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新型コロナと日米経済

新型コロナの感染者が急増してきた。昨年12月20日の新規感染者数は100人に満たなかったが、今年1月1日には457人、8日は8,480人へと急拡大している。クリスマスや年末年始で人の移動が活発になり、大人数での会食等も増えたことが、新規感染者の急拡大を招いたのだろう。日本のワクチン接種はすでに全人口の8割弱に達しており、ワクチンが有効であれば、新規感染は抑制されるはずだ。

欧州でもワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、新規感染者数が最高を更新する様をみれば、ワクチンへの信頼は失われていくのではないか。何度、ワクチンを接種しても、変幻自在のウイルスは、人体に侵入してくるのだろう。むしろ、ワクチン接種によって、ウイルスは生き延びようと変異を繰り返し、感染が収束にむかうことなく、感染の波が次々に押し寄せてくるのではないだろうか。ウイルスをやっつけることはできないのだ。弱毒化するまで辛抱する以外に採るべき方法はないのかもしれない。

米国の新型コロナ感染者数は6千万人弱、全人口の17.9%が罹患し、死者は83万人を超えている。然るに、日本では感染率は1.4%、死者は約1.8万人と米国に比較すると極めて軽いと言える。理化学研究所によれば、日本人の約6割が「ある白血球の型」を保有しているが、欧米人は僅かしか保有していない。そのことが、日本人が新型コロナに罹りにくいのではないかという研究結果を発表した。やはり、何か特有のものが日本人には備わっているのかもしれない。

すでに日本だけで174万人もの感染者が発生しているのだから、疫学的な研究が進展しても不思議ではない。罹りやすい人とそうでない人の違いなども明らかになるのではないだろうか。罹りにくい人は免疫力が強いのだが、人によってその違いはどこからきているのかなど、解明してもらいたい。

 

新型コロナの感染拡大が日本よりも強い米国が、経済回復力では勝っている。昨年12月14日~15日開催のFOMC議事要旨では、予想よりも早期の利上げと資産縮小が必要になる可能性があると述べ、米債利回りは1.76%と2020年1月以来2年ぶりの高水準に上昇した。FRBは早期利上げを打ち出しているが、それでも本年中のFFレートは1%には届かない。新型コロナを物ともせず、実体経済は拡大しているけれども、利上げは牛歩ペースなのだ。これでは利上げはするが、実体経済への影響はほとんどないだろう。株式などの金融経済への影響は利上げ幅が年末、1%未満であれば、ほぼ織り込んでしまったのだ。

12月の米雇用統計によれば、非農業部門雇用者は前月比19.9万人増加し、2カ月連続で増加数は縮小した。雇用したい人を雇用することが難しくなっているのかもしれない。昨年12月の非農業部門雇用者は、2020年2月のピークを357万人下回っているが、過去の雇用回復期よりも戻りは速く、失業率も3.9%と2020年2月以来、1年10カ月ぶりに4%を下回った。

2008年のリーマンショックでは非農業部門雇用者が過去のピークを超えるには6年4カ月を要した。今回のように短期間で雇用が急回復すれば需給がうまく嚙み合わず、賃金を引き上げざるを得なくなる。時間当たり平均賃金は12月、前年比4.7%と前年同月が5.5%も伸びていたが、それほど鈍化しなかった。

平均賃金がこれほど伸びているから、個人消費支出も11月、前年比13.5%も増加することになるのだ。個人消費が強いことが、FRBの想定以上に物価を押し上げる要因になっている。11月の消費者物価指数(CPI)が前年比6.8%も上昇していながら、0.25%の利上げを繰り返すのでは、とうてい目標とする2%に抑え込むことはできない。

CPIが6.8%も上昇しても3カ月物金利は0.23%、10年債の利回りは1.76%とCPIの伸びを大幅に下回っている。インフレだと金を借りる債務者が有利になる。物価の上昇によって上昇分、金の価値が下がり、返済しやすくなるからだ。11月の米銀行信用は前年比8.0%伸びており、物価が上昇するにつれて、さらに銀行信用は拡大していくだろう。

翻って、日本の賃金はどうか。『毎月勤労統計』によれば、11月の現金給与総額は前年比横ばいであり、昨年6月以降6カ月連続で1%未満だ。2019年と2020年は0.4%、1.2%それぞれ前年を下回ったが、それでも昨年の伸びは微増にとどまるだろう。2018年は1.4%増だが、2017年までの4年間は1%未満で2013年はマイナスだった。日本の賃金は長期間ほぼ据え置きの状態であり、これからも今までと同じように、賃金の横ばいは続くと予想しているのだと思う。賃金が伸びなければ、購入意欲は湧かず、先行きのことを考えると、できる限り貯蓄に振り向けたいのだ。

『家計調査』によると、昨年11月の勤労者世帯の消費支出は前年比-0.4%と2カ月ぶりのマイナスである。一方、貯蓄は14.0%と4カ月連続で増加しており、消費よりも貯蓄をより選好している。新型コロナの感染が拡大していけば、消費の抑制と貯蓄増の傾向はさらに強まるだろう。

日銀の『預金・貸出動向』によれば、昨年11月の銀行計の貸出は前年比0.5%、都銀に限れば-1.1%と貸出は低迷している。家計も企業も借金したくないのだ。原油高でエネルギー価格は高騰しているが、生鮮食品・エネルギーを除く物価は昨年11月、前年比-0.6%と依然マイナスなのである。基本的に物価は下がり気味であり、モノの価値が低下する一方、金の価値は上がり、借金は先行きより重くなる。

MB(マネタリーベース、平均残)は12月、657兆円、前年比50.5兆円増の8.3%と高い伸びだが、増加額の93.1%の47兆円は日銀当座預金なのだ。3業態の預金は11月、4.3%増加していることから、貸出や有価証券の購入以外の資金の大半は日銀に向かっているのだ。

米国はインフレで貨幣価値が低下している半面、日本はデフレ気味で貨幣価値が上昇しつつある。言い換えれば、ドルの価値は下落し、円の価値は上昇しているのだ。米国の金利は上昇傾向にあるが、日本のゼロ金利は永遠に続きそうだ。昨年1月から11月までの米貿易赤字は7,854億ドルと2020年の6,766億ドルを上回り、年間では過去最大になるだろう。他方、日本の貿易収支は原油高によって、昨年11月まで4カ月連続の赤字となり、1月から11月まででは8,835億円の赤字である。米国のモノの赤字額は昨年、1兆ドル超は確実であり、日本の赤字額とは比較にならないほど巨額なのである。巨額のドル散布が世界経済を潤してはいるが、ドルの価値を低下させていることも間違いない。金利差だけを捉えれば円安ドル高だが、物価や貿易収支などを勘案するとドル独歩高が持続する可能性は低いのではないか。

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