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株高と消費

先週も日経平均株価は続伸し、月間では1,000円以上も上昇した。昨年12月はやや前月を下回ったが、昨年8月末から21.9%もの値上りである。前年比プラスは2012年11月以降28ヵ月も続いており、金融危機以前の2007年10月までの上昇期間と並んだ。その間、株価は2.1倍に上昇した。前年比プラスに転じた2012年11月は衆議院が解散されたときであり、同年12月には第2次安倍内閣が誕生した。同年9月26日、安倍自民党総裁が決まってからは日増しに円高ドル安是正が叫ばれ、同年10月以降は円安ドル高へとじりじり進んでいった。円安ドル高の進行とともに、株価は、押し目はあったけれども、上昇傾向を辿り、いつのまにか1万9,000円近くまで値上りしてきた。

 1万8,000円台へ駆け上がった2月第3週の買い手は証券会社の自己であり、6,627億円も買い越している。外人は1,467億円を買い越し、個人は6,710億円を売り越した。これで2月に入ってからの自己の買い越し額は1兆2,604億円となり、今回の急騰を演じたのは証券会社の自己だということが明らかとなった。円ドル相場はもたついており、いつ円高ドル安に変じるとも限らない中、外人は慎重姿勢なのである。

これだけ株式が値上りすれば、株式所有者は売却益で懐が温かくなり、含み益も膨らみ、消費意欲が沸くはずだ。だが、消費は一向に振るわない。1月の『家計調査』によると、2人以上の世帯の消費支出は前年比名目2.4%減と2ヵ月連続のマイナスだ。勤労者以外の世帯は3.3%減と4ヵ月連続減である。実質では-5.1%と昨年4月以降10ヵ月連続で前年を下回っている。勤労者世帯の実質可処分所得は2013年8月以降連続の前年割れであり、懐具合は消費マインドを冷やしている。

年次の総世帯消費支出は2012年に名目0.2%だが、5年ぶりにプラスに転じた。2013年もプラスだったが、2014年は横ばい、実質では3.2%減と2006年以来8年ぶりの大幅減となった。駆け込みの反動とはいえ、マイナス幅は大きく、家計消費からは経済の先行きを不安視している様子が窺える。

2014年の勤労者世帯の実収入(世帯員全員の現金収入)は前年比横ばいだった。10年前の2004年に比べると2.9%減少している。可処分所得は10年で5.8%減と実収入よりもさらに落ち込みは大きい。これは直接税と社会保険料が10年前に比べれば11.3%、13.4%もそれぞれ増加しているからだ。特に、個人住民税は急増しており、49.1%アップだ。実収入が減少しているところへ、税金や社会保険料の増加が加わり、可処分所得は減り続けている。これでは株式が大幅に値上りしたからといって、消費支出を刺激することはできない。

株式保有状況によると、東証1部の金額ベースで2013年度、家計は75.8兆円、前年度より6.6兆円増加した。総額に占める割合は17.7%で外人31.7%、事業法人20.1%よりも少ない。株式数では家計の保有比率25.3%と前年度より低下した。

『家計調査』の年齢階級別株式保有状況をみると、70歳以上世帯が最大の保有者なのである。70歳以上の保有額を100とすると、60~69歳は76.5、50~59歳は39.6、30~39歳では10.1へと若年層ほど株式保有額は少なくなる。有価証券ではさらに高齢者の保有比率が高くなる。50歳以下の世帯では株価が上昇しようがしまいが、保有額はしれており、消費支出には影響しないのである。株式を保有している高齢者世帯はすでに十分な所得があり、株価の上昇による消費の嵩上げには動かないのだろう。

 家計の株式保有比率が高い米国でさえも、株価は過去最高値を更新しているが、消費支出ははかばかしくない。2014年の実質個人消費支出は前年比2.5%と伸び率は2年連続で上昇したが、それでもIT不況期並みの伸びにとどまっている。雇用環境も最悪期から相当改善されたけれども、消費支出は本調子ではない。消費支出を牽引しているのは、ゼロ金利政策よるローン金利の低下で、自動車等の耐久消費財が売れていることが、消費支出をここまで引き上げた。金利が引き上げられれば、特需は霧散してしまい、米国の消費需要は大幅にダウンすることになるだろう。だから、FRBは利上げにことのほか慎重なのである。

 耐久消費財の売れ行き不振は最高値を更新している株式を直撃するだろう。株高で多少の消費を刺激していると思うが、株式が逆回転することになれば、サービスも含め消費は一気に冷え込むことになる。消費が落ち込めば、それが株式に伝播し、まさに悪循環が始まるのである。

 日米共に、株高だが消費が盛り上がらないのは、株式が一部の階層にしか保有されていないからだ。株式のような資産の分布は非常に偏っており、大半は富裕層に保有されており、多くの人は所有していないのである。だから株価が値上りしても消費に変化はないのである。富裕層はすでに有り余る資産を保有しているので、株式の値上りは好ましいのだけれども、消費に結びつくことはすくないのではないか。

 『就業構造基本調査』によると、2012年10月時点の非正規雇用者数は2,042万人と2千万人を初めて超え、10年前よりも422万人、20年前とは989万人も増加している。2012年では総雇用の38.2%を占める。これほどの非正規雇用へのシフトが所得構造を変えてしまった。所得を100万円未満、200万円未満の100万円刻みでみると、最大は300万円未満の1,037万人であり、構成比は19.4%である。次は200万円未満の18.9%、3番目は100万円未満16.5%、4番目は400万円未満の13.8%。これら下位4グループは68.6%を占め、5年前よりも1.8ポイントの上昇である。

 非正規雇用が急増し、低所得層が増加したことが、消費支出の長期低迷とデフレ経済を引き起こしたのである。正規雇用を増やし、低所得層を少なくする方法を講じることで経済を改善するしかない。株高で経済を良くするという姑息な手段など通用するはずがない。

株式という虚構に乗っかる安倍政権の経済は実体経済とは掛け離れたものである。

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