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日本の最大の問題は人口減

厚生労働省の『人口動態統計月報』によれば、昨年8月(当月を含む過去1年間)の出生数は前年を下回り、死亡数は上回り、自然減数は61万人に増加した。自然減数は前年同月よりも10万人、2019年では12万人も拡大している。婚姻件数は52.6万件、2019年比では6.5万件も減少しており、先行き出生数はさらに減少するだろう。

総務省の人口推計によれば2021年12月1日現在の総人口は1億2547万人、前年比0.49%(-62万人)減少し、27年前の1994年(1億2526万人)以来の水準に低下した。総人口のピークは2010年(1億2805万人)であり、そこから2.0%減少している。15歳~64歳までの生産年齢人口は7449万人と2000年比1189万人も減少し、1973年(7410万人)以来である。ピークは1995年(8726万人)で、生産年齢人口の減少は総人口よりも15年早く始まり、しかも急速に進行しているのだ(2021年・2010年比=0.913)。15歳未満は1475万人、2000年比375万人減であり、ピークの1954年(2988万人)から半減した。他方、65歳以上は3624万人、2000年比1420万人増加し、総人口の28.9%を占めている。男女別の65歳以上の構成比は、男の25.8%に対して女は31.8%と男女差は広がっている。

日本で今、何が問題か、と言えば人口減と少子高齢化だ。岸田首相の唱える「新しい資本主義」は、人口問題を取り上げていない。そこで「人重視」というが、あくまでも経済的観点からであり、人口減の原因にメスを入れてはいない。人口減のなかで「人重視」といっても、表面を繕うだけであり、日本の構造的問題には少しも踏み込んでいないのだ。

人口減と少子高齢化は今に始まったことではなく、数十年前からの現象なのである。政治はいまもそうだが、国の根幹に係る人口問題をぞんざいに扱ってきた。人口減による内部問題がより深刻になってきているにもかかわらず、他国からの攻撃といった外部などの敵を想定し、軍事費の拡大を図っている。どのような組織でもそうだが、外部の問題によって崩壊するケースよりも、組織内部の問題によって行き詰まり、破綻することのほうが多い。

食料自給率(カロリーベース)を取り上げても、2020年度は37%と過去最低水準である。2020年に策定された基本計画では、2030年度に45%を目標としている。1994年度(46%)の水準に戻す計画だが、簡単に達成できる数値ではない。食料だけでなく、完全に輸入に依存している原油や液化天然ガスなど、いずれが国内に入らなくなっても、日本経済は即座に立ち行かなくなる。つまり、日本経済は砂上の楼閣といえるのだ。事が起きれば、見下しているアジア諸国よりも、事態は深刻になり、不穏な社会になるのではないか。

政府は国民をこうした内部の問題から逸らし、外部の問題があたかも切羽詰まったかのように捏造し、国民の眼を外部の問題に向ける。こうした事実を歪曲する方法は、過去にもしばしば取られてきた。岸田首相は「新しい資本主義」といった大層な問題を提示したけれども、真の問題はそこではない。ごく基本的な労働者の権利を守れば、現実の多くの問題は解決されるだろう。

いまだに時間外労働を月100時間未満まで許容するようでは、まともな生活を送ることはできない。有給休暇や育児休暇も法律ではっきり決めて、全員に取得を義務付けるべきだ。8時間労働を厳格に適用し、家庭でもゆとりを確保できなければ、賃金増だけでは、家庭生活、なかでも子育てはできない。金に加えて時間が必要なのである。このような労働者の権利はどのような社会でも認められなければならないのだ。難しいことを言わなくても、法律さえ制定すればできることなのである。

所得格差にしてもかつてのように高い累進所得税に戻せば、相当格差は解消されるはずだ。労働分配分を引き上げるには、経営に対抗できる組合を制度化しなければなるまい。企業統治を厳格にするためにも労働組合を経営に参加させる仕組みを作る必要がある。所得税の累進性と法人税を引き上げるならば、消費税を引き下げることが可能になろう。税制改革によって消費を刺激し、消費を伸ばすことによって、経済を動かすべきである。

若年層の減少が深刻なことは、国の活力が失われていくことでもある。活力だけでなく、想像力、発想力も若者の絶対数が減少すれば、それなりに衰えるのではないだろうか。日本が、これからも原材料を輸入し、それらを加工し、輸出するのであれば、だれもが作れない製品やサービスを生み出さなければならない。そのようなモノやサービスのアイデアを思いつくのは高齢者ではなく若い人だと思う。少子化に歯止めを掛けなければ、新技術や新製品を作り出すこともできなくなる。

2020年の名目GDPを2000年と比較すると0.5%とほぼ横ばいである。2019年との比較でも4.1%にとどまり、ほとんど伸びていないと言ってよいだろう。一人当たりの名目GDPをOECD加盟国で順位付けると、2020年は19位だ。2000年は4位だったが、2006年には18位に後退し、2012年には10位まで挽回したものの、その後は18位から20位に位置している。

2000年にはITバブルが破裂したが、ITへの期待は大きく、経済の根幹を成す分野だと言われている。が、情報通信産業の名目GDPに占める割合は2000年の5.0%から2020年5.1%と構成比は不変なのである。情報通信産業は日本経済を牽引することはできなかったといえる。過去20年間、日本経済に貢献しなかったのであれば、これからも日本経済への寄与は期待できないと想定しておくべきだ。物事をITに置き換えることで、余分な仕事が増えるだけであり、ITは多くの付加価値を生み出すことはできないのだ。

名目GDP構成比率が上昇したのは保健衛生・社会事業であり、2020年は8.3%と2005年比2.6ポイント上昇している。教育は3.6%と2005年と同じ構成比率であり、教育部門への政府の取り組みは将来への不安を誘う。

 

TOPIXを2020年末と2000年末とで比較すると1.4倍に上昇している。だが、上に見た通り名目GDPは0.5%の微増であり、株価は上昇したけれども、実体経済は動かなかった。株式と実体経済には何の関係もないことが明らかだ。米国の名目GDPは2020年と2000年とでは2倍に拡大したが、S&P500は同期間2.84倍と名目GDPよりもはるかに伸びている。

2020年の名目GDPを1959年と比較した場合、日本は42.7倍、米国は40倍と大きな違いはない。だが、株価は日本(TOPIX)の22.5倍に対して、米国(S&P500)は63.5倍と日米の株価の上昇率は極端に開いている。

1959年と日本の株式バブルのピークであった1989年の比較では、株価は日本の36倍に対して米国は6倍にとどまった。だが、1989年と2020年では米株は10.6倍に伸長したが、日本は0.62倍と1989年を大幅に下回っている。米名目GDPの1989年・1959年比は10.8倍、2020年・1989年比では3.7倍と成長は鈍化したが、日本の27.1倍(1989年・1959年比)から1.57倍(2020年・1989年比)ほど極端ではない。

日本の生産年齢人口のピークは1995年だが、この1995年の名目GDPを2020年と比較すると25年間で2.7%しか増加していないのだ。生産年齢人口の収縮が実体経済の成長を止めたのである(生産年齢人口の1989年・1959年比は43.7%増、2020年・1989年比は-12.4%)。2020年から2040年までの名目GDPは2020年までの20年間よりもさらに低迷するだろう。抜本的な人口対策を採らなければ、日本経済の先行きは暗くなり、世界の中で一人当たりのGDP順位は下がり続けることになる。経済力の低下は政治力の低下に繋がり、老獪な世界政治の舞台で、日本はますます埋没していくことになるだろう。