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日本経済を潤す商品相場の急落

円ドル相場の値動きは小幅だ。為替を動かすような材料に乏しく、かつ現状の水準は居心地がよいのだろう。4月の日本の消費者物価指数(食料・エネルヂーを除くコア)は前年比横ばいとなり、低下傾向にある。一方、米国の消費者物価指数(コア)も低下しつつあり、昨年央までは開く傾向にあった日米の消費者物価の格差は、過去半年2%前後で大きな変化はない。日米の物価格差は必ずしも為替相場に影響するわけではないが、過去の双方の関係をみると円ドル相場の大きな変化は、物価格差で捉えることができるように思う。
為替相場に影響するもう一つの重要な要素である経常収支にも変化はない。今年4月までの4ヵ月間の日本の経常黒字額は7兆7,387億円と前年同期と同じであり、今年1-3月期の米経常赤字額にも大きな変化はない。ただ、年ベースの日本の経常黒字額(約20兆円)を前提にすれば、ドル売り円買い圧力は強く、容易に円安ドル高には向かわないだろう。
最近の商品相場の下落はかなり激しい。特に、原油価格は前月比-16.4%も急落しており、先週、WTIは42ドル台と昨年8月上旬以来の安値に落ち込んだ。OPECのシェア低下や内部問題だけでなく、米国のシェールオイルなどが、原油価格の頭を抑えている。シェールオイルの産出コストの低下によって、原油価格の上昇は直ちに増産に結びつき、価格引き下げを引き起こす。シェールオイルの採掘技術は発展途上にあり、バレル40ドルあるいはそれ以下でも採算が合うようになっているのではないか。シェールオイル採掘技術の進歩によって、原油価格はバレル50ドル~60ドル以上に値上がりすることはないだろう。
原油価格の低位安定は全量輸入に頼っている日本にとっては、貿易収支の改善だけでなく、物価の低下にも繋がり、その恩恵は計り知れない。昨年度の原油や液化天然ガスなどの鉱物性燃料の輸入額は約13兆円、総輸入額の2割を占める。原油価格が1割下がっただけで1.3兆円の輸入減となる。原油価格の低下は末端の日常使用される商品にまで波及することによって、消費需要を拡大させるだろう。
価格下落は原油だけでなく穀物や金属などにも及んでおり、CRB指数は昨年1月に付けた歴史的な水準に近づいている。資源輸入国の日本の輸入負担額は大幅に軽減することになる。資源価格の低下が商品価格を引き下げ、購買力を引き上げるだろう。同じ貨幣額でより多くの商品を買うことができるからだ。
貨幣価値が増価するといってもよいだろう。購買力が増すだけでなく、貨幣価値の増価は為替相場に表れることになり、円は強くなるはずだ。日本が輸入する多くはドル建てなので、円高は輸入額をさらに低下させることになり、日本の輸入は資源価格低下と円高という2重の恩恵を享受できるのだ。
2013年度には13.7兆円もの貿易赤字に陥っていたが、昨年度は2010年度以来6年ぶりに黒字を計上することができた。輸入額は67.5兆円だが、資源価格の下落さらに円高が進行するのであれば、今増大している輸入額は今後、減少していくだろう。今年5月までの5ヵ月間の貿易黒字額は6,072億円であり、輸出と輸入に大きな隔たりはない。円高ドル安になれば輸出は逆風になるが、輸入は拡大するかもしれない。だが、資源価格下落の効果が大きく、輸入増にはいたらないだろう。
原油等の資源価格下落の世界経済への影響はこれから本格化するだろう。資源の輸入依存度の高い国ほどその影響がでやすい。米国の総輸入額に占める原油輸入額は4.6%(2016年)と日本よりも低く、貿易収支の改善にも結び付きにくい。
消費者物価への影響も海外資源への依存度が高い日本により大きくあらわれるだろう。日本の消費者物価指数(コア)は4月、前年比横ばいだったが、緩やかに低下するだろう。消費税率を引き上げた2014年には前年比2.2%と前年のマイナス0.2%から大幅に上昇したが、2015年1.4%、2016年0.6%と低下していき、今年3月には-0.1%と2013年7月以来3年8ヵ月ぶりのマイナスとなった。明らかに消費者物価指数は低下しているのだ。資源価格の下落によって、まずそれに関連するものの値段が低下、さらにより広い範囲のものが値下がりし、コア指数も低下していくだろう。米国のコア指数も低下していくけれども、日本の低下幅が大きく、為替相場は円高ドル安の流れが強くなるのではないか。
米国の物価上昇率の低下が明らかになるにつれて、金融政策のシナリオも見直されるかもしれない。政策金利の引き上げ期待により、ドルは支えられていたが、政策金利の利上げが再考されるようになれば、ドルは拠り所を失い、大規模なドル売りを浴びる可能性がある。そのときは、日米の株式も無傷ではいられないはずだ。

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