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株高の好循環は続くか

為替が円高ドル安に向かっても、米株式が最高値を更新し、輸出が好調を維持していれば日本株も底堅い。日本のゼロ金利長期継続はだれもが一抹の不安も覚えない株式投資の不動の前提になっている。米国でさえも利上げに慎重な姿勢を取り続けており、過去の利上げ局面に比べれば利上げ速度は極めて緩い。ECBの金融政策の変更も利上げまでの道のりは遠い。金融政策がゼロや1%といった超緩和状態であれば、株式の投機熱は容易に冷めることはないのだろう。
株式は世界的な投機熱の渦中にある。資金調達コストが極限まで低下している金融環境では、余裕資金を保有している人だけでなく借入可能な人も株式市場に参入し、マネーゲームに没頭することになる。実物投資よりもはるかに高い収益率が期待できれば、みすみすそのチャンスを逃すことはないと考えるのは至極当然のことである。期待が期待通りにうまくいっていれば、売買の回転が効き、みなが利益を得ることになるのだが、いつまでも期待通りに進むとは限らない。これだけ長期間上昇し続けると美人に祭り上げる材料探しも難しくなるだろう。
10月の日本の輸出は前年比14.0%と4ヵ月連続の2桁増だ。数量では3.8%と低く、2桁増は円安ドル高による価格効果の結果である。受け取り金額がこれだけ増加することは、輸出企業にとっては願ってもないことであり、収益は予想以上に増加する。円安ドル高が輸出増をもたらし、企業収益を拡大させるというこうした好循環が株高に繋がっている。
ユーロ圏経済は好調なドイツに牽引され順調に伸びている。11月のユーロ圏PMIは約6年半ぶりの高水準であり、日本のEU向け輸出は10月、前年比15.8%伸びた。対中国輸出は26.0%と今年2月以降しばしば20%を超えている。こうした世界的な経済の拡大によって日本の輸出は高水準を持続できているのだ。
10月のドイツのHICP(Harmonised Index of Consumer Prices)は前年比1.5%だが、先週末の10年債利回りは0.36%であり、実質ではマイナスになる。EUのHICPは1.7%だが、最低のキプロス(0.4%)から最高はリトアニア(4.2%)まで幅がある。ギリシャのHICPは前年比0.5%だが、10年債利回りは5.2%とドイツとの格差ははなはだしい。信用力がこうした格差を生み出しているのだが、これではギリシャ経済の回復は望めない。一方、ドイツはマイナスの実質長期金利によってますます経済は拡大していくであろう。
円安ドル高が株高の起点となっているが、その円安ドル高は日本の超金融緩和策によるところが大きい。米国は徐々に超金融緩和から抜け出そうとしているが、思うような道筋を辿れそうにない。FRBが利上げに転じてから約2年経過するが、政策金利は依然1%である。利上げしても10年債国債の利回りは上昇せず、未だに昨年末の水準を下回っている。だが、政策金利をこのような低い水準に据え置いていても米経済活動は思うような力強い姿を見せない。物価は2%の目標値を下回っており、この先も物価が上昇するかどうかは不透明である。金利を抑えていても物価は上昇しないのだから、金利を上げればさらに物価は下がることになるだろう。
米政策金利の上限が意識しだされるとドルは大幅に値下がりするに違いない。日本株は円安ドル高で買われていただけに、為替が逆回転しだすと日本株は売り一色となり、日銀や公的年金の買いではとうてい値下がりを食い止めることはできないだろう。
主要国の中央銀行はFRBが2%目標を掲げているので、右に倣え方式でみな2%を目標にしている。まったくナンセンスだ。人間の体温でも違いがあるように、それぞれの国の体温があるはずだ。個体差があるとはいえ2%の物価上昇率は時代錯誤といえる。
黒田日銀総裁はすでに4年半ほど2%を唱え続けている。家計の懐が寂しく、消費が低迷している状態では物価は上がるはずがない。2%を念仏のようにとなえるだけで、仕事になり高い俸禄をえるとは、日銀総裁以下の面々はなはだ気楽な商売ではないか。そのような仕事ならだれもがやりたいし、またできる商売といえる。
主要国の物価上昇率は第2次石油危機をピークに下がり続けており、よほどのことが起きない限り、低い伸びが覆されることはない。ゼロ近くの伸び率であれば、文句などつけようがないはずだが、なぜ物価をわざわざ2%まで引き上げる必要があるのだろうか。物価が上がってこまるのは低所得者であり、富裕層はなにも困らない。物価の2%目標は低所得者虐め政策である。
ゼロ金利の影響をもっとも受けるのは株式や不動産といった金融経済である。これらは個別に行き過ぎないように、有価証券取引税や不動産取得税等税制面から対応していかなければならない。そうしなければ株式や不動産の主たる所有者である富裕層をますます太らせ、所得・資産格差を拡大させ、延いては消費不振を拡大し経済の停滞をより強めるからである。
株価の伸びに比べれば低いけれども、6大都市商業地(日本不動産研究所)の地価は9月末、前年比5.5%とこれで2013年3月以降5年連続のプラスである。9月の消費者物価指数は前年比0.7%だから、地価の伸びがはるかに高い。9月末までの過去5年間では6大都市商業地の地価は23.3%も上昇している一方、消費者物価指数は4.6%の伸びにとどまっている。東京区部商業地の上昇率は6大都市をはるかに上回っており、都市と地方との格差は拡大する一方である。都市の商業地地価は実体経済とかけ離れた値上がりを示しており、資産格差をはじめ日本経済のさまざまな矛盾を作り出している元凶といえる。

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