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消費の影響力弱まる日本経済

米株が最高値を更新しているが、日本株はそれについていけなかった。14日発表の7-9月期のGDPが良くなかったからだ。駆け込み需要がGDPを引き上げると予測していたが、期待外れに終わった。7-9月期が実質前期比ほぼ横ばいとなったことは、10-12月期はマイナス必至となり、市場参加者のマインドを冷やした。7-9月期のユーロ圏GDPも実質前期比0.2%と弱く、貿易戦争を仕掛けた米国は0.5%伸びている。だが、米国も10月の小売売上高、鉱工業生産、物価などいずれも先行きが不安になる内容であった。米株をはじめ世界の主要株式はまさに金融相場の只中にある。

7-9月期の日本のGDPは実質前期比0.1%と1年ぶりの低い伸びとなった。前回の消費税率引き上げ直前の2014年1-3月期の1.0%に比べればいかにも低い。最大の原因は民間最終消費支出が0.4%と前回1.0%の半分以下の伸びとなったほか、民間住宅や民間設備投資も前回の伸びを下回ったからだ。その結果、民間需要の寄与度は0.1%にとどまり、前回の1.2%とは比較にならず、駆け込み需要などなかったといってよいのではないか。

駆け込みするほどの体力も気力も日本にはなくなっているのだろう。高齢者にとっては2%の引き上げよりも身体のほうが心配なのだ。人口減、超高齢化、さらにスマートフォンなど情報・通信料の増加とそのしわ寄せ等、日本に消費を引き上げる素地はない。

家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)は実質前期比0.4%と前回(2.4%)を大幅に下回り、前年比でも1.2%、4年前でも1.4%(年率0.4%)しか増えていない。過去4年間の伸びは名目でも年率0.7%と低く、家計最終消費支出で経済を引っ張っていくことはできない経済構造になってしまった。

家計最終消費支出の低迷によって、民間最終消費支出の実質GDP構成比は低下し続けており、2019年7-9月期は56.1%と第2次安倍政権発足の2012年10-12月期の58.9%から2.8ポイントも低くなった。逆に高くなったのは民間設備投資であり、2012年10-12月期には14.5%だったが、今年7-9月期は16.5%に上昇している。

米国経済の個人消費支出と設備投資は実質GDPの69.8%、14.3%(2019年7-9月期)をそれぞれ占めており、日本とはまったく異なる経済構造なのである。個人消費支出の構成比が高いことが、米国経済の安定と自律性をもたらしている。日本のように消費が低い国の経済は変動が大きく、自律性も低い。経済が良い時も悪い時も消費は大きく変動しないことが、経済を安定させているのだ。

日本と米国の経済構造の違いは消費や設備投資だけでなく、公的部門でも大いに違う。日本の公的支出・GDP比率は25.0%だが、米国は17.3%と7.7ポイントも低い。なぜこれほどの違いがあるのだろうか。消費が伸びないため公的部門の支出で需要を作り出さなければならないからである。景気変動を緩やかにする機能よりも、公的部門は慢性的な需要不足を補うという役割を担っているのだ。

機械受注統計によれば、7-9月の製造業は前年比-10.2%と昨年10-12月期以降4四半期連続の前年割れだ。しかもマイナス幅は拡大しており、2桁減が続きそうである。外需も-10.7%と2四半期連続の2桁減となり、受注額合計も-5.1%と3四半期連続のマイナスとなった。10月の工作機械受注額は前年比-37.4%と依然マイナス幅は大きく世界的に受注は絞り込まれており、回復の兆しはみえない。機械受注の不振は、年が変わっても設備投資の不振が続くことを示している。

10-12月期のGDPが前期比マイナスになることは景気減速から景気後退へと進んでおり、すでにそういった経済のなかで生活しているのだ。7-9月期の実質民間最終消費支出は前期比0.4%と前期よりも0.2ポイント低下したが、民間住宅と民間企業設備は前期よりも高い伸びとなった。民間設備投資のGDP構成比が高まっている日本経済にとって、設備投資削減の経済に及ぼす影響は大きくなっている。機械受注の動向などに基づけば、今年10-12月期に続き来年1-3月期のGDPも前期比マイナスに陥る可能性は高い。

米株式は最高値を取り続けているが、実体経済には危険信号が灯り始めている。10月の米小売売上高は前年比3.7%と減速しており、生産も低調になってきている。10月の米鉱工業生産指数は前月比-0.8%と2ヵ月連続で低下し、前年比でも1.1%減である。特に、製造業は前年比-1.5%と7月以降4ヵ月連続の前年割れだ。製造業悪化の主因は自動車産業の急激な生産減。8月以降、前月比マイナスとなり、しかもマイナス幅は8月の前月比2.4%、9月8.8%、10月11.1%へと拡大し、10月を7月と比較すると自動車生産は20.9%落ち込んだ。自動車産業は裾野が広いため、機械や金属等への影響もみられ、それらの部門の生産も前年を下回っている。

米鉱工業生産はこれまでエネルギー部門によって支えられていたが、オイル・ガス掘削産業の生産縮小などによって、エネルギー部門も前年割れとなり、生産を牽引する部門を失った。ハイテク部門は底堅いけれども、鉱工業生産に占める割合は1.92%にすぎず、エネルギー部門のような役割を果たすことはできない。

米中貿易戦争が米製造業をじわじわと締め付けている。貿易取引は網の目のように張り巡らされており、一か所でも障害が生じると、その影響は全体に波及する。米国も例外ではないのだ。米国経済も輸出入が途切れなく続くことによって成長を持続できるのだ。大統領選に注目させるために仕掛けた貿易戦争が、自国の首を絞めることになる。今は株高でそちらに目が向いているが、経済の足取りが重くなりながら、いつまでも宴を続けるわけにはゆくまい。

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