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新型コロナや雇用統計からは分からない日米経済の違い

3月の米失業率は前月比0.2ポイント減の6.0%と昨年4月の14.8%をピークに低下しつつある。だが、新型コロナ以前の水準に比べると2.5ポイントも高い。労働参加率は低く、非労働力人口は前年よりも340万人多い。失業率は白人の5.4%に対して、黒人やヒスパニックは9.6%、7.9%と高く、学歴別でも大卒は3.7%だが、高卒などでは3ポイント以上も高い。また、失業期間が27週以上の長期失業者は増加しており、前月比では昨年5月以降11カ月連続増、前年比では300万人以上も増加している。

3月の非農業部門雇用者は前月比91.6万人増加したが、新型コロナ以前の2020年2月(1億5,252万人)と比べると840万人少ない。非農業部門雇用者は2020年2月をピークに同年4月には1億3,016万人へと2カ月で2,236万人も激減したが、今年3月には1億4,412万人へと回復し、底からは1,395万人増加した。

ただ、ピーク比では依然840万人少なく、今後、雇用をいかに回復させていくかが、米国経済の抱えている最大の課題といえる。昨年5月から8月までの4カ月間の非農業部門雇用者は1,098万人の急増をみたが、9月以降、今年3月までの7カ月間の増加数は297万人へと増加ペースは鈍化しており、1カ月平均では42.4万人に過ぎない。今後、非農業部門雇用者が月42万人のペースで回復すると仮定すると、2020年2月の水準に到達するには20カ月を要することになる。

日本の雇用状況をみると、2月の失業率は2.9%と前月比横ばいである。2019年12月の2.2%を底に昨年10月には3.1%まで上昇したが、やや低下しつつある。雇用者は昨年3月の6,047万人が最大であり、3カ月連続減少して同6月には5,923万人となり、この間の減少数は124万人である。以降、雇用は回復に転じ、今年2月は6,001万人と昨年6月からは78万人増加し、最高であった昨年3月の99.2%まで戻している。

一方、3月の米非農業部門雇用者はピークの94.5%であり、日本の戻りよりも遅い。ただ、ピークからの減少率が米国の14.7%に対して日本は2.1%と比較にならないほど小幅であり、99.2%まで戻っていることだけから雇用情勢を判断することはできない。

2月の日本の失業者数は194万人、3月の米国は971万人であり、米国は日本の5倍である。失業者数・総人口比率は日本の1.55%に対して米国は2.94%と日本のほぼ倍だ。米国の雇用は日本のように固定化しているのではなく流動的であり、自発的に仕事をやめ、仕事を求める人が多く、失業者は日本よりも多いのである。3月の2.94%は高いけれども、日本の水準にまで低下することはなく、当面は2.0%を目指すことになるだろう。

それにしても、日米の雇用状況は大きく異なり、雇用だけを取り上げて、経済を比較すると、日本経済が米国経済よりも良い状況にあって当然なのだが、現実は逆なのである。新型コロナの感染者数や死者を比較しても米国は3,108万人、56万人だが、日本は50万人、9,327人と桁違いに少ない。人口に占める感染者数は米国の9.4%に対して日本は0.4%であり、新型コロナの経済への影響も米国がより大きいはずだが、経済は米国がはるかに強いのである。

経済指標からも米国経済の好調ぶりが窺える。3月の総合PMIは日本の48.3に対して米国は59.1、3月のISMも製造業64.7、非製造業63.7と好不況の目安である50を大幅に上回っており、非製造業は統計開始以来なのだ。雇用はまだ回復途上にあるけれども、景況指数は絶好調を示している。この景況感の格差は何に起因しているのだろうか。

2月の総務省『家計調査』によれば、消費支出(二人以上の世帯、勤労者世帯)は前年比7.4%減少した。閏年の影響がマイナス幅を大きくしているが、それでも家計は依然、財布の紐をきつく絞ったままなのである。昨年10月、11月は2019年10月からの消費税率引き上げの反動でプラスになったが、これを除けば昨年3月から消費支出の前年割れは続いている。給付金のような一時的な所得の影響がなくなり、可処分所得は昨年11月から前年を下回っている。こうした所得の減少も消費支出に悪影響を及ぼしてと考えられる。可処分所得の減少にもかかわらず、2月の貯蓄率は37%と前年より4.4ポイント上昇した。要するに、家計は消費に慎重なのであり、できる限り貯蓄するという行動を採っている。日本経済不振の最大要因は家計がお金を使わないことなのである。

新型コロナの死者が日本の感染者数よりも多い米国の消費は2月、前年比-0.6%と2カ月ぶりのマイナスになったが、小幅な減少にとどまり、消費は底堅い。消費が底堅いことが、設備投資にも表れており、2月の資本財受注(非軍事・航空機除く)は前年比8.5%増加し、モノの輸入は10.3%も増加した。

米国も貯蓄をしているが、2020年でも16.3%であり、日本(38.7%)の半分以下である。2000年以降2019年までは3.1%(2005年)が最低で最高は8.9%(2012年)である。2020年の貯蓄率は過去にない異例なのだが、日本では同期間、最低でも24.7%(2014年)と2020年の米国よりも8.4ポイント高い。米国では異常な貯蓄率なのだが、日本では、さらにそれを上回る貯蓄率が常態化している。日本の貯蓄率は2015年以降連続して上昇しており、2018年は30.7%と30.0%を突破し、2019年は32.1%へとさらに上昇し、消費不況の下地は出来上がっていたのである。日本は所得の三分の一以上を貯蓄する貯蓄大国なのだ。

なぜこれほど貯蓄に熱心なのだろうか。世帯主年齢階級別貯蓄・負債現在高(『家計調査』、二人以上の世帯、2019年)によると、世帯主が50歳未満の世帯の純貯蓄(貯蓄―負債)はマイナスになっており、少しでも負債を減らし、純貯蓄をプラスにしたい気持ちが、貯蓄率を高水準に張り付けているのではないだろうか。超高齢化・少子化、人口減で将来の年金が減少すること、それに伴い子供に頼れないといったことも若い時に蓄えておきたい要因になっている。

50~59歳からの純貯蓄は1,052万円のプラスになり、60~69歳は2,080万円、70歳以上では2,183万円と年齢層が上がるにつれて純貯蓄は増加している。しかも60歳以上の世帯は総世帯の約5割を占めているのだ。

純貯蓄がマイナスであれば、消費意欲が強くても、消費を自制せざるを得ない。純貯蓄がプラスの高齢者世帯では消費意欲は衰え、消費は減少していく。高齢者層に偏在している貯蓄の構造が、貯蓄が消費に結び付き難くしているのだ。

この状態が続けば、日本の超過貯蓄はいつまでも解消されず、貯蓄は主に預金として金融機関に預けられ、預金の多くは日銀当座預金となり、日銀の国債や株式の購入資金になる。国は国債の大規模増発をし、超過貯蓄状態の解消を図る。ゼロ金利や所得一定でも日本の家計は高貯蓄の行動を採っているが、そのことが経済の公的部門への依存度を一層高めているのである。

※次号は休みます。

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