増加にとどまっている。所得税や消費税が引き上げられながら、2012年以降、法人税率は引き下げられたからだ。
政府は家計の増税、法人の減税という消費を冷やし、企業を潤す税制を推進している。こうした家計負担増政策では消費マインドは改善するはずがない。政府自ら家計を叩く政策を採りながら、消費が伸びないという。国民を愚弄しているとしかいえない。
消費が低迷する、それを補うのは主に公的支出であり、公的部門が日本経済のカギを握っているといえる。政府は公的部門の存在感を保つことを重要な政策にしているのだろうか。131兆円もの巨額の公的資金を支配し差配する権利を縮小することなどとんでもないことだと与党は考えているのだろう。国の借金など、消費税率を引き上げれば、解決できるではないかというのが本心かも。政府にとって消費の低迷など眼中にないのかもしれない。

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