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株式・商品相場急落下の利上げ

株式市場参加者はFRBに過度な期待を抱いていたようだ。来年の利上げはないかもしれないという。が、蓋を開けてみれば、2回の利上げ計画が掲げられていた。19日公表のFOMCの声明によれば「いくらかのさらなる段階的な」利上げが必要だ、とうたわれていた。期待しすぎていたため、NYダウは19日から3日連続の大幅安となり、累計で1,230ドル下落した。米株の急落から債券が選好され、米10年債利回りは3ヵ月物の短期金利を下回った。同時に、ドル売り円買いが強まり、10月下旬以来の1ドル=111円台に上昇した。

円高ドル安の進行が、日本企業の収益悪化懸念を強め、日経平均株価は前週比1,208円も安くなり、年初来安値を更新した。下落していた原油価格は1バレル=40ドル台へと激しく売り込まれ、前週比では11.0%の急落となった。原油急落によってCRBは2017年6月29日以来、1年5ヵ月ぶりの低水準に落ち込んだ。

2015年末にFRBが利上げしてからこれで9回目となる。いずれも0.25%と小幅であり、しかも0.25%は1年も据え置かれた。だから、9回も利上げをしていながらいまだに2.25%と低金利なのである。FRBがいかに慎重で安全運転に徹したかが利上げの態度にあらわれている。こうしたFRBの安全志向が金融経済の肥大化を招き、株式価額が名目GDPの2.45倍にもなる異常な事態を作り出したのである。より早い段階で利上げを行なっていれば、防げたバブルを防ごうとしなかった。FRBのまさに政策ミスである。

FRBは声明に加えて経済予測を公表したが、2019年、2020年のGDPは2年連続の低下を見込む。2019年は2.3%~2.5%、前回9月の予測よりもわずかだが引き下げており、減税後の景気減速が顕著になるとみている。失業率や物価についてはほぼ今年並みであり、GDPの伸びだけを低くしているのだ。

GDPが減速すれば、来年の物価は今年よりも低下すると考えられるが、失業率がすでに低く、完全雇用状態に近く、賃金の上昇などが持ち上がってくれば、経済減速による物価低下効果を相殺するかもしれない、と読んでいるのかもしれない。

政策金利は来年2回の利上げで2.75%~3.00%を想定しているが、経済減速下での利上げは減速に追い打ちを掛けるという懸念が株式参加者には強い。利上げすれば住宅金利やオートローンも上がるだろう。11月の米住宅着工件数は前年比3.6%減、中古住宅販売件数は7.0%もの前年割れだが、利上げは住宅需要をさらに押し下げるかもしれない。新車販売台数も頭打ちになっており、耐久財関連は厳しくなっていくだろう。景気減速に伴い企業収益は悪化することになる。

原油価格の急落などで、商品相場は下落しており、今後、物価上昇率は低下していくに違いない。11月の米PCE物価指数は前年比1.8%と前月から0.2ポイント低下、コアは0.1ポイント上昇したものの1.9%と2ヵ月連続の2.0%割れである。商品相場が低い水準で推移していくならば、米国だけでなく世界的に物価はより安定していくことになる。

日本の消費者物価指数にも商品相場下落の影響があらわれている。11月の消費者物価指数は生鮮食品やガソリンなどの下落によって、前年比0.8%と前月よりも0.6ポイントも低下した。前年比1%割れは7月以来4ヵ月ぶりである。生鮮食品を除く指数と生鮮食品とエネルギーを除く指数は0.9%、0.3%といずれも前月よりも0.1ポイント伸び率は低下した。それでも日銀は2%目標を堅持する。11月のユーロ圏HICPも前月比1.9%と前月よりも0.3ポイント低下し、世界的に物価は伸び率鈍化の方向にある。

11月の日本の貿易収支は7,372億円の赤字となり、今年1月から11月までは1兆1,437億円の赤字だ。世界経済の減速により、輸出の伸びが鈍化する半面、原油高などで原油、液化天然ガスの輸入額が増加したからである。だが、10月上旬をピークとする原油価格の急落が12月からはあらわれ、さらに円高も加わり、輸入額は減少し、貿易収支は改善していくだろう。貿易収支の改善は円高ドル安に繋がり、そうなれば輸出減輸入増になるけれども、当面、原油安の効果が大きく、輸入額は減少することになる。

日本からの中国への輸出は今年5月までは数量でも前年比2桁増であったが、その後は1桁となり、9月と11月はマイナスだ。総輸出(数量)も11月までの3ヵ月は9月、10月の平均を採れば前年割れとなり、世界経済は明らかに減速傾向を示していると言える。だから、経済の体温が低下してきているのだ。

前週号でも指摘していたが、今年度の日本企業の設備投資計画は前年度を上回っている。だが、TOPIXが年初の高値から22.1%も急落すれば、経営者の設備投資マインドはかなり悪化するはずだ。設備投資計画を練り直し、発注を延期あるいは取り消す行動を採ることも予想される。世界経済の減速が継続することになれば、今年度及び来年度の設備投資計画は大幅に変更・縮小されるのではないだろうか。

もともと消費が弱いところへ、設備投資が下方修正されることになれば、日本経済はマイナス成長に陥るだろう。今年7-9月期の名目GDPは前年比-0.3%と2013年1-3月期以来、5年半ぶりのマイナスとなった。自然災害の影響もあったが、昨年10-12月期の2.4%をピークに伸びは鈍化していた。10-12月期はややプラスになったとしても来年1-3月期は再びマイナスに転落するのではないか。

今年7-9月期の実質民間最終消費支出を第2次安倍政権発足前の2012年7-9月期と比較すると2.8%しか増加していない。年率では0.45%であり、家計の消費行動はほとんど変わっていないのだ。消費が弱いため7-9月期のGDPデフレーターは前期比-0.1%と3四半期連続のマイナス、前年比でも0.3%低下した。そこへ今年7-9月期までの6年間、年率2.8%も増加し、経済を牽引してきた民間設備投資が崩れることになれば、日本経済は立ち行かなくなるだろう。世界経済の減速が続けば、日本は消費税の引き上げどころではなくなる。

 

★次号は休みます。

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