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昨年の勤労者世帯の貯蓄率38.7%に急上昇

新型コロナ経済対策やワクチンへの期待から米国債利回りは上昇しつつある。ただ、短期金利は過去最低水準にあり、長短金利差は拡大している。実際、資金需要は弱く、期待だけで利回りは上昇しているようだ。米債利回りの上昇につれて、主要国の国債利回りも上昇している。実体経済の違いが為替相場に表れており、対円、対ユーロでドルは強い。昨年10-12月期の実質GDPは米国の前期比1.0%に対して、ユーロ圏は-0.7%であった。今年1月の総合PMIも米国58.0とユーロ圏47.5では著しく違い、新型コロナ感染者と死者は最大だが、経済に関して米国はことのほか底堅い。

日本のPMIは1月、46.7とユーロ圏よりもさらに酷い。米国がユーロ圏、日本に比べて経済が強いのは、今回最大のダメージを受けたサービス業が米国では昨年8月以降50を超えているからだ。ユーロ圏は昨年9月以降50を下回り、日本は回復することなく、サービス業は深刻な状態にある。

米国経済がユーロ圏や日本よりも良いのは、もともと個人消費の経済に占める割合が大きいことが奏功している。不況のとき、設備投資などは急激に冷え込むけれども、個人消費は設備投資ほど大きく落ち込まない。しかも、個人消費の落ち込みがユーロ圏や日本よりも軽いことが経済の悪化を食い止めているのだ。

2020年の米個人消費支出は前年比2.7%減だが、総務省の『家計調査』(二人以上の世帯)によれば、日本の消費支出は2020年、-5.3%も減少した。この消費支出の減少だけを捉えれば、消費支出の割合が大きい米国に分が悪いのだが、GDPの他の項目である設備投資や純輸出などは消費支出以上に悪くなるので、日本のGDPは消費支出の減少だけでは済まなくなるのだ。

『家計調査』(二人以上の世帯)によると、昨年12月の消費支出(名目)は前年比-2.0%と3カ月ぶりのマイナスとなった。2019年10月に消費税率が引き上げられたため昨年10月、11月はプラスになったが、12月はその影響が薄れ再びマイナスである。

財は1.1%と3カ月連続増だが、サービスは-6.5%と大幅な減少となった。昨年3月から9月のような激しい落ち込みではないが、6.5%減は通常ではあり得ない。今年1月に緊急事態宣言が出され、それが3月7日まで延長されることから、第1四半期の消費は厳しくなることは間違いない。

日本人の集団主義が新型コロナ感染を防いでいるのかもしれないが、他方、消費などはそれがマイナスに作用しているのだろう。飲食などを除き、消費の規制はないものの、外出を控え、自ずと消費は抑制されているように思う。外出自粛などは女性の衣服類の消費を冷やし、2020年の「被覆・履物」は前年比18.9%減と品目では最大のマイナスとなった。「被覆・履物」の季節調整値(2015年=100)は2020年12月、81.7と2019年12月の91.2、2018年12月の98.3と見る影もない。

それにしても、日本人の節約は欧米とは比較にならないほど徹底している。2020年の勤労者世帯(二人以上の世帯)の貯蓄(月平均)は192,828円、前年比26.2%増加し、2015年以降6年連続増である。現行統計が始まった2000年以降では最高であり、最低の2014年比では84.0%増だ。2020年の貯蓄率は38.7%と過去21年間では最高であり、2014年の24.7%を底に6年連続の上昇である(因みに、米国は2020年、16.4%)。

第2次安倍政権が発足しても、貯蓄率が上昇し続けたことは、安倍政権の経済政策を信頼していなかったからではないか。2013年の世帯主収入(男)は40.0万円から3年連続で減少し、2019年には41.8万円まで戻したが、2008年並みなのである。世帯主収入の低迷によって、家計は消費の切り詰めを余儀なくされた。

給付金などで、2020年の可処分所得は498,639円、前年比21,994円、4.6%増加したが、貯蓄は40,036円も増加している。半面、消費支出は305,811円と2019年の323,853円から18,042円減少し、2000年以降では最低だ。消費支出のなかでは食料だけは最高を記録している。

2020年の消費支出は10兆円を超える減少となり、しかもそれはサービスに集中しているということだ。コロナ禍が収束すれば、サービス業の業績は直ちに回復するが、新型コロナは長期化の様相をみせており、それまで持ち堪えることができるかどうかである。中小・零細企業の多くは財政基盤が脆弱であり、財政的支援がなければ、立ち行かなくなるだろう。当面、無利子・無担保の貸出で遣り繰りする以外にはない。

勤労者世帯の貯蓄に基づけば、年間貯蓄は231万円となり、全世帯が同じように貯蓄したと仮定すれば、昨年の家計貯蓄は約120兆円となる。少なく見積もっても100兆円程度には達しているはずだ。家計の年100兆円超の貯蓄行動が、投資に変化なしとすれば、経済を激しく収縮させるだろう。

日銀の『マネーストック』によれば、昨年12月の預金通貨残高は821兆円、前年比15.0%の107兆円増である。『貸出・預金動向』でも3業態・その他計の預金は1,058兆円、前年比8.2%の80兆円増である。つまり、2020年には金融機関に100兆円前後の金が預金されたのだ。

3業態の貸出は昨年末で501.8兆円、前年比28兆円増加したが、預金は802兆円、同68兆円増と貸出増加額は預金増加額の半分にも満たない。金融機関の増加預金の一部は貸し出され、その他は日銀の当座預金に向かったのである。

日銀のバランスシートの貸方の当座預金は昨年末、494兆円、2019年末比93.7兆円も増加している。金融機関に預けた預金の多くは、日銀に預けられたということだ。日銀はこれを元手に国債や上場投信を購入し、金融機関に貸し出している。

金融機関は預金の一部を新発国債の購入に充てており、金融機関保有の国債を日銀が購入するといった流れなのである。金融機関に流れる預金が空前の規模に達しており、新発国債は難なく消化されるだろう。家計が可処分所得の4割弱を貯蓄するという異常な節約志向が国家財政を支えているのである。

巨額の貯蓄が国債に置き換わっているだけだとも言える。預金か国債かの違いだけである。流入してくる預金に応じて貸出を増やすことができないので、金融機関は国債の購入か日銀当座預金しか選択肢がないのである。

財政破綻が前々から言われているが、一向に破綻の兆しは見えない。家計の貯蓄行動は一朝一夕に変わるものではない。これからも可処分所得の四分の一程度は貯蓄するだろう。2020年のようなことは起こらないが、それでも70兆円程度の新規預金が毎年発生するのだ。これに見合う設備投資や超過輸出は期待できず、自然に国に流れ、国債残高は累増することになるだろう。みながタンス預金に走れば、話は変わるけれども。

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