Share |

日銀のしらじらしい金融政策

S&P500とナスダック総合は週末、過去最高値を更新し、実効ドル相場は約2ヵ月ぶりの高値を付けた。先週は少し戻したが、ドル高によりドル表示の商品相場は直近高値から大幅に下落している。ドル高が持続すれば、商品市況は軟調に推移するだろう。円の対ドル相場は小動きで、円安というほどではないが、ユーロは弱く、週末値では2017年4月第3週以来、約2年10ヵ月ぶりの安値である。日本、米国、ユーロ圏の経済のうち最も弱いのは日本であり、強いのは米国、その中間がユーロ圏なのだが、なぜか対ドルではユーロが弱いのである。

昨年10-12月期の実質GDPの前期比伸び率は米国の0.5%に対してユーロ圏は0.3%であった。日本は17日に公表されるが、マイナスになるはずだ。米国とユーロ圏の成長率の差はわずかなものであり、これがドルユーロ相場に影響しているとは考えにくい。むしろ、ドイツ経済の不振がユーロ下落の主因のように思われる。昨年10-12月期のドイツの経済成長率は前期比横ばいであった。昨年4-6月期に-0.2%とマイナスに陥り、7-9月期は0.2%増加したが、さらに伸びることはなかった。ドイツ経済の足取りはまさに不安定であり、景気後退に陥り兼ねない状態にある。

経済の不振からドイツ10年債利回りはマイナスであり、日本よりも低い。こうした国債利回りのマイナスもユーロ安ドル高に繋がっている。米10年債利回りとドイツ債利回りは先週末、約2%の格差がある。日本の10年債と米債では1.6%であり、米・独差を下回っている。

先週末の米10年債利回りは1.58%だが、この水準は歴史的であり、異常に低い水準だ。経済成長率がプラスでありながら、それを下回っていることは国債が買われ過ぎていることを示している。もちろん、日本やドイツの国債利回りがマイナスを付けていることも、やはり異例のことだ。

なにも日米独に限ったことではない。ラテン系のイタリア、スペインの10年債利回りも1%を下回っており、ギリシャ危機時は一時36%も急騰していたギリシャ債もいまでは1%割れと信じられないような低水準である。スペインも0.29%とイギリス(0.62%)よりも低く、かつての欧州不動産バブル崩壊による信用不安が嘘のようである。

このような異常な国債利回りを定着させているのは、中央銀行の金融政策だ。日銀とECBはゼロ金利、FRBはプラスだが、1.5%~1.75%へと昨年の2.25%~2.50%から引き下げており、今年は引き上げることはなく、場合によっては、利下げもあり得るという姿勢なのではないか。だから、経済指標にすこしでも良くない数値が発表されれば、国債が買われることになる。政策金利の水準まで国債利回りも低下してきており、この水準が大まかな米債利回りの下限ではないか。ユーロ経済が千鳥足の状態では金融緩和の継続は不可避である。FRBはひとまず様子見だが、ECBはより緩和的舵取りを模索し、超緩和期間も長期化すると予想されており、こうした、中央銀行のスタンスの違いがユーロ安ドル高の背景だと言える。

日銀の金融政策はすでに破綻しており、日銀の存在意義はなくなっている。念仏のように物価目標を唱えているだけで仕事になるのだから呑気なものだ。国債の年間増加額は80兆円をめどとしつつ、と金融政策運営で述べているけれども、2月10日時点での日銀の国債残高は487.8兆円、前年比14.8兆円増にとどまる。めどの20%にも満たない国債しか購入していない。

国内銀行の資産・負債(銀行勘定)によれば、昨年11月末の国債保有額は60.3兆円、現金預け金は259兆円である。巨額の国債購入を始める前の2013年3月末の国債と現金預け金は166.6兆円、45.0兆円である。国債は激減し、現金預け金は激増していることがわかる。日銀が銀行の国債を買い上げ現金を供給しても、昨年11月末の貸出は521.4兆円、2013年3月末比80兆円と国債購入額(106.3兆円)を下回る。さらに当該期間の預金増加額は168.7兆円、貸出増加額の2倍超であり、預金増加額の多くは現金預け金に向けられている。

銀行勘定は、すでに日銀がめどとする年間国債増加額に満たない国債しか保有していないのである。さらに範囲を広げて預金取扱機関の国債保有額をみても昨年9月末、150兆円と年80兆円も購入すると約2年で玉がなくなる。

いつまでもしらじらしい金融政策を続けるのではなく、正常な政策運営に戻らなければならない。失敗は素直に謝り、出直しする以外にはない。第2次大戦で降伏決断が遅れたため悲惨な事態を招いたが、日銀の姿勢はそのときと何ら変わらない。

イタリアは早々降伏、枢軸国から離脱、1945年5月にはドイツも手を上げた。それでもまだ日本は降伏しなかったし、7月26日に日本に出されたポツダム宣言を受け入れず、広島(8月6日)と長崎(8月9日)に原爆が投下され、ソ連の宣戦布告(8月14日)によって、8月14日にやっとポツダム宣言を受諾した。

なにの根拠もなくただいたずらに時間稼ぎをした結果が取り返しのつかない惨事を招いた。東京などは焦土と化していたが、集団主義による責任の擦り付けに終始、総合的で適切な判断を下すことができなかったし、国民の存在など微塵も顧慮しなかった。

ポツダム宣言の受諾が10日早ければ、広島以降の惨事は起きていなかった。それほど決断の時期は重要なのだ。ぐずぐずした日銀の金融政策決定会合は御前会議と同じではないか。

国債や上場投信の異例の購入政策を改め、正常な金利水準に戻すべきだ。マイナス金利は貨幣の貨幣たる所以をなくしてしまい、貨幣とその他のものを無差別にする。

金利が付かなければ、金融機関に預金する必要もなくなり、貨幣は退蔵され、金融政策はますます機能しなくなるのだ。金利がマイナスになれば、設備投資は活発になるはずだが、そうはなっていない。企業はそれだけ先行きを慎重にみているのだろう。おそらく、本音では日本経済は成長しないと予想している。

円ドル相場は膠着状態にあり、日銀の金融政策が槍玉にあげられているわけではないが、日銀が国債を500兆円(43.9%、昨年9月末)、上場投信を28.6兆円(今年2月10日時点)それぞれ保有することのリスクは計り知れない。いずれにせよ、EUも金利を引き上げるだろう。日本だけがゼロ金利を継続していれば、円は相当弱くなるだろう。輸入物価の上昇を経由して、国内物価にも圧力が加わり、国債利回りも上昇し、同時に株式は急落するかもしれない。巨額の国債や株式を抱える日銀の信用が揺らぐことになる。

関連資料サイズ
200217).pdf409.13 KB