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日本の消費、なぜ欧米よりも弱いのか

米株式は超近視眼的である。トランプ大統領のツイートやコロナ経済対策にしか関心を払っていないようだ。こうした材料で株価が動くと思っていると参加者が想定しているから動いているだけなのだ。株式はたわいもないものである。大統領選が迫ってきているけれども、米株式は大統領選を織り込むような展開にはなっていない。どちらに転んでも、米株式は続伸すると楽観的にみているのだろうか。いずれの陣営にとっても、株式の大崩れは望むことではなく、株式を後押しする政策を打ち出さざるを得ない、と市場参加者は踏んでいるように見受けられる。

日経平均株価も足踏みしている。日本株の主役である外人は9月第5週まで4週連続売り越して、9月は1.2兆円の売超である。米株も上値は限られているとみて、ひとまず日本株は売っておくという姿勢なのかもしれない。日本経済が米国経済に比べて回復力が弱いことも外人にとっては不安材料になっている。

傾向として為替相場は円高ドル安であり、為替の面からは企業収益の改善は期待できない。世界経済の先行きは不透明であり、原油価格の大幅な上昇は考えにくく、そのような前提では、原油価格に概ね支配されている円ドル相場は、円高ドル安に向かうはずだ。ただ、現状は世界経済の低迷で輸出が減少しており、貿易収支の悪化が、円の上昇を抑えている。

円ドル相場が1ドル=105円を突き抜けて100円を割り込むか、というほどの円高ドル安に進んでいないことが、日本株を安定させている。だが、米株が大幅に値下がりする事態になれば、円高ドル安の急伸による売り、さらに換金売りも加わり、日本株は米株よりも激しく売り叩かれるだろう。

3週間後には米大統領選がある。トランプ大統領の身勝手な言動が支持離れを引き起こしている。トランプ大統領とともに歩んできたウオール街は、トランプ後には、何を美人に仕立てて、相場を作り上げていくのだろうか。近視眼的な選択に終始するならば、その付けはウオール街に回ってくることを肝に銘じるべきだ。

日本の家計は消費に引き続き慎重である。『家計調査』によれば、8月の消費支出(二人以上の世帯)は前年比6.7%減少した。4,5月に2桁減に落ち込み、6月は-1.1%とマイナス幅は縮小したが、7月は-7.3%に拡大し、8月もその流れに沿っている。

米国の個人消費支出は8月、前年比-1.9%と日本に比べればマイナス幅は小幅。8月のユーロ圏小売売上高は前年比3.7%増である。4月には-19.3%に悪化したが、6月は1.4%、7月は-0.1%と微減にとどまり、8月は回復力を増している。なかでもドイツは4月も-5.5%と踏ん張り、5月以降は4カ月連続のプラスで、8月は7.2%も伸びている。

経済産業省の『商業動態統計』によれば、8月の小売販売額は前年比-1.9%とマイナス幅は縮小しているが、依然前年割れである。欧米に比較して日本の消費は弱く、回復は遅れている。なぜ、日本の消費は欧米よりも弱いのだろうか。

10月10日現在、新型コロナによる死者は世界で106万人、日本は1,628人(ドイツ9,564人)と世界の0.2%にも満たない。これほど死者が少なくても消費意欲は回復しないのである。これまでの感染者や死者の少なさが、逆に、これから寒くなる冬場の感染拡大への懸念が強まっているからなのか。また、失業率や有効求人倍率が示す雇用環境の悪化が、身近な問題として降りかかってくるかもしれない、との不安感が強くなっているからだろうか。

『人口動態統計』によると、今年5月の死亡は10.7万人、前年より3.3%の減少である。今年1月から5月までの累計でも前年よりも2.3%少ない。東京都の死亡統計は8月まで公表されているが、4月~8月では前年比0.2%増、1月~8月は-1.2%であり、新型コロナの影響を窺うことはできない。むしろ、1月~5月の出生数が前年比2.0%減少していること、さらに婚姻は16.8%も減少している点に、新型コロナの影響を認めることができる。

8月の勤労者世帯実収入は前年比1.4%増だが、世帯主は2.0%減少した。だが、配偶者の収入が12.8%伸びたことや給付金によって実収入はプラスを維持している。個人住民税や社会保険料の拡大によって非消費支出は3.2%増加したが、実収入の増加により、可処分所得も1.0%増加した。消費支出の削減が貯蓄(可処分所得―消費支出)を前年比24.0%も増加させ、これで今年1月から8月までの勤労者世帯の累計貯蓄は148.3万円となり、前年同期の104.7万円に比べれば41.6%も増加している。これは明らかに、新型コロナによって引き起こされた家計行動の著しい変化である。

昨年10月、消費税率を引き上げ、同月以降、消費支出は前年割れとなり、プラスに浮上することなく、新型コロナで3月以降は深刻な消費不足不況に陥っている。今年1月から8月までの勤労者世帯の累計消費支出は241.4万円、前年同期の260.2万円から18.7万円の減少である。一方、可処分所得―消費支出=貯蓄の増加額は43.5万円。消費の減少と貯蓄の増加が日本経済を下方へと押し下げている。

『家計調査』から推計すると、今年1月~8月までの勤労者世帯の貯蓄は約42兆円、前年同期比12兆円の増加である。無職世帯や個人営業などの世帯の貯蓄を加えるとさらに貯蓄は増える。貯蓄王国と言えるほどだ。だが、貯蓄は消費しないことの裏返しであり、今回のように消費が萎えると経済活動は麻痺してくる。

今年1月~8月に、勤労者世帯の消費は前年同期よりも約5兆円減少した。飲食、宿泊など苦境に陥り、立ち行かない店も出てきている。できるかぎり経済的苦痛を少なくする方法を考えなければならない。だが、今までのようにレストランで頻繁に食事をし、出来合いを求め、飲み屋に行き、旅行にも出かけるという生活スタイルはできなくなるのではないか。多くの粗原料を海外に頼る日本には日本風の生活があるはずだ。日本風の生活からかなり逸脱した生活をしていたことが、日本の経済を欧米以上に悪化させたのではないだろうか。なんでも取り入れる日本人の習性が、受け入れ過ぎて受け入れる範囲を超えてしまったように思う。

ITが進んだとはいえ、生活は追い立てられ、ゆとりはない。ITを利用するというよりも、ITに使われているといったほうがよい。ITは四六時中稼働可能だが、人間はそうはいかない。いまでは人間は、ITに合わせて働いているようだ。

夜昼関係ないような社会など決して正常な社会などとは言えない。24時間営業が当たり前のコンビニはまさに非人間的で異常の極致ではないか。コンビニが24時間営業し、狭い日本を宅配便が一日中走り回る。CO2を心配するのであれば、営業時間を短くし、ガソリンや電気も節約しなければならないのだが、改めようとはしない。企業も長時間労働から抜け出せず、小中学校の先生の勤務時間も長く、人間らしい生活から遠ざかっている。ITとは所詮そのようなものなのであろう。社会がIT化すればするほど、IT禍という災いが広まり、人間労働はきつくなる。ITとのつながりだけが強くなり、人間同士のつながりは薄れ、人間疎外が深刻になるように思う。

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