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日銀総裁は裸の王様

株売り、円買いの動きは止まらず、3月第4週末以来の株安、円高水準に戻った。日本株と為替を揺り動かしているのは外人であることから、FRBの金融政策がどのようになるかが、外人にとってもっとも気掛かりな点である。中身が空っぽでも金融緩和策を進めれば、そのことだけで株式が買われてきたのだから。今週開催のFOMC、7月のFRB議長議会証言を控え、否が応でも関心はFRBの金融政策の行方に向かう。

日米とも金融機関には預金が流入しており、金融機関は多量の現金を保有し、預金を持て余している。そのような金融状態で買いオペをしても、非金融部門にはなにの効果もない。マネーを商品に商売をしている金融機関を潤すだけである。買いオペという金融緩和は空箱なのである。日銀総裁もFRB議長も裸の王様なのだ。

すでに日本では10年以上マネタリーベース(MB)の拡大を図ってきたが、一向に、経済は上向かない。MBを拡大しても物価は低下し続けており、MBと物価の関連性は認められない。買いオペで金融機関に現金を供給するような金融緩和策は、日本経済には通用しないのである。ゼロ金利で金融政策は出尽くしたのだ。MBをいくら増額したところで個人消費や設備投資が増えるわけではないのである。MBの出所は主に家計の預金であり、それが金融機関を経由し、日銀の負債に計上されている。日銀はそれを原資に国債を買いまくっているのだ。このようなことで経済がよくなるはずがない。日銀の悪足掻きにすぎない。

預金を国債に変換するパイプが太くなっただけである。日銀が買いオペを拡大しなくても、貯蓄と投資の関係から、国に資金は流れることになるのだ。GDP統計によると、2012年度の家計最終消費支出は282.7兆円と10年前(283.5兆円)よりも少ない。向こう10年を考えると、さらに家計最終消費支出は減少するだろう。消費の規模が縮小しつつあるときに、民間設備投資意欲が高まるだろうか。いまだに過剰固定資産を抱えている日本企業はさらに固定資産の圧縮に迫られている。そのような状態で固定資産を拡大すれば、経営リスクを高め、収益を悪化させるだけである。

 米国経済は緩やかに回復しているが、決して本調子ではない。ユーロ圏経済はいまだ不況期にあり、もがいている状態である。こうした経済状況下では、日本の輸出も伸びない。民間設備投資や輸出に頼ることができなければ、過剰貯蓄は必然的に政府部門に流れることになる。

 日銀が大規模の買いオペなどしなくても、民間設備投資と輸出が不振であれば、最終的には国に過剰貯蓄は向かう。それを日銀は大規模買いオペは経済をよくするためには必要なのだという。安倍首相に求められたことに、なにの検証も加えず、無節操に口車に乗ってしまった。金融政策決定会合とはいえ、すでに決めていることを了承するだけのことなのだ。政策委員も経済のことは無知なのか、このような馬鹿げた政策に素直に従ってしまった。これでは金融政策決定会合は名ばかりといえる。

 日本株を取り仕切る外人は巨額の含み損を抱えており、少しでも値上りすれば売ろうとしている。日経平均株価がピークを付けた5月20~24日週、外人は161億円(東証1部)を売り越したにすぎない。5月27~31日も売り越したが、1,354億円にとどまり、5月合計では1.2兆円買い越し、4月の記録的買い越し額3.36兆円を加えれば、2ヵ月で4.56兆円になる。4月の株価水準をほぼ下回るところに落ち込んでいることは、4月、5月に外人が購入した株式は多くの含み損を抱えていることになる。6月第1週、外人は買い越しているため、高値から急落の過程で売り逃げた外人はほとんどいないといって差し支えない。だから、少しでも日本株が持ち直せば、すかさず外人売りがでてくるのだ。

 米国経済は不安定な状態から抜け出ていない。5月の小売売上高は前月比0.6%伸びたが、3月のマイナスや4月の横ばいの後であり、しかも自動車販売を除けば、伸びは高くない。鉱工業生産指数は5月、前月がマイナスであったにもかかわらず横ばいとなり弱い。5月の商業銀行貸出は前年比3.1%と昨年6月をピークに低下しつつある。特に、不動産貸出は前年を0.1%上回るだけであり、失速気味だ。商業銀行保有の現金は5ヵ月連続で過去最高を更新し、2兆ドルを超えた。

これではFRBは容易に買いオペの規模を縮小することはできない。買いオペの規模縮小を打ち出せば、株式・債券は暴落、ドルも売られるだろう。こうした事態を避けたい臆病なFRBは、口先では金融政策の変更を仄めかすかもしれないが、実行にはいたらないのではないか。そうしていつまでもぐずぐずと煮え切らない態度を取り続けるように思う。ゼロ金利と買いオペをづるづる続けることは、米国経済の膿を放置することでもあり、米国経済の立ち直りを遅らすことになるだろう。

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