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日本の企業利益は輸出次第

米株は過去最高値を更新し続けている。円高にもかかわらず、米株高に支えられ日本株も高止まり状態である。ユーロは対ドルで約3年ぶりの高値である。ECBが政策変更を示唆しているからだが、それほどユーロ圏経済は持ち直しているのだ。EU28の失業率は昨年11月、7.3%と約9年ぶりの水準に低下した。最も低いチェコ(2.5%)から最高のギリシャ(20.5%)まで開きは大きいが、全体としてみれば、改善は著しい。輸出は順調に拡大し、昨年7-9月期のEU28の経常収支は694億ユーロ、前年比54.9%も増加した。好調な輸出を追い風に11月の鉱工業生産は前月比0.9%、前年比では3.5%伸びており、生産は高い水準を維持している。経済活動は強くなっているが、昨年12月のEU28のHICPは年率1.8%とECBの目標を下回ったままである。

ECBは今月から債券購入額を縮小するが、今年中には利上げに踏み切る可能性が高い。HICPは0.2%から4.5%まで幅はあるが、1.0%未満と3.0%超はそれぞれ3カ国にすぎない。ゼロ金利はユーロの実体経済を反映しておらず、金融緩和はあきらかに行き過ぎている。2008年以降の株式や不動産バブルを思い起こすならば、早急にゼロ金利をやめなければならない。昨年4-6月期のEUの住宅価格は前年比4.4%上昇しており、なかでもチェコ、アイルランド、リトアニアの上昇率は10%を超えている。

ECBの利上げ観測が浮上するとユーロはさらに上昇するだろう。ユーロ高に連れて円も対ドルで大幅に高くなるのではないだろうか。ECBの金融政策の変更が実施されれば、日本だけがゼロ金利国となり、円安に向かいそうだが、円安誘導のための金融緩和の効果は出尽くした。すでに、国債買い入れ額は大幅な縮小を余儀なくされており、国債購入は限界に達しているからだ。

米株高や企業収益の拡大などが日本の株高要因として考えられるが、企業収益拡大の主因は輸出なのである。2008年の金融危機により収縮した輸出は2009年から回復に転じ、2016年の半ばまで約1年半の低迷期間はあったが、また盛り返し、昨年11月の輸出額(金額、季節調整値)は6,851億円と2008年9月以来9年2ヵ月ぶりの高い水準だ。他方、昨年11月の輸入は6,487億円と2015年9月以来2年2ヵ月ぶりであり、輸出ほど遡ることはできない。輸入が輸出ほどの勢いがないということは、国内需要はそれほど強くないということだ。内需は依然弱いが、世界経済の拡大に伴い、日本の輸出は伸び、輸出企業はその恩恵を享受しているのである。

IMFの予測によれば、世界の貿易(数量)は2016年、前年比2.4%と2年連続で低下したが、昨年は4.2%と2011年以来6年ぶりの高い伸びが見込まれ、今年も4.0%と好調を維持する見通しである。もしIMFの予測通りに世界貿易が堅調に推移するならば、日本の輸出の伸びも期待できる。そして、市場参加者は企業利益も引き続き高水準を維持でき、株高も可能なのだというシナリオを描いているのではないか。

11月の『景気動向指数』が公表されたが、先行、一致指数、前月比2.0%、1.5%それぞれ大幅に上昇した。特に、一致指数は118.1(2010年=100)と2007年10月(118.7)以来約10年ぶりの高い水準を記録し、輸出の9年2ヵ月ぶりに類似している。一方、先行指数は108.6と2014年1月以来3年10ヵ月ぶりであった。一致指数の採用系列9本のうち4本が鉱工業生産指数関連であり、輸出は採用されていないが、この景気一致指数と輸出(季節調整値)との相関関係は極めて強く、輸出をみれば景気を掴めるといってよいだろう。さらに輸出は株価のピークやトラフにも対応しているのである。

円安ドル高の輸出への影響も無視できないものだが、為替は輸出の決定要因ではない。もっとも重要な要因は世界経済が強く、貿易が活発になるかどうかである。昨年11月の日本の輸出は前年比16.2%と7月以降5ヵ月連続の2桁増だ。半導体製造装置、金属加工機械などの一般機械、半導体等電子部品、通信機などの電気機器が好調である。地域別では中国向けが前年比25.1%と4ヵ月連続して25.0%超伸びている。

2016年の米国の輸出入(財とサービス)は前年比-2.6%、-1.9%といずれもマイナスだったが、昨年1月~11月の輸出・輸入は前年比5.6%、6.7%のプラスであり、昨年11月だけを取り上げれば、8.3%、8.4%と堅調である。ただ、昨年1月~11月までの米貿易赤字額は5,135億ドルと前年比11.6%も拡大している。皮肉にも、自国第一主義を掲げ輸出を拡大し、輸入を制限するトランプ大統領が就任してからも米貿易赤字は拡大しているのである。

2016年の米国の財輸出入は6,939億ドルの赤字であったが、2017年1月~11月の赤字は7,451億ドルとすでに2016年の赤字額を上回っている。入超額最大国は中国だが、昨年1月~11月の対中赤字額は3,444億ドルと2016年比7.9%増である。特に、情報通信機器の赤字額が大きく、昨年1月~11月では1,489億ドルの赤字を計上しているが、その82.4%に当たる1,227億ドルは対中赤字である。スマートフォンを中心とする情報通信関連の製品・部品は中国に頼らざるを得ない体制になっており、いくらトランプ大統領が声高に叫んでも、まったく輸入は減らない。中国からの輸入を制限すれば直ちに行き詰るのは米国最先端企業なのである。

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